召喚?マジ勘弁
目が覚めると、異世界だった。
何番煎じだ、と自分でも突っ込みたくなったが、そんな使い古されたネタをかまさなきゃ今の状況は理解できなかった。
まず、俺は何故か石でできた円形状の台座にパジャマで寝転んでいる。台座を取り囲むように立っている謎の男達は、そんな俺のパジャマに視線を注いでいた。なにこれこわい。
そして男達の中に紅一点、なんだか綺麗なお嬢さんが俺の股間部分、エクスカリバーがテントを作っている場所を頬を赤く染めて注視していた。やめろ見るな。これは生理現象だ。男はみんな朝起きるとこうなるの。
俺は股間部分のテントを手で隠しながら、ぼんやりと今の状況を把握し理解した。
───勇者召喚……
ファンタジーな本などでたまに見かける、あのシチュエーションだった。いや股間注視は別として。
取り敢えず、一生懸命テント張りを頑張っている煩悩いっぱいエクスカリバーを宥めつつ、女の人に声を掛ける。
「ここはどこですか」
すると、女の人はやっと俺の股間から目線を外し、ゆっくりと俺の目に合わせてぼそぼそと答えた。
「メ、メノウ王国の王城です。ま、まあ異世界から来たあなた様はご存じではないと思いますけど……」
知らねぇよ。どこだよそこ。もう異世界確定じゃねぇか。
「異世界……ね。それにしても、来た、ですか。この状況を見れば、来た、ではなく無理やり連れてきた、の方がしっくりきますね」
まず嫌味を放って反応を見る。
すると女の人は、慌てたように言う。
「ご、ご就寝のところ、こちらの都合で勝手に連れてきたことは謝ります。ですが、我が国はいま未曾有の危機に陥っているのです。すいません、それについては後程お伝えします」
未曾有の危機……魔王の侵攻か何かだろうな、と当たりをつける。
それで、俺に魔王を討伐して来いと王様か何かが命じるんだろう。正直言って、面倒くさい。
そういえば、もし俺が勇者としてここに呼び出されているなら、何か能力っぽいものは無いのだろうか。流石にいくら横暴な王様でも、何の力も持たない一般人を魔王討伐に向かわせはしないだろう。
まあ、それは後で確かめるとして、いつまでこの地下室のような空間にいるんだろうか。それを尋ねると女の人は慌てて、
「いいい今すぐ王様の下へ案内します」
後は……
「もしここが異世界だとして、元の世界には戻れないのですか」
それを訊くと、また女の人は、すいません、と言った。どうやらムリらしい。
はあ、とか返事をしながら、俺はもう逃げる算段を立てていた。
魔王討伐?知るか。何で勝手に呼び出された挙げ句、そんな面倒なことまでせにゃならんのだ。
異世界に来たというのなら、自由に生きてやるさ。
†
ここです。少々お待ち下さい。と言い、女の人は恐らく王様がいるであろう部屋に入っていった。いや、女の人が入っていった扉を見れば、そこが部屋という言葉に似つかわしくない程大きいことが分かった。
一言で表すなら『間』である。恐らく、謁見の間とかそんな感じだろう。
俺自身は、よくわからない格好をした男達に囲まれるようにして扉の前に立っている。
5分程その状態で待っていると、謁見の間(仮)の扉が開いた。そして、中にいた2人の兵士らしき人に、謁見の間(仮)に招き入れられた。
やっと謎の男達から解放された。
謁見の間(仮)に入ると、まず毛の長いカーペットに驚く。なんぞこれ。寝転がりたい。
流石に王様の前でそんなことをするわけにもいかず、足を止めずに周りを小さく見回す。
なんか凄い。壁際の高さ15mくらいの甲冑は、動き出したりしないんだろか。あの壺は高そうだな。思わず叩き割りたい衝動に駆られるわ。
やがて俺は頭を真っ直ぐに向け、玉座にいる王様を見る。でっぷりと肥えた豚みたいな王様のサイドに控えているのは、宰相か何かか。
俺は玉座から十数m程離れたところで、兵士から王様に跪くように言われた。なんでやねん。取り敢えずおっかないから跪くけど、何か屈辱やわぁ。
それで王様から告げられたのは、丸々予想通りの言葉だった。要するに、民が困っているから魔王を倒して来いよ、と。
俺は表面上は絶対服従の構えをとっているが、腹の中ではやはり逃げ出す算段を立てていた。
へへー、とか有り難き幸せ、とか言ってれば向こうも俺を信用するだろ。俺は向こうを信用しないけどね。ヒッヒッヒ。
取り敢えず逃げ出すのは魔王討伐の旅に出てから。恐らく貰えるであろう少なくない旅費をパクってしらばっくれてやるぜ。ヤバイなんかワクワクしてきた。