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黒羽芸術

作者: まる

 芸術は爆発だ、という言葉がある。そう、芸術は爆発のようなきっかけから生まれる。

 それは時に革命を起こす。たった一つの恨みから、男はカラスを消してしまった。黒羽芸術でこの世から排除してしまった。

 騙されるな。男は決して崇高ではない。騙されるな。男の動機は怨念でしかない。

 騙されるな。騙されるな。騙されるな。たった一人の男の言葉などに、自分の人生を委ねてはいけない。


――黒羽芸術――


 幼少のころ、男はカラスに片目を奪われた。人生が変わった。予定されていた未来はすべて奪われてしまった。

 男は気味悪がられながら日常を過ごした。友だちもできなかった。石を投げられて苛められたりもした。

 親は嘆いた。男を可哀想な子だと同情した。そんなものに力はなかった。男は石を投げられた。

「カーラースー♪なぜ鳴くの♪」

 男は、そのすべての人間たちを怨むことはなかった。怒りはすべてカラスに向けられた。

 男はカラスの絵を描いた。大きな紙一面にたくさんのカラスを描いた。紙一面に描かれたカラスを傷つけたりはしなかった。

「僕が止ますその日まで♪声枯れるまで鳴き続けろよ♪」

 絵の中で傷つけるのは勿体ないと思った。自分の一生をかけてカラスをこの世から排除したいと思った。

 もう、鳴くことのないようにしたいと思った。すべての始まりだった。


 男は大きくなった。いつの間にか学校にも通わなくなっていた。ずっとカラスのことを考えていた。

 絵を描いていた。造形を志していた。生態について調べ続けていた。男はだれよりもカラスに詳しくなっていた。

 どこから流れたのか、男は注目を浴びた。男のカラスへの怨念は芸術として認識された。

「うれしいね」

 男は喜んだ。引き金は弾かれた。まるで黒い羽が生えたかのような気分だった。

「次は飛ばなきゃ」

 黒い羽を無駄にはできない。男は芸術を磨いた。すると、信者ができてきた。

 その中に、見知った顔もあった。昔、石を投げてきたやつの一人だった。男は手を差し伸べた。気味悪がって石を投げていた過去の人間は、涙を流して喜んだ。立場は逆転した。


「どうすれば、そんな素晴らしいものが創れるのですか! 心奪われるような! 人生を変えるような!」

 男は空を飛んでいた。世界的に支持された男は、神のように崇められていた。

 男の一言で多くの人間が思いのまま。そこには石を投げていたやつらもたくさんいた。同情していた親もいた。

 過去、男に負の感情を抱いていた人間たちはみな、善望に変わっていた。男はそれに興味を抱くことはなかったのだけれど。

「今から、どうすれば僕のようになれるのかを教えます」

 男の頭はカラスに支配されていた。怨念の体現者だった。だけど、それは神だった。芸術に魅せられた傀儡たちは男の一言でどれだけ非道なことも実行する。

「カラスの羽をもぎ取って燃やすのです。燃やした炎から、芸術の糸口が見つかるのです。ほら、『マッチ売りの少女』ってあるでしょう? あれの要領で」

 男は黒羽芸術を完成させた。この日を待ち望んでいた。信者はカラスの羽求めて駆け出した。

「カーラースー♪なぜ鳴くの♪……僕が止ましてあげるよ。今すぐに」

 男はただ待つだけだった。世界的なニュースになるのはすぐだった。しかし、芸術的な要件、人間の進歩のためだということで黙認された。

 法律は立場で捻じ曲げることができる。だれも止められない黒羽芸術に、カラスは赤く燃えた羽を天に掲げ、黒色の白旗をあげるほかなかった。


 騙されるな。そいつはただの怨念染みた男だ。別に特別じゃない。特別なことと言えば、カラスに目をひとつ献上しただけのただの男だ。

 騙されるな。そいつの言葉を信じても幸福は訪れない。個は個にしかなれない。言葉に従ったところでお前たちは男にはなれない。


 この世からカラスは淘汰された。男は急激に衰弱し、カラスと同じくこの世から去った。

 人々の目が覚めた。どうしてあんなことをしていたのかと不思議がった。そして笑った。

 しかし、気づけばまただれかを崇めているのだ。こういう人種はそうしてなければ生きられないのだ。


 次は何に祈るのだ。神か、生きてるか死んでるかも分からないおっさんか。霊が乗り移って来る芸人か。

 祈れば子どもが病気から救われました。信者が言う。どうして、子どもが頑張ったのだと言ってやれないのか。

 騙されるな。騙されるな。騙されるな。大層に神だと崇めるその存在も、神に使われ続ける傀儡のようなお前たちも、聖母の膣から生まれ出でた同じ人類だ。

私の住んでいる町の周りの家は大概が創○学会です。そして、私の家はそれに属しておりません。その時点で近所付き合いは皆無に近いです。挨拶しても挨拶を返してくれなかったりもします。操られるのは怖いですね。

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