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──1章“黒猫”



更新(;´д`)



駄文ですがお楽しみいただけたら幸いです。



──白い仔猫や



──何して遊ぶ?



──健気な尻尾をみせとくれ



──若い三毛猫



──何して遊ぶ?



──走りて鼠 捕まえろ



──老いた黒猫



──何して遊ぶ?



──暗がりに居ないでこっちや来い………






(見知らぬ子供らの童歌)





──────────────

──────────

──────



都市圏郊外某所───




草木も眠る丑三つ時。


人は皆寝静まり、通りにはたまに車が走り去るのみで人の姿はない。



そんなすべてが夜の色に染まる時間──



…………夜陰に光る双眼が瞬いた。



灌木の茂みの奥から出てきたのは漆黒の肢体。



妖しく光る眼を灯し、長い尻尾を揺らしながら現れたのは、1匹の黒猫だった──



黒猫は頭をあげ、通りの先を見通すようにじっと遠くを見据えていた。


その瞳に通りを照らす街灯の光が映る───




…………ヒュュゥゥ…………



一筋の夜風が辺りを駆ける………




黒猫はくるりと翻ると、軽快に茂みの奥へと消えていった。



通りには何もいなくなった。






───否、通りには何よりも深い夜陰が残った───








都市圏郊外某所──



ある民家の一室──



ある男が非常に困っていた。



「………どうしたことか………」



俺は普通の大学生だ。

独り暮らしをしながら郊外の大学に通い、授業の後はアルバイトをして一日を過ごす。


ぼんやりしてなんとなく生きてる毎日だが、最近の若者なんざ皆こんなもんじゃないのだろうか?



そうして20年と少しを生きてきたわけだが、今日突然奇妙な事が起こった。





「…………にゃぁーお………」





今目の前にいるのは、真っ黒な猫。


俺が頭を抱えているのを見ながら、自分の頭に?を浮かべてるようなしぐさをする。



突然だった。


朝、眠りから覚めて寝室から出るとそいつはいたのだ。


どこから入ってきたのだろうか?


なんのことはない。


リビングの窓が開いていた。大方自分が閉め忘れたのだろう。




漆黒の肢体。ゆらゆら揺れる尻尾。

何より、その鋭い光を放つ双眼───



立派な雌の黒猫だった。




それにしてもおとなしい猫だ。


いやちがうな───おとなしいんじゃない。俺のことを何とも思っていないような興味無さげな目をしていた。


それでいてその眼には、なにやら妖しい雰囲気がある。


黒猫という固定概念だろうか、そういう雰囲気を感じるのだ。





そう思いながら黒猫を見つめていると



「…………にゃぁぁお?………」



………こちらを見上げてきた。


何かを催促するように。




「………? ああ、そういえば朝食まだだったな………」



そう。今は朝だ。俺は大学にも、アルバイトにも行かなければならない。



ふと時計を見るとそれなりにヤバイ時間だった。



───急いで作るか………


俺はリビングのテレビをつけてニュースのチャンネルに合わせると、朝食の用意を始めた。




──────────────

──────────

──────



「……さて次のニュースです。最近多発している○○県での連続失踪事件をうけて、○○県警は緊急対策本部を設置し、…………」



一人と一匹が黙々と朝食を食べている部屋に、ニュースキャスターの無機質な声が響く。


テーブルでパンを食べている俺の足元で、黒猫は猫まんまを食している。


昨日の残りのご飯に同じく残り物のみそ汁をかけてやった。


最初それを用心深く見ていたそいつは、

安全だと判断したのか今はむしゃむしゃ食っている。



「………失踪者は××人にのぼり、関係者は───ブチッ」



食い終わった俺は食器を流しに突っ込む(流しには昨日の食器が放置されたままだ。気にしない)と、無造作にリモコンでテレビの電源を切った。



時計をちらりと見る。


あまり余裕はないようだ。


黒猫はテーブルの下で丸くなっている。飯も食べ終わっていた。




「さてと問題はこいつか………」


俺は一人呟いた。


そいつは眠っているようでピクリとも動かない。黒い毛玉と化している。




………まあ、放置しても大丈夫だろう。


何より時間がない。




俺はなんとなくそう思って、眠れる黒いカタマリに背を向けた。



急いで使いなれた鞄を手に取る。




大学の始業時間を気にしながら、俺は家を飛び出た。




────奇妙な黒猫を残して。



──────────────

──────────

──────




都市圏郊外某所、深夜──



疲れた。



もう深夜だ。



学業とアルバイトを終えた俺は、人影の絶えた道を疲労困憊しながら歩く。



家へと続く通りは一直線で脇に灌木の茂みが植わっている。





通りを吹き抜ける夜風は肌寒く、


投げかけられる街灯の光は無機質で目に痛い。





そんなことをぼーっと考えながら、俺は家路を急いだ。




ほどなく家の扉の前へと着いた。




───今日も“同じ”か…………



────繰り返される退屈な日常、




────標準と化した孤独な日々、





ため息をつきながら扉に近寄る──────が、




────いや、いつもとは違うじゃないか。




ドアノブに手を掛けたところで気がついた。



今朝の黒い奇妙な訪問者の存在を。




───どうしているのだろうか?



───今朝、急ぎすぎてそのまま放っていたが逃げてしまったか?



気になりながら扉を開けた。



目の前に漆黒の闇が広がる…………




──────────────

──────────

──────




──────カチッ



電気をつけた。



先が見えない室内に光が広がる。



玄関からリビングに入ると、キッチンに食器の山が出来ているのが見えて顔をしかめる。


テーブルに鞄をおくと、足元に猫まんまを入れていた皿があるのに気付かず踏んでしまった。

中身は入っていなかったので幸いだ。




リビングには探し人(猫)はいないようだ。



…………やはりいなくなったか………



決して広いとは言えない室内を見回しながらぼんやりと考えた。







──────ふと家を出る前と違う点を見つけた。


閉めたはずの寝室の襖が、30cmほど開いていた。





闇深き寝室にさしこむ光の中に何か揺れるものがある。



───黒い尻尾。



おぼろげながらそれを照らす光のお陰で、あいつの物であろうしなやかな尻尾がゆらゆらするのが見える。





───何かにじゃれついているようだ。




俺はまだいたのかという面倒臭さを感じながら、どこかで安心感が湧くのを覚えた。



俺は寝室の入り口に近づく。



───何にじゃれついているのか?


寝室にはものがあまりない。


己の布団を引っ掛かれたら困るのだが。




好奇心に駆られて、ふすまの取っ手に手を掛ける。



右手で引いて開けると、まだ暗い室内に首を突っ込んだ。













──────後悔した。







「……………おい?なにやってん……………あっ、」




…………………。





──────────────

──────────

──────



黒猫は寝室をあとにする。


軽やかな動きでリビングに躍り出ると、


寝室を振り返った。






───────つまらなそうな、興味の無い眼をしていた。




黒猫は踵を返すと、鍵の開いた玄関の扉から出ていった。








………………黒猫は、住人の───“いなくなった”───家から消えた。











猫が何もいないところを追いかけてじゃれているのは、




人には見えない“何か”を見ているからだ。





(──年老いたある老人の怪談、“猫が追う「何か」”)



──────────────

──────────

──────




………いるべき人のいなくなった部屋の陰で何かが揺らぐ。




闇から現れたのは“何か”は、おぼろげな人影を成した。




「全く…………人はなぜ見ようとしないのか。




 人は決して見えないものの存在を知りながらも、それを忘れ、記憶の奥底へと埋めてしまう……




 そのくせ人はその“何か”に興味を覚えるやいなや、それを知りたいと考えてしまうのだ。




 たとえそれが決して見えないもの


 否、“見てはいけないもの”であっても。」



呟くような微かな低い声は誰もいない部屋に響く。




「興味を持つのは悪いことではない。


 それが人の特徴。人たる所以だ。




 だがそれが見えてしまったら、そこから先は我らが“世界”。



 決して戻れぬ“夜”の世界だ。」






…………黒い“そいつ”は禍々しい笑いを浮かべながら、闇へと消えた。





─── 一章“黒猫”完。



どうでしたでしょうか(´・ω・)


猫には見えて、人には見えない“何か”。


猫は妖しい雰囲気を持っている。


そう思うのは私だけでしょうか?


まあ、犬より猫派なブラックの主張です(;´д`)



出典、Wikipedia



怪談都市伝説の項



「猫が追う“何か”」より拡大解釈。



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