プロローグ
高校生の主人公が仲間と共に「正義」を追い求め、世界の闇と戦うダークラブファンタジー。
彼らの戦いは歴史に刻まれることとなる。「革命のラプソディア」と。
(まだまだ小説家として駆け出しですので、優しい目で見ていただければと思います)
ある日、自分を構成する世界が壊れたら、人はそれを受け入れられるだろうか?
世の中は、不平等に満ちていて理不尽が蔓延している。この世界の人たちは、それが当たり前であるかのように生き、理不尽さこそが世界のデフォルトでその不平等さこそが、平等であるのだと。そんな理屈で自分が当事者でないことを他人事のように切り捨てる。
そんな世の中を天音正義は受け入れいることが出来なかった。
三年前の春。
「正義もついに中学生か。時が経つのは早いな」
「ほんと、少し寂しいわ」
両親と共に車で中学校の入学式に向かう車中で、いつものようにたわいもない話をしながら変わらない日常を送っていた。正義は今年で十三歳になり、晴れて中学一年生となる。後部座席で両親と会話をしながら、これから始まる中学校生活に思いを馳せていた。
車が赤信号で止まっていると、前方から猛スピードで突っ込んでくる車が見えた。その瞬間、すべてがスローモーションのように正義の目には映る。慌てた父はハンドルを切りアクセル踏むが、止まった車が動き出すまでには時間がかかり、母の叫び声と激しい衝突音とが同時に重なり、目の前が真っ暗になった。
目を開けたら見慣れない白い天井がそこにあった。ここは病院か...正義はまだ正常に働いていない脳で現状を把握していった。入学式に向かう際に、反対側から車が突っ込んできて...そこまで思い出すと周りを見渡すと叔父が座っていた。
「目覚めたか。事故から三日間起きなかったから、心配したぞ」
正義が意識を取り戻したので、叔父はナースコールをおし医者を呼んだ。痛む体を起こし、叔父にかすれた声で尋ねた。
「父さんと、母さんは...?」
叔父は沈痛な面持ちで、首を横に振り、正義はそれ以上、何も言わずベットに体を沈めた。
医者が来て、いくつか検査したが異常がなかったので、2日後退院することになった。正義は後部座席に座っていたこともあり、奇跡的に外傷は少し体を打ち付け擦り傷ができるくらいの軽傷で済んだが、車が衝突した衝撃で頭を強打していたため意識を失っていたのだ。
二日後、退院し叔父の家に引き取られることになった正義は、事故の話を詳しく聞いた。叔父が警察から聞いた話を聞いたとき、正義は頭に血が上るのを感じた。信号無視し車に突っ込んだのは自分の父だというのだ。突っ込んできた運転手の男は病院に運ばれたが、三日後に息を引き取ったらしい。男の身内は、今回の事故に関して、両親を亡くした正義を不憫に思い、慰謝料や賠償金を請求せず、刑事問題にはしないとのことらしい。だが、正義は知っている。赤信号で止まっているところに車が突っ込んできたことを。
「違う!父さんは赤信号でちゃんと車を止めていた。そこにすごいスピードで信号無視して車が突っ込んできたんだ!」
叔父は正義の剣幕に驚きながらも、警察に連絡をとり話を取り次いでくれたが、警察の対応は一辺倒だった。事故検証はすでに済み、目撃者の話をもとにすでに調査は終わっていると。正義の証言もまだ幼く事故直後で記憶が混乱しているとのことで、全く請け合ってはくれなかった。
次の日、ニュースや新聞では叔父から聞いた内容が報道されていた。父が悪者に仕立てあげられており、被害者の家族は被害者でありながら、加害者側の生き残った子供を思いやる心優しい人たちという美談が作り上げられていた。正義はそのニュースを見ながら、歯を食いしばり、じっと耐えた。テレビを睨み付けるその目は憎悪に満ちており、口の端から血が滲んでいた。
「こんなことが許されていいはずがない...こんな理不尽が通っていいはずがない...必ず真相を突き止めてやる!」
呻くように口から洩れた言葉には、固い決意が込められていた。