表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

背の上にて


前回の更新から1ヶ月も間が空いてしまい、大変申し訳ございません。


「ぎゃあああぁぁぁ!!」


 叫ぶ。

 恐怖という感情を素で表した、本能からの叫び。


「いぃぃぃやあぁぁぁ!!」


 恥も外聞も無く、ありったけの声で、ひたすら叫んだ。


「ムリムリムリムリ!! 何でこんな速えーんだよ!! もうちょいスピード抑えろよ!! あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 現在地、雲の上。

 状態、瀕死。


 今、俺は空を飛んでいる。例の竜に乗ってだ。

 日光を遮る物が無い、雲海を超えて更に上空へ。おいちょっと待て。風圧で息が……。


「──ぁ、く」


 必死に顔の前に闇の盾を形成する。

 何とか、呼吸は出来るようになったが、今身体には強力なG(圧力)が掛かっている。

 闇魔法で重力を操作する事は容易だが、日光を遮る物が無い雲の上ではあっという間に魔力が尽きてしまう。

 顔の前に作った小型の盾でさえ保つのが辛いのだ。これを、半日。

 ムリに決まっている。

 そもそも何故こうなったかと言うと、


『いや、Aランクパーティー瞬殺だし風防いらねぇべ? 風防壊れやすいし、自前の魔法でいけるべ?』


『え、ちょ、ムリ──』


『急ぐべ。あの竜はせっかちだから急がないと勝手に飛び立つべ』


『いや、だから』


『あぁぁ!! 離陸体勢とってるべ!! 早く行くべ!!』


『おぃぃぃ!! 色々とおかしいだろぉぉぉぉ!!』


 ……こんなやり取りが、竜の管理人と交わされたからで。



「──辛い」


 闇魔法も保ってあと5時間程度。それ以上使えば意識が無くなる。

 恐らく目的地までそのくらいだろうから闇魔法無しでヒュドラと戦闘になる。

 魔力が回復するまで、なんて悠長な事は言っていられない。


 使える魔法は雷と火。Sランクの魔物相手にはかなり心許ない。

 しかし、やるしかないのだ。シスを、奴隷商館から救い出す為。


 そこまで考え、ふっと苦笑する。

 こんな思考、ここに召喚される前は何があってもしなかっただろう。女の子1人の為に命を懸けるなんて、勇者っぽいな。ガラじゃあないけど、まぁ、悪くない。


 それに、──お金貰えるし。とんでもねぇ金額だし。シス買ってお釣り来るし。

 これは何としても成功させなければ、と全身に活力を漲らせ、前方を睨む。


 ……黒い闇の盾が、視界を遮っていた。




 どれだけ時間が経っただろう。闇魔法の魔力も尽きかけ、意識もなんだかぼんやりしてきている。

 因みに説明しておくと、使える魔法の属性毎に魔力は分かれている。

 例えば、闇魔法の魔力が100だとすると、雷は110、炎は90だ。何故か闇魔法を使い続けても、雷と炎の魔力は全く減らない。どれかを使い過ぎると気絶したりするけどな。


 ──闇魔法の盾が、すうっと薄くなる。盾の薄さに比例するように、俺の意識も薄弱していく。


 ここまでか──。


 魔力の限界を悟り、闇魔法を拡散させ、盾への魔力供給を止める。途端、もの凄い風圧が顔面を襲う。

 手で顔を庇うも、闇の盾に比べて掌の面積はあまりにも小さい。直ぐに呼吸が困難になった。


 竜は目的地に着くまで飛ぶ事を止めない。そういうふうに育てられたのだろう。

 排泄等は、全て垂れ流しだ。何しろ、座席が洋風便器の形をしていて、そこに座ってフライトをするのだ。これが日本だったら訴訟モノである。


 息が苦しい。走る車の窓から顔を出している感じだ。スピードはそれよりずっと速いから、もう、ね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ