魔力制御
ちょっと勇者育成編に作者が飽きてしまいましたので、さくっと進めたいと思います。
周りから、歓声が挙がる。
ぬぅぅ、こう言っちゃ悪いが、たったいま黒い模擬刀を必死の思いで消した俺はかなり疲れていて、正直この歓声は迷惑以外の何物でもない。
「大丈夫か!?」
流石に歓声は挙げなかった隊長が、声を掛けてきた。
「……ええ。ですが、なんだか疲れました。何なんですか、あれは」
俺が訊ねると、隊長は申し訳なさそうな顔になって答えた。
「闇魔法の暴走だ。……すまん、まだ魔力の制御も出来ない内にやらせる事ではなかった……。完全に私の失態だ」
そうだ、お前の所為だ。危うく死にかけたぞ。どう責任とってくれるんだ。
「あなたの所為ではありません。僕の過ぎた好奇心から起きた事故ですから。そんなに気負わないでください」
真っ黒な腹の中を隠し、笑顔が素敵な好青年を演じる。愛想笑いなら誰にも負けない自信がある。
隊長は、目を潤ませて言った。
「ゆ、勇者様ぁ」
キモい。マジで誰得。オッサンのこんな顔見たくなかった。
オッサンフラグが立ったかもしれん。脱出する前に圧し折っておかなければ。
「その魔力制御とやらができれば、今のは暴走しないんですか?」
「あ、あぁ」
よしやろう魔力制御。今すぐやろう。
「魔力制御を教えて下さい」
「しかし、君は今死にかけたんだぞ。危険では──」
「お願いします、教えて下さい。魔王に蹂躙されるこの国の国民の事を思うと、何かしなくてはいられないんです」
真っ赤な嘘である。蹂躙されているのかどうかも知らん。
しかし隊長は、俺の心意気(爆笑)にいたく感激した様子で、結局教えてくれる事になった。
†
魔力制御訓練開始3時間後、俺は完全に魔力を制御出来る様になっていた。周りから、流石は勇者様だ、とか聞こえた気がしたがきっと幻聴だ。
そして、再び挑戦するのは例の模擬刀。今ならいける気がする。
掌を前方に向け、集中する。やがて、またしても棒状の闇魔法が、にゅ、と飛び出す。
それを100cm程の所で意図的に切り、さっきの鉄パイプモドキと全く同じ形状にした。
鉄パイプモドキが床に落ちたのを確認すると、また模擬刀を頭に思い浮かべる。
鉄パイプモドキはまたしても奇怪な動きをして、黒い刀の形状に落ち着いた。
「今度こそ……」
ゆっくりと刀を床から拾う。
ぐっ、と魔力を持っていかれそうになるが、耐える。
魔力を全く持っていかれていない事を確認した。
「やりました……!」
俺は感極まった様子で呟く。いや、内心は見た目程感激してないよ。
おお、とまた周囲からどよめきが起こる。隊長に至っては涙を流しながら「ご立派になられた」とか言っていた。隊長ウザい、ウザ過ぎる。
それから夜になるまでずっと刀で遊んでいた。そこで得た教訓は、魔力を使い過ぎると疲れる、ということだった。
ということで、俺はベッドの中に入ると泥の様に眠った。
†
次の朝、またしても謎の男に起こされた俺は着替えて食堂へ向かった。
食堂に着いて、飯を貰いにいく。なんか少し、ブロイラーの様な気分になったが気にしない。
飯を貰ってなるべく人のいない席に着いた。そこでそれが与えられた仕事であるように、もそもそと飯を食べていると、隣の席に見覚えのある青年が座った。
「おはようございます。ベムさん」
見知った顔で、恩人なので声を掛けた。するとベムさんは、にかっ、と笑って俺に応えた。
「よぅ、マサト。昨日ぶり」
そう言ってベムさんは自分の料理に手をつける。グラトコロルスとかいう大層な名前の料理だったが、ただの卵と挽肉のそぼろ丼である。
ベムさんと色んな事を話しながらグラトコロルスを食べた。ベムさんは聞き上手で、俺は故郷の日本の事を少し話した。だが、日本の科学技術などの事には触れなかった。下手な事を言って、科学技術が軍事転用されても困るしね。可能性は低いだろうけど、ここは異世界なのだ。慎重にならなければ。
飯を食い終わると、自らの足で魔法訓練場に向かった。今日は何をするんだろうか。
魔法訓練場に着くと、隊長に何か物凄く歓迎された。来なければよかった、と心底思った。
今日はどうやら、細かな闇魔法の制御と、闇以外の魔法の訓練をするようだった。
隊長に手取り足取り魔法を教えてもらった。おかげで、闇魔法での『殺し』のテクニックや、炎と雷の魔法が少し使える様になった。なんか今なら国を相手に喧嘩出来そうな気がする。面倒だからやらないが。
そして部屋に戻り泥の様に眠……れなかった。部屋の扉がノックされたのだ。
非常に面倒だが、仕方ない。扉を開けて、ノックの主を見る。
またしても、謎の男だった。
男は、この世界の宗教観やら軽い地理の説明、この世界の通貨、常識などを俺の頭に詰め込んで去って行った。何だったんだ一体……
次の日、俺は王様に呼び出された。
モンハンの二次創作が書きたい。
冷酷無比な鬼畜ガンナーに憧れます。