奴隷
奴隷タグ付けておいた方がいいですよね……
大分日が傾いてきた。
俺とシスは、馬車を降りてからずっと歩き続けていた。
時折出てくる魔物も、闇魔法ではなく雷の魔法で蹴散らしている。
「結構、日が暮れてきたな。今日は行けるとこまで行こう」
シスに話し掛けるが、相槌は打ってくれるものの、相変わらずの無口無表情。
それから2時間ほど歩き辺りが真っ暗になった頃、俺が夜営しよう、と切り出した。
シスは頷くと、何もない空間からテントを取り出した。何の魔法だろうか。激しく知りたい。
食料などは、テントの袋にテントと一緒に入っていた。
街道から少し外れて、テントを設置する。昔、何回かキャンプに出掛けたことがあったので、案外簡単にテントを組み立てられた。
馬車を解体してシスの魔法で持ってきた木材を少し出して、俺の火の魔法で点火する。即席の焚き火の完成である。念のため言っておくが、馬は食肉にはせず、適当に放しておいた。
固いパンと干し肉を食べ、これまたテントの袋に入っていた水筒から水を飲んで、寝た。俺は外で、シスはテントの中で、だ。うすーく夜の闇に100mくらい俺の闇魔法を広げ、それを索敵範囲とした。時折索敵範囲に魔物が入ってくるため、その都度俺が起きて魔物を殺した。7度目に起きた頃、空が白み始めていたため、闇魔法を解き、シスを起こす。寝顔を見て、少し見惚れてしまったのは秘密だ。
またパンと干し肉と水という簡素な食事を済ませ、テントを畳んで出発した。
出発してから3時間頃、街道を歩いていると後方から馬車が走って来るのが見えた。
丁度いい。30分くらい気付かない振りをして歩いていると、馬車が俺達に追い付いた。
そこそこ大きい馬車である。商人の馬車か。
「乗せてくれないか」
白い硬貨(約2万円)を指で弄りながら御者に声を掛けた。
御者はこちらを見ると(正確には俺の手元)、ゆっくりと馬車を停止させた。
「どこまでだ」
「近くの街まで」
御者に白い硬貨を渡して荷台に乗り込む。
「おい、そこの女まで乗せるとは言ってないぞ」
御者がシスを指差して言う。クソが。さすがに商人か。抜け目がない。
「護衛がいないようだが。魔物に襲われたらどうするんだ」
商人に応えず、俺は言った。
「先ほど、雇った護衛は魔物に襲われて全滅した」
「なら、こいつは乗賃の代わりに護衛。それでいいだろう」
俺の答えに商人は満足したようだった。ハナから、このつもりだったのだろう。
「少し臭いが、我慢してくれ」
商人が言う。何か臭う物を乗せているのだろうか。
馬車の幌をくぐると、それは明らかになった。
「奴隷、か」
金属製の檻の中に、手錠と足枷をされた人間が5人いた。この臭いは、この人達の体臭と垂れ流しの糞尿だと思い至る。
文化レベルが中世並みのこの世界では合法なのだろうが、やはり奴隷の非合法とされている世界から来た俺としては生理的な嫌悪を隠しきれない。
できるだけ檻から離れて、腰を降ろす。俺の隣にシスが座った。
奴隷達は、ボロ布を纏い、虚ろな表情で座っている。俺とそう年の変わらない女の子がいて、なんとなく吐きそうになった。臭いし。
「シス、奴隷ってのは、どういう経緯があってなるモンなんだ?」
気になって訊いてみた。
「……大体は借金のカタ。あとは口減らし、犯罪者などがなる」
成る程、まあ、そんなところか。
しかし、シスは話し掛ければ答えてくれるようになった。何故だろうか。
……臭い。さっきからなんだねチミこの臭いは。奴隷の身体くらい洗っておけよ。
────────────
馬車に乗って、奴隷達の臭いにも慣れたころ商人が、街が見えて来た、と言った。案外早いな。徒歩とは違うのだよ、徒歩とは。
取り敢えず街に着いてからの目標は、冒険ギルドとやらに加盟し金稼ぎだな。
ちらりと、シスの方を見る。
───できれば、この少女とは離れたくない。損得勘定なしに、純粋に、そう思った。自分らしくない事は自覚している。ここに召喚される前は、自分の周りには打算で付き合っている友人しかいなかった。全て利己的な考えの末、生まれた交友関係だった。
だけど、どういう訳かこの少女とはもっと、純粋で潔白な関係を持ちたいと思った。
───惚れたのかもしれない。やはりガラにもなく、そう思った。
主人公が効率のみで動くとつまらないので、惚れさせてみました
2012/9/29
主人公の言動が外道っぽくなかったので改訂。