盗賊
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いつの間にか1万PVも突破し、やっと軌道に乗ってきたかな、なんて思ったりしてます。
商人は、街が見えた、と言ったが、それはかなり遠目に見えるだけであって、実際は馬車でも明日にならなきゃ着かないような距離であった。
俺は隣の、頭1つ分くらい低い銀色の頭頂部を見た。
自分は恐らく、この無口で銀髪の少女──シスに恋をした。
何故、と訊かれても、巧く答えられない。しちまったモンはしちまったってことである。
銀色の髪をじっと見つめていたら、突然シスが立ち上がったかと思うと、馬車の外に出て行ってしまった。いつの間にか馬車も停まっていた。
なんだ、と思って馬車の幌から顔を出すと、後方100mくらいに一台馬車が迫ってきていた。
しかし、様子がおかしい。馬車の屋根から一本旗が伸びていて、旗にはおっかない髑髏のロゴがプリント(?)してある。そう、まるで海賊が掲げるような旗であった。
商人がそれを見て呟く。
───ハゲドモ盗賊団、と。
モブ確定であった。
「強いのか?」
商人に訊いてみる。すると、商人は少し驚いた顔で
「ハゲドモ盗賊団を知らんのか。……あいつらは冒険者崩れの集まりで、ここらでは最強の盗賊だ。倒せば報奨金が出る。好んで人殺しはしないが、物資は迷わず略奪する。奴らに狙われたら、確実に破産、というのが商人の間での通説だ」
ほー。そんな強いのか。
というか、そんな奴らと戦って大丈夫なのか、シスは。
馬車から、下卑た笑いを浮かべて7人の屈強そうな男が降りて来た。そして案の定───全員、スキンヘッドであった。
なんだあいつら。ギャグ要員だとしか思えないんだが。
男達は、シスの姿を認めると下卑た笑いを更に深くした。
「アニキィ、こいつぁ上玉ですぜぇ。こいつを頭に捧げれば、俺達の幹部入りもそう遠くねぇ話なんじゃねえですかい」
言っている事が思い切り小物である。本当に強いんだろうか。
男達と対峙して、最初に仕掛けたのはシスであった。
シスはその場から一歩も動かずに、腕を軽く振るった。
それだけの動作で周囲の気温が下がり、シスの周りに無数の氷柱が発生する。
そして
「行け」
シスが短く命令を発すると、氷柱は全て男達に殺到した。
これで男達は全滅、すると思われたが───
『ぬんっ』
気合いの声を挙げ、スキンヘッド全員が『サイドチェスト』。全て弾かれる氷弾。
……え、何アレ。馬鹿なの? 死ぬの?
肉体1つで、魔法弾くとかチートだろ。あいつらの肉体はどんな物質で構築されてんだ。
またシスが動いた。次は人差し指の指先から高圧縮された水を放出する魔法である。反動とか気にしたら負けである。
が、それだけ強力な魔法を撃たれても、スキンヘッド達はピンピンしている。
どうやら、今のがシスの出せる最大火力だったようで、魔力を使い果たしたのかその場で棒立ちになってしまった。
そして、ニヤニヤしながらシスに近づくスキンヘッド達。
スキンヘッドの1人が、シスに手を伸ばしかけたその時、
バチィ!!
シスに触ろうとしていたスキンヘッドの体が、ゆっくりと後ろに倒れる。原因は、強力な雷の魔法。そのスキンヘッドの顔は、かなりの高電圧に当てられたため黒く焦げていた。
倒れた奴以外の6人のスキンヘッドは、魔法の放たれた方向を確認した。
スキンヘッド達が見たのは
「調子乗んなよ、カス共」
歯を剥き出しにして嗤う、俺の姿だっただろう。
俺は軽く手を振るった。あんな脳筋共、これだけで十分だ。
やったことは、シスの技と同じ。俺の周囲に無数の高電圧雷球が浮かび、バチバチと音をたてている。
「レッツラゴー」
俺は雷球に命令を下す。無数の雷球は、我先にとスキンヘッド共に殺到した。
雷球を撃ち終わり、閃光と轟音が止んだ。スキンヘッドがいた所には、黒いナニかが転がっていた。かつてのスキンヘッドは、ただの炭へとジョブチェンジしたのだ。
「大丈夫か」
そう言葉を掛け、シスに近づく。
シスは俺の方に振り返った。
その顔はいつものような無表情ではなく、若干戸惑いが浮かんでいた。
「……どうして?」
シスは俺に問うた。
「どうして今助けたの? あそこで私を助けなければ、あなたにとっての『密告者』の可能性を完全に消す事が出来た。今までの行動から鑑みるに、別に私があそこで男達に連れて行かれても、あなたは特に何も思わないでしょう?」
おっと。非常に答えづらい疑問だ。
まあ、シスがスキンヘッドに触れられそうになった時、結構自分の事のように怒ってた気がするからな。そりゃ疑問も抱くか。
その問いには敢えて答えず、馬車に戻るぞ、と一言言ってシスに背中を向けた。
シスも魔力切れで少しフラフラしながら、後を着いてくる。
俺は賞金首のスキンヘッド共(恐らく生きている)を商人に任せ馬車の幌をくぐった。
次回は明日投稿すると思います。