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決意

「ただいま帰りました。」

「おかえりなさいませ、ユウキさん。その服似合ってますね。」

「ありがとうございます。」


カトレイア邸に帰ってきた勇輝達はアリスへと帰還の報告をする。

その際にアリスの父親がいつ頃帰ってくるのかを尋ねてみたところ、そろそろ帰ってくると思いますとの返答を貰った。

それを聞いた勇輝はそれまで部屋で待ってますねと告げてから自身に与えられている部屋へと帰っていく。

だが、それも演習に出ている父と兄の代わりに仕事をこなしているアリスの邪魔にならないように配慮してのことだった。


そうして部屋に戻った勇輝だったが、異世界では日本にいた頃のような娯楽もなく暇を持て余していた。

流石に人様の家で魔法の練習をするわけにもいかずぼーっとしているとリルカから一冊の本を渡された。


「これは?」

「それは一人の転移者が好き勝手やった挙句処刑されるまでを面白おかしく書いた絵本です。今後この世界で生活する際の参考にしてはどうでしょう。」

「反面教師にしろと。」

「その通りです。ユウキ様の人柄ならば問題ないでしょうが、読んでおいて損はないだろうと思い、勧めさせていただきました。」

「ありがとう。じゃあ、読んでみるね。」

「はい。それではお茶を用意しますね。」


そういってリルカは一度部屋を出て行き、それを見送った勇輝は勧められた絵本へと意識を向け、そのまま読み始めた。



「ふぅ。面白かった。」


渡された絵本は転移者がこの国における犯罪を犯して衛兵さん達との追っかけっこをコミカルに描いており、最後には王様に対して無礼を働き処刑されるという内容だった。

恐らく元はもっと酷いことをしていたのであろうが、絵本にする際子供の教育用にと表現を軽くしてあるのだろう…と考えたところで勇輝は机の上にお茶とお菓子が置いてあることに気付く。


「気を使わせちゃったかな? お茶とお菓子、ありがとうございます。」


勇輝はそう言ってからお茶とお菓子をいただく。

美味しいクッキーと少し冷めたお茶で一息ついていると、ドアがノックされ外から声を掛けられる。


「ユウキさん。父が帰ってきたので、一緒に来てくれませんか?」

「分かりました。ちょっと待っててください。」

「はい。」


訪ねてきたアリスに一声かけた勇輝は残っていたクッキーを口の中に入れると、そのままお茶で流し込んだ。


「準備できました。」


勇輝はそう言ってドアを開ける。


「それでは父の所へ案内します。」

「はい。」



アリスに連れられて勇輝は応接間と思しき所へと案内された。

そこで勇輝が見たものは……金髪をした三十代半ばの男性と顔色を物凄く悪くしているローブの男性だった。


「えーっと、あの人大丈夫なんですか? 凄く顔色が悪いんですけど…。」


そう言いながら勇輝はローブの男性を指差す。

それに答えたのはアリスではなく金髪の男性だ。


「君がユウキ君か。彼の事なら問題は無いよ。魔力を一度に大量に消費しただけだから。…っと、自己紹介がまだだったな。私はアリスの父のドレアス・カトレイア。この街の領主をさせて貰っている。」

「御神勇輝です。それで勇者についてなんですが…」

「まあ、先ずはソファーに座りたまえ。話はそれからだ。」

「はい。」


ソファーに腰掛けた勇輝は転移してからの事をドレアスに説明していく。

そうして一通りの説明が終わるとドレアスは神妙な顔をして考え込む。

そのまましばらく唸り考えをまとめると口を開く。


「ふむ。やはり、戦争はかなりの苦戦を強いられるようだな。ここグレイフィア王国はラベスタ帝国に戦争を仕掛けらていることはユウキ君も知っての通りだ。恐らくだが君を召喚したのはリリアーナ姫だろう。済まぬが明日王城に出向いてはくれぬか? ここにいるレディックは転移魔法が使える。レディックとアリスと共に姫様に会ってほしい。「ちょっ!まっ…」もちろん無理強いはしない。明日までに考えてくれないか?」

「分かりました。それでは失礼ます。」

「うむ。」


勇輝は話が終わったと思い退出する。

そしてその勇輝を追いかけるようにしてアリスも部屋から出て行く。

二人が出て行きドアが閉められるとレディックと呼ばれた男がドレアスに詰め寄る。


「ちょっ、ドレアス様!今日も転移してきたばっかでそんな急に……しかも二人連れてなんて!」

「一刻を争うのだ。一国だけに。」

「ダジャレですか!」

「とにかく。無理でもやってもらうからな。領主命令だ。」

「ぐっ!わ、分かりました。」


レディックは、話の内容自体は至極真っ当であると分かっているものの、一度に大量の魔力を消費する転移魔法を二日連続で使用することに対する文句を言うものの状況を理解している上に命令されたとなれば承諾するしかなかった。

言外に戦争を手伝ってくれと言っているようなものだから、行きたくないと勇輝が断ってくれることを心の奥で願いながら。



部屋に戻った勇輝は雪羅に話の内容を説明する。

その上で意見を聞こうと思ったのだが、雪羅にこう返された。


「既に勇輝様の心が決まっているのに私が言うことなんてありませんよ。」

「バレてた?」

「はい。」


そう。

勇輝は戦争に参加してくれと言っている事を理解した上で、頼みを聞こうと思っている。

いつ死ぬかも分からなかった身の上だったが、こちらの世界に来て死という未来を回避した勇輝。

その理由がちゃんとした契約を結んだからか、この世界が魔力で満ちているからか、はたまた勇者として召喚されたことで契約を維持するのに必要な魔力を得たからか、あるいはその全てか。

そういったことを感じていた勇輝はこの世界に呼んでくれた人に恩返しがしたいと思っており、また、元の世界に帰るかは未定だが帰る手段を知っている可能性のある姫にも会ってみたいとも思っていた。

それ故にリリアーナという姫に会うためにドレアスの頼みを聞こうと思っていた。

しかし、戦争をしている所に行くのは危険だから雪羅に意見を聞こうと思っていたが、是非もなしと言われたので改めて姫に会う事を決意した。


もちろん。危なくなったらすぐに逃げようとも思っていたが。

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