表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/31

コボルト


森は、勘を頼りに進んで行くと結構なんてこともなく出られた。


森を出た頃にはもう太陽は真上にあり、いま丁度昼なんだな、とか考えた。


さあ、次はコボルト討伐をしようか。


成功条件は、コボルトを5匹討伐する事。報酬は、白硬貨2枚と金硬貨2枚。日本円に換算すると50000円である。


ゴブリンと比べて基本報酬に差があるな。それだけ依頼者が困っているのか、コボルトが強いのか。


まあ強いといっても所詮Gランクだしな。俺が負けるということはないだろう。


場所は街の出入口付近。街に入ろうとする馬車が、たまに襲われるらしい。


俺は小走りでそこに向かった。森から街の入り口まで1時間は掛かる。急いで行かないと、スライムを倒す前に日が暮れてしまう。






息も絶え絶えに街の入り口にたどり着く。仕方ないのだ。なんだか軽く走っていたら気分が乗ってきて、気付いたら全力疾走していた。


荒れた息を整えながら、辺りを見回す。


特に目立った影はない。


これなら、先にスライム討伐行ったほうが早かったよ畜生。


その場でうなだれていると、



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


という、なにやら地響きのような音が地面から聞こえてきた。


───なにか、来る……!!


俺はその場から倒れるように飛び退く。


飛び退いた瞬間、俺がいた地面に一本の『腕』が生えていた。


腕の先には鋭そうな爪が生え揃い、腕は茶色掛かった毛に覆われている。


形状は人のそれに似ているが、明らかに違う。


そこまで分析した俺は倒れた姿勢のまま高電圧雷球を放った。


放ったそれは狙い違わず腕にヒットする。


腕は一度、ビクッと震えると、それきり動かなくなった。


───あれが、コボルトだろうか。Gランクの割りには少し強い気がする。


あの奇襲攻撃、一歩間違えばこちらの命が危なかったかもしれない。


立ち上がり、背中に付いた砂を払った。奴らは、常に地面の中に潜んでいるのだろうか。



だとしたら、───チャンスだ。


俺は、右足を振り上げ、また雷の魔法を発動させる。雷を足に纏わせ、一気に振り下ろした。剣道で慣れている踏み込みは、ターンッと小気味良い音を響かせ、地面に雷を放った。


象くらい余裕で殺せそうな電圧の雷魔法である。恐らく、近くの地面に潜むコボルト達は死滅しただろう。


何処に潜んでいるか分からないので、あちこち走り回りながら地面に雷を放った。


満足するまでやる頃には、息が切れていた。俺も学習しないな、と自嘲した。


ともあれ(あれがコボルトかどうか不明、そもそも本当に殺せているのかも不明)、後はスライム討伐である。


スライムは、街の中での討伐である。街の中の、とある公園、そこにある小さな草原にスライムが出没したんだとか。


既に、子供が1人スライムに襲われ軽傷。スライムは、ほとんど液状なので街に入り込んでも全く気付かないらしい。


成功条件は、スライム5体の討伐。報酬は白硬貨1枚。追加報酬は無し。


これは、もう少し暗くなってからにしよう。今やっと日が傾き出した所である。時間にすると、13時といったところか。


丁度腹が減ってきたので、街で昼食を頂く事にした。



────────────



肉が食いたい。


その欲求に正直に従い、街を彷徨い、着いた先はとある店だった。


『腹っ減らしの冒険者御用達!!』の文字がでかでかと書いてある看板を掲げた焼肉屋。店名は『ヒートミート』。非常に食欲をそそられる店名である。


唾液腺から湧き出る涎を口の中に留めつつ、店の暖簾をくぐった。




店の中は凄まじかった。至るところで肉を焼く音が聞こえ、店内は肉の香ばしい匂いが充満していた。


入ってすぐ店員に案内された席に座り、オススメを頼む、と注文する。


それから5分程待ち、運ばれてきた肉は、素晴らしいの一言だった。


絶妙な具合に脂の乗った肉。それはまだ焼かれておらず、自分のお好みの焼き具合で食べられるらしい。


金網に肉を乗せ、自前の炎魔法で焼く。炎魔法が撃てない人は、店のスタッフが焼いてくれるとか。


良い具合に焼けた肉を、店の特製タレに付け、口に運ぶ。


───美味い……!!


噛んだ瞬間溢れだす肉汁。口の中を駆け巡る肉の旨味。それのどれをとっても、前にいた世界の焼肉屋の肉を超越していた。


何の肉ですか、なんて野暮な事は訊かない。美味ければ良いのだ。




肉をたらふく食って、外に出る。腹が膨れる程食ったというのに、今現在金欠の俺の懐事情にも優しく、また来たいな、と思わせる量と値段だった。


さて、飯を食ったはいいが、外は全く暗くなっていない。まあ、30分ちょっとの食事じゃあ当たり前か。


どこか金が掛からずに、暇を潰せる場所はないだろうか。


………………無い。


いや、きっとどこかにあるのだろう。だとしても、この世界にきて日が浅い俺の知るような娯楽施設は、無い。


もういいや。日が高い内に依頼を終わらせよう。そんで、宿を取ってさっさと寝よう。いや、あとスライムを倒せば俺はFランクなんだよな。だったらFランクの依頼に挑戦するのもいいかもしれない。


とか、色々と今後の事に思考を巡らせながら、俺の足はスライムが出るという公園に向かうのだった。




ちょっと雷魔法のくだりが無理あるかな、と思ったのですが、地面を伝って感電というのはままある事らしいので、書きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ