初依頼
ちょっと、日間ランキング一桁て、総合評価1000突破て、俺は夢でも見ているんですかね。
俺がこの建物に入った時に、俺のことを見ていた奴だ。
どうやら、目が合って何の反応が無いのがお気に召さなかったらしい。所謂、構ってちゃん、という物ではないだろうか。
どうでもいいが、酒臭い。近づかないで欲しい。
「なんだぁ、お前ぇ、よく見たらぁ、傷の1つもねぇじゃねぇかぁ。とんだ温室育ちだぜぇ」
温室育ちなのは否定しないが、いい加減離れて欲しい。
「すいません、僕の態度で気分を害してしまったのなら謝ります。いま、先を急いでますので」
すると男は、何故か更に機嫌が悪くなったようだった。
「お前ぇ、俺サマを無視しておいてぇ、無事に帰れるとぉ、思ってんのかぁ」
なんだこいつ、ハゲドモに次ぐモブじゃないのか。
対応が面倒になったので、男を無視して街の出口に向かう。すると、
「そぉかぁ、あくまでも俺サマをぉ、無視するんだなぁ。決めたぞぉ、お前は死刑だぁ」
男は何やら喚きたてている。だがそれを敢えて無視して先を急ぐ俺。クールだぜぇ。
「聞いて驚けぇ、俺サマはぁ、あの有名なCランク冒険者、グラン様だぞぉ」
Cランクか。そこそこ稼いでるんだろうな。べ、別に羨ましいんだからね! うん、我ながら意味不明だ。
そのCランク男は、余程無視されるのが気に食わないのか、悔し紛れに俺を追い掛けて来た。何故そうなる。
俺は魔力は高いが、体力は一般高校生のそれと同じだ。よって、逃げる事はせず迎え撃つ事にした。
男は短刀を構えて襲いかかってくる。俺はかなり手加減した雷の魔法を右手に溜めて───、
結局、その魔法を使う事はなかった。
理由は、俺の前に立つ黒髪の女の人。この女の人が、拳の一撃で男を沈めてしまったのだ。
俺は、右手の雷の魔法をキャンセルし、女の人に礼を言った。
「危ない所、助けて頂いてありがとうございます」
すると、女の人は振り返り、
「どういたしまして。それにしても、よくCランクと聞いて迎え撃とうとしていたね。君は見たところ、新人じゃないか」
「ええ、まあ」
とか適当に誤魔化し、
「失礼ですが、お名前を伺っても?」
「ああ、ボクはアンリ・オーフェンって言うんだ。君は?」
「マサト・ヤマダです。強いんですね、アンリさんは」
黒髪、黒瞳、どこか日本人に似た顔立ちの美女である。
「はは、ボクはこれでもAランクだからね」
苦笑してアンリは言った。
「本当にありがとうございます。……あの、そこの男の人は」
俺はグランとやらを指差して、言った。
「ああ、適当にここに放っておけばいいだろう」
「すいません、ろくなお礼も出来なくて」
「いや、いいよ。ボクの勝手でやった事だからね。それよりいいのかい、先を急いでいるのでは?」
「そうでした。では、これで」
女の人に頭を下げて、街の出口に向かう。この依頼を今日中に終わらせて、宿代を作らなければいけないのだ。ここで油を売っていてはダメだな。
街の出口から出て、そこから続く街道から外れる。近くの森に、ゴブリンが群れを為しているらしい。
森の名前は、クローク森林。浅い所には薬草等が生えていて、基本的には安全な場所である。そこにゴブリンが出てきた、冒険者、助けて!! ということらしい。
依頼は、ゴブリンを8体討伐で成功、報酬は白硬貨2枚。追加で倒すと、1体につき銀硬貨(1500円)くれるらしい。これは頑張らねば。
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街を出て1時間程歩くと、クローク森林の入り口に着いた。森の浅い所は、背の低い木が多く、日の光が遮られることはないようだ。
森に入り、適当に辺りを散策する。
残念だ。暗ければ、俺の闇魔法でちゃちゃっと終わらせられるのに。こうも明るくては、自分の足で探すしかない。
森の中に入って5分程、依然として歩き続けている俺の耳に、何者かの話し声が聞こえてきた。
聞き耳をたててみると、それはどうやら日本語ではないことが分かった。
足音を忍ばせて、声のする方へ向かう。そこには───
───数匹のゴブリンが、棍棒を手に何かを話し合っていた。
日間ランキング入りしたのも、皆さんのお蔭です!!
拙作ですが、見捨てないでやってくれると嬉しいです!!
あと、マイナースレのおまいらありがとう!! 勇気が出たぜ!!




