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シス・ライオネ



ちょっとこれから、諸事情により感想返しが出来なくなりそうです。


いつか復活すると思うので、気兼ねなく感想を頂けると嬉しいです。


『また、あの世界に〝闇〟が生まれたぞ』


『何? 幾ら我々に死という概念がなくとも、そう何度も生まれると、いつ消滅させられるのかと肝が冷える』


『仕方なかろう。〝闇〟の〝拒絶〟は、我々の与える概念をも〝拒絶〟する。闇の発生を止める(・・・・・・・・)という概念すら〝拒絶〟するのだから』


『この力すら〝闇〟は〝吸収〟するというのだから、全く侮れん』


『後は成り行きに任せるしかなかろう。まだここに至るとは決まった訳ではない』





────────────


 何故、どうして。

 どうして、数日前に別れたばかりのこの少女が、奴隷になんて……。


 俺の声を聞き、シスが無表情をこちらに向ける。俺の姿を確認した途端、僅かに表情が動いた気がした。


「お、お知り合いで?」


 男が、若干ビビり気味に声を出す。俺はそれに答えず、


「おい、この子は幾らだ」


 シスから目を離さずに言った。


「こ、こちらは、白硬貨で200でございます」


 白硬貨で、200。


「白硬貨で300払う。俺が金を溜めて来るまで、絶対に誰にも売るな。誰かがこの値段を超える金を提示したら、俺はそれの2倍払う。3日後までに、必ず払う。俺が来るまでに、絶対、この子に傷を付けるなよ」


 表面は冷静な声音で言う。内心は、まだかなり動揺していた。


「さ、300……。か、かしこまりました。誰にも売却はいたしません」


 男は、喜色を満面に湛えて言う。俺はそれに頷き、最後にシスの姿を見てから、足早にその場を去った。最後に見たシスの表情は、どこか驚いている様に見えた。



 応接間に戻ると、商人が戻って来ていた。商人の隣には、見覚えのある少女がいた。


「遅かったな」


 商人は、特に感情を込めず言った。


「ああ、ちょっと見知った顔に会ってね。……で、それは?」


 俺は、商人の隣にぼぅっと佇む少女を指差し、問う。


「だから、あんたに渡す奴隷。良かったな。こいつ、御者出来るらしいぞ」


「そうか。それは良かった。さて、それと、『あるもの』の話なんだが」


「ああ、何が欲しいんだ」


「───馬車が欲しい」


 商人は、それを聞いて呆気に取られた様な表情になる。


「馬車? そんな物で良いのか。それなら、俺の使い古し───」


「バカか。あんな奴隷の糞が染み付いた臭え馬車なんかいるかよ。新品を寄越せ」


「ひでえなあ。これでも卸し先では毎回洗ってんだぜ? ……ああ分かったよ。くれてやるから、そう苛立つな」


 おっと、いつの間にか貧乏揺すりをしてたみたいだ。


「この商館の裏に、仕入れ用の新品の馬車があるから好きな奴を持ってけ。馬も2頭やる。そのくらいの贅沢はさせて貰ったからな」


「3日後にまた来る」


「分かったよ」


 男の、今後ともご贔屓に、という声を背にヘリムーア奴隷商会を出た。



 外はまだ明るい。日が高いので今は昼近くだろう。

 腹が減っていたが、それを無視する。そんな事を言っていられる状況ではないのだ。

 差し当たってする事は、高報酬の依頼をこなす事くらいだろう。

 だが、未だFランクの俺が受けられる依頼の報酬で、白硬貨で数百枚は稼げない。なら、どうするか。


 簡単だ。


 実力を、示せばいいのだ。ギルドに。


 だが闇魔法は使えない。そこから、俺が勇者だという事が割れるかもしれないからだ。

 使える魔法は、炎と雷のみ。それだけでも、AかSランクくらいの実力は示せる筈。

 考えながら、ギルドがあるはずの方角へ歩き出す。この辺の地形にも慣れたので、迷う事は無い……と思う。




 沢山の視線が集まるのにも構わず、堂々と跳ね戸を開ける。案の定ガタイのいい男達に睨まれるが、無視してカウンターへ向かった。


「Sランクの依頼を受けるにはどうすればいい」


 ギルドの受付嬢に、単刀直入に問う。

 すると、受付嬢は何故か嘆息し、


「あなた、Fランクのマサト・ヤマダさんですよね。どんな理由があるのかは知りませんが、Sランクの依頼はSランク以上の方か、Aランクパーティーの方しか受注出来ません。実力を磨いて、出直して来て下さい。……ああそれと、ブラッドマッシュルームの依頼は達成しましたか?」


「ブラッドマッシュルームの依頼は取り消しだ。違約金も払う。それより、どうすればSランクの依頼を受けられる?」


「取り消しですね。プレートと違約金の白硬貨2枚を出して下さい」


 俺の言葉を無視し、プレートを出すよう促される。

 仕方なくプレートと白硬貨を出し、受付嬢が機械を弄り終わるのを見計らって、言う。


「……実力を示せば、いいんだろ?」


 受付嬢は俺にプレートを返し、言った。


「…………ええ。いいでしょう。もし、あそこにいるAランクパーティーを〝1人で〟倒せたなら、あなたを特別にSランクと認めます」


 受付嬢は、酒をかっくらってバカ騒ぎをしている連中を指差していた。その中に、Aランクだというアンリ・オーフェンはいなかった。どうやら別のパーティーらしい。


「……それで、俺がSランクになれるんだな?」


「ええ」


「いいのか? あいつら酔っている様だが」


「ご心配なく。ここで出すお酒は全てノンアルコールですので」


 ということは、あのバカ騒ぎは素でやってんのか。だが、この前俺が絡まれたCランクのグランとやらは、酔っていたんじゃ無いのか? うーむ、謎だ。


 受付嬢は、そのパーティーの元へ行き、事情を説明し始めた。次第に、Aランクパーティーの男共の顔が険しくなっていく。それ以上顔を顰めるとお前らゴブリンと見分けが付かなくなるぞ。


 受付嬢はAランクパーティーを引き連れ戻って来た。


「こちらの方々が、あなたの相手をしてくださるAランクパーティー『レジスタンス』です」


 強面の男達は、皆一様に強者の風格が漂っていた。だが、リヴァヴィウスには遠く及ばない。本当にあいつはSランクの下位なのだろうか。


「おいお前ら、こいつは貧弱な身体をしているが、間違いなく魔術師タイプだ。気を付けろ」


 男達の先頭にいるリーダーらしき男が声を挙げる。なるほど。脳筋ばかりではないという事か。


 ───いい事を思いついた。


 闇魔法は、その姿を見られなければ闇魔法だと看破される恐れも無いし、俺が勇者だとバレる事もない。つまり、肉眼では捉えられない微粒子『重力子』を使えば、闇魔法だとバレる事が無いのだ。

 クロークの森で、あの冒険者達をねじ伏せた重力の魔法を使えば、簡単に勝てる。


 俺は早々に炎と雷魔法に見切りを付け、闇を使う事を決意した。

 …………まだ明るいから、魔力の消費はかなり激しいのだが。


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