4章-1 今更ながらのプロローグ
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少年漫画にありがちな話なんだが――――あの空想絵巻において、危機とはなんとも礼儀よく、そして順序正しく到来してくる。
1番初めに倒される敵が、その漫画通しての最強であるケースなどほとんどない。大体いの一番に倒されるのは、門番だったり下っ端だったり向こう見ずのルーキーだったり、四天王で最弱の奴だったりする。最初に主人公のライバルが登場することはあっても、それが本格的に主人公の前に立ち塞がるのは、決まって漫画のクライマックスである。
弱い敵から倒していって、さながら階段を上るように強くなっていく。まるでRPGのような不自然が、漫画やらゲームやらじゃ自然に罷り通っているのだ。
勿論、俺が今生きているのは空想じゃなく現実だから、そんな都合のいい法則は適用されない。
危機は前触れなくやってくる。
終焉は突然襲いかかってくる。
ラスボスは最後に登場しない。
予想だにしない悲劇が、今の力では敵いっこない悪夢が、無情に襲撃してくるのだ。
それが、現実を生きるということ。
用意されたシナリオの上でなく、自分で茨の道を拓いて行かなければならないということ。
それが他ならぬ、逢魔時音の生き方なのだと――――生き様なのだと、俺は知ることになる。
様々な疑問の氷解を経て、俺は――――俺たちは、恐らく最悪に類されるであろう危機に苛まれることとなる。