重大発表
「まだ強くなるのか……?」
まだ伸び代があるとか。正直今より強くなるとか想像つかないんだが。
「当たり前だ。それに、お前は“闇”を根本的な所で勘違いしているようだ」
「勘違い?」
「まず、“闇”は厳密に言うと魔法じゃない」
「そうだったのか……」
「反応が雑だ。適当に流すな。……まあこの辺は割愛してもいいか」
周りの光景は高校入学になる。最近体験した事で特に面白みもないので映像を消した。胎内の光景に戻るが映像は静止している。
「次に、闇に有限はない」
「その表現面白いな。有限はないとか」
「うん?ああ、間違えた。いかんせん人間の言語に不慣れでな」
「言いたい事はわかる。限りはない、てところだな」
「そうだ。魔力に似ているが魔力なんてものはこの闇には存在しない。あるのは、闇本体だな」
「あれ?それって重大な事実ってやつじゃね?」
俺は今までそんな得体のしれない物を使っていたのか。まあ、魔法も十分怪しいが。
しかし最も注目すべきは限りがないという点だろう。
「お前、勝手に闇の力に上限付けてたな。わかりやすく、雷魔法の魔力量と炎魔法の魔力量の平均ってとこか」
「マジで上限無いのかよ。だけど使い過ぎると打ち止めになるぞ」
「そりゃ、もう使えねえ、なんて、闇を使役するお前が思えば打ち止めになるだろうよ」
そういうものなのか。
「あと、お前変な娘っ子に惚れてたな」
「なんで知ってるんだよそうだよ言わせんな恥ずかしい」
「あほか。あれにも理由はある」
なん……だと……
「自覚があるかどうかは知らんが、この世界に来てから、お前随分鬼畜外道な振る舞いをしてたよな」
「してたような」
「……まあその、なんつうか冷酷さ?それが極端にお前の中で増大したから、釣り合い取るために、愛だの恋だのに飢え出した。今は1人だけだが、そのうちあと1人くらいは惚れる事になるだろうな」
成る程。やたらシスに執着するのはそのせいか。どうでもいいけど。
気になるのは、もう1人に惚れるという点である。これじゃ浮気じゃねえか。
「うーん。まいいや。俺が惚れるって事はきっと大人しくて可愛いシスみたいな娘だろうし」
「……もう説明するのダルくなってきたし、続きはまた夢を見た時にでも聞かせてやる」
「ふーん。俺も面倒臭くなってきたしそれでいいよ」
「一応これで闇の強化に繋がったと思うが、実感の湧くように少し容姿を弄ってやる。お前の記憶の中にある強いパワーアップのイメージでも使ってな」
「おいやめろ」
「すぐ治る。ちょっと実感してもらうだけだ」
そこで、意識が浮上する。
「さむ……」
目覚めての第一声はそれだった。
実際、寒い。何故俺は素っ裸で寝るなどという愚行を犯したのだろうか。就寝前の自分を小一時間程問い詰めたくなった。
取り敢えず闇で構成された物干し竿から、昨日干しておいた服を取る。……生乾きだが、着てれば乾くだろ。
先にズボンを履き、次に服……だが。
「なんじゃこりゃああああああああああ!!」
「ななななんの騒ぎだいっ!?」
俺の叫びに今まで寝袋で寝ていた魔王が飛び起きる。そんなことはどうでもいい。問題は----
「いきなりそんな叫び声を……プッ」
「髪の毛が…………」
禿げたとかそういうんじゃない。いやもっと酷いかもしれない。
髪の毛が、立っている。
そりゃもうビンビンに。
あいつは、容姿を弄ると言っていた。
俺の中のパワーアップのイメージに沿って。
確かにこれ以上のパワーアップのイメージはないだろう。
「……」
「え?ちょっとこれどういうことなんだい?ねえ?ちょっと」
うるさいうるさい。笑いながら話しかけんな。
「ぶふっ、つ、つよそうだね勇者。流石勇者だよ、くっ……」
「くそっあいつ絶対ネタでやりやがった……
次に会った時は覚えとけよ……」
こうして俺は、勇者から戦闘民族へとジョブチェンジしたのであった。
※5分程で元の髪へ戻りました。
すみません。
いつぶりの更新でしょうか。
もう作者としては、この作品を更新するつもりはなかったのです。
理由は、やはり自分の作品を見直してみると、痛たたたたたとかなったり、枕に顔を埋めてバタバタしちゃったりするような出来なので、もう、いいや、なんて。
しかし、こんな作品でも「面白いので更新してください!」というコメントを頂くと「ちょマジ嬉しいもっかい書こう」なんて思う訳です。
という事で、この作品もちょくちょく更新します。
また数ヶ月おきなんて事になるかもしれませんが、「ああ、こういう奴なんだ……」という目で見つめて、他の作品でも読んで気長に待っていて頂けると幸いです。