真っ黒な誓い
ちょっと遅くなりました。更新速度の向上はキツそうです。
現在、俺がいるのは謁見の間だ。今俺は、存在することに幾分の価値も見出だせない様な豚(もとい王様)に跪いている。
豚の背後には、精悍な顔立ちの青年と、ローブ姿の銀髪の美少女、修道服を着た蒼い髪の美女が控えている。
とうとう来たらしい。
───俺の魔王討伐の旅、その出発式。
豚の後ろにいる3人は旅のお供か。余計ことしやがって。逃げにくくなるだろうが、このぶたやろう。
そんな俺の心の中の悪態は届くハズもなく、豚はたらたらと長ったらしい口上を垂れている。やってらんね。
「王様」
面倒になった俺は、王様の話を途中で遮った。これくらい、今の俺の実力を鑑みれば許される事だ。
「どうした、勇者殿」
王様は特に気分を害した様子もなく聞き返してきた。
「お話の途中、大変申し訳ないのですが、私は今すぐに旅に出たいです。迫害されている民を想うと、いてもたってもいられないのです」
言外に、早く式をやめろ、と言っている。
「おお、勇者殿、そこまで我が国の民の事を……。余は感動した。では直ぐにでも旅に出てもらいたいが、暫し待たれい。いくら勇者殿とて、1人で魔王に挑むのは無謀だ。そこで、我が国からも優れた使い手を魔王討伐に参加させようと思う。……おい、フラット、シス、カーディ、勇者殿に自己紹介をしろ」
豚が言うと、豚の後ろに控えていた3人は俺の前に歩み出てきた。そして、精悍な顔立ちの青年が口を開く。
「フラット・ジョゼンだ。一緒に魔王討伐へ行く事になった。歳は17。よろしく」
「マサト・ヤマダ。歳は17。こちらこそよろしく」
そう言って握手する。
フラットは、かなりやる気に満ちあふれている。俺の苦手なタイプだ。
次に、修道服を着た女性が口を開いた。
「カーディ・アコライトよ。僧侶をしているわ。歳は22。よろしく」
「こちらこそよろしく」
そう言って、握手。
次は、銀髪の美少女である。
「……シス・ライオネ」
実に無表情に、実に淡白に、実に気だるげにシスという少女は自分の名だけを告げた。
いや、やる気のありすぎる奴は苦手だが、こいつは酷いだろう。
協調性とか絶対に皆無だ。明らかにコミュ障だよ。
まあ、魔王とやり合うつもりがない俺としては嬉しい限りだが。
「よろしく」
笑顔で言うが手は差し出さない。どうせ握り返してこないで俺が恥かくんだから。
「準備は出来たか、勇者殿」
「ええ」
豚の問いかけに応える。
「城から出た所に馬車がある。フラットが馬車を扱えるから、それに乗って旅をすればよかろう」
「ありがとうございます」
ちょっと待て。
───支度金は?
……嘘だろ、無一文で城の外に放り出す気か?
と、思ったら、僧侶のオネエサンが金を受け取っていた。まあいいや。取り敢えず預けとこう。
謁見の間から出て、城の外に向かう。城の廊下を、恐らく短い付き合いになるだろうお供達と歩きながら、俺は昨日謎の男に教えてもらったこの世界の金の単位を思い出していた。
───寝る間際だったのでうろ覚えだが、たしか
『基本的にこの世界には硬貨しかありません。銅や銀だと複製される可能性がある、金だと作製にコストがかかるので、硬貨には特殊な金属が使用されています。なので、硬貨の製法を知っている者はほとんどいません。単位は
赤→1円(日本円換算)
橙→50円
黄→100円
緑→500円
黒→750円
銀→1500円
金→5000円
白→20000円』
……だったかな。
硬貨には色が着いていて、色によって単位が違うそうな。小切手なんかもあるらしい。
考え事をしていたら、城の外に出ていた。
俺は金持ちになることを、異世界の抜けるような青空に誓い、1人ほくそ笑んで馬車の幌をくぐるのだった。
なんかこのまま更新速度が下がっていきそうで怖いです。精進せねば。