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朝食


適当に王様の言葉を聞き流し、眠気によりやってくるあくびを噛み殺す。


なんだかやたらと話が長い。この王様は自分の声を聴けば、俺の士気が上がるとでも思い込んでいるんじゃないだろうか。何か一々上から目線だし。手前の声を聴いても、上がるのは逃走に掛ける思いだけだ。残念だったな。


しかも跪いたままの体勢で、王様の高説(笑)を延々と聴かされ続けるのだ。反感を抱くなと言う方がおかしい。


そのままの体勢で20分くらい王様のお話を聴き、疲れているだろう、との王様の言葉でやっと解放された。


疲れてはいるが、その原因の大半はお前のお話の所為だよ、王サマ。


んで、謁見の間から出ると外で待ち構えていた謎の男達に、着いてきて下さい、と言われた。ヤダ。拒否したい。そう思うも、なんだかやっぱり抵抗できそうになかったから素直に着いていく。




3分程歩いて、到着したのは普通の部屋だった。いや、やたらと豪華で普通ではないけどね。


謎の男達は、ここで寝泊まりして下さい、と言い残して去って行った。


取り敢えず中に入り、扉を閉める。辺りを見回して感嘆する。なんか色々と装飾過多でヤバイ。天蓋付きベッドなんて初めて見たよ俺は。


こ、こ、ここで寝ていいんだろうか。シーツ汚しただけで城を追放されたりしないかな。それはそれでいいんだが。


おっかなびっくりベッドの感触を確かめるように座る。これはやばい。布団に入れば3秒で寝られる。


ベッドに座ったまま色々と考える。


 ───だがそれは故郷への郷愁の念ではなく、恐らく自分が授かったであろう能力についてだ。


俺が勇者だというのなら、光属性とかそんな感じの力なのではないかと思う。


何かいかにも『勇者』って感じで強そうだ。


そういえば王様が、明日から魔法の訓練を行ってもらう的なことを言っていた気がする。何だか少し楽しみだ。


いや、一度はファンタジーな世界で俺ツエーーーをやってみたいと思っていたんだ。


とか、そんな事を考えていると、眠気が再び俺を襲う。この眠気は耐えられない、そう判断した俺は素早く天蓋付きベッドに潜り込んだ。


ベッドの寝心地はやはり最高で、潜って10秒も経たない内に俺の意識は落ちて行った。



翌朝、知らない人の声に目が覚める。ベッドから降りると、おはようございます、と声を掛けられた。


声のした方を向くと、また謎の装いをした男がいた。だが、今回は集団ではなく1人の様だ。


取り敢えず、おはようございます、と返しておく。


すると男は頷いて、こちらに歩み寄ってきた。よく見ると、男は手に何かを持っている。


男は、俺の前に来るとその何かを差し出した。どうやら、衣服のようであった。着ろ、ということか。


確かに、パジャマとか薄手だし、運動には向いてないからな。


男が部屋から出て行くと、服を床に広げた。


……これは、意図して初代辺りのドラ〇エ主人公ルックにしたのではあるまいか。いや、確かに動き易そうだけどね。


一瞬躊躇ったが、やっぱりそれを着ることにした。パジャマよりはマシだろう。


丁度着替え終わった頃、廊下から、朝食の準備が整っております、と聞こえてきた。


分かりました、と応えて部屋を出る。外にはやはり謎の男がいた。


「食堂はこちらにございます。着いてきて下さい」


そう促され、仕方なく頷く。お腹空いたしね。




謎の男に連れられてやってきた食堂は、沢山の人で賑わっていた。食堂に入るところで、謎の男とは別れた。


どうしよう。お腹が空いて何かを腹に入れたい気分だが、どこでご飯は貰えるのだろうか。


そこで、近くにいた兵士に訊いてみた。


「すいません、ご飯ってどこで貰えるんですかね」


俺の問いに対して兵士は、


「ああ、そこだよ。てか、もしかしてあんた噂の勇者さん?」


指で指し示し、親切に場所を教えてくれた。


「ありがとうございます。昨日召喚されたのがそうだというのなら、俺は確かに勇者ですね」


そう返すと、兵士は意外そうな顔になる。


「へぇ……。あんた、相当肝が据わってんな。普通、召喚されたばかりの勇者ってのは自室に籠もって3日くらい泣いてるもんだぜ」


「……えぇ、普通ならそうなるでしょうね。向こうに未練があるなら、きっとその反応が妥当です。俺は、たまたま向こうに未練が無いからこうして構えていられるんです」続けて俺は言う。「それと、やっぱり俺と同じように異世界から召喚されてしまった人がいるんですか?」


そう質問を投げ掛けると、兵士は困ったように頭を掻き言った。


「すまねぇ……その辺は守秘義務が課せられてて言えねぇんだ。まあ、守秘義務を課せられていることを喋るのも本当はダメなんだがな」


そういって兵士は快活に笑う。


「いえ、何から何までありがとうございます」


「いいってことよ。困った時はいつでも頼ってくれよな」


 何だこの人いい人過ぎる。


「本当にありがとうございます。あの、お名前を伺っても?」


「俺はベム。ベム・ケーリ。あんたは?」


「俺はマサト・ヤマダ……になるのかな、こっちの世界だと」

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