表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クッキングシンフォニー  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

2話

午前授業が終わった昼下がり。料理部の部室には、色とりどりの食材と弁当箱が並んでいた。

顧問の女性教師が声をかける。

「今日は素材自由の課題。テーマは“弁当作り”。作ったらみんなで品評して、試食しましょう」


包丁がまな板を叩く軽快なリズム、唐揚げを揚げる油のパチパチ音、弁当箱の蓋がカチッと閉まる音――部室は昼市のような賑わいに包まれた。

甘辛ダレの香り、卵焼きの甘い匂い、野菜の青臭さ、揚げ油の香ばしさが混ざり合い、空気は食欲をそそる。


机の上には部員たちの弁当がずらりと並び、彩り豊かな展示会のようだった。赤・黄・緑が鮮やかに並び、午後の光がそれぞれの弁当箱を照らしていた。


---


湊は真っ白な弁当箱を前に、落ち着いた手際で「肉巻きおにぎり」を作っていた。

姿勢は端正、所作は静か。だが肉を豪快に巻きつけ、タレを絡めると汁がはみ出し、蓋が閉まりにくい。


「え、見た目は綺麗なのに、めっちゃ豪快!」

「弁当箱からはみ出してるじゃん!」


女子たちが笑い声を上げる。湊は「見た目はまだ課題だな」と心で反省しつつも、「食べれば絶対美味しい」と自負し、照れ笑いを浮かべた。

豪快さを笑われて少し恥ずかしいが、楽しそうに見られるのは悪くない――そんな複雑な感情が胸に広がった。


ふと隣を見ると、美咲の弁当が目に入った。雑な手つきなのに、色の配置は計算されていて、思わず「雑なのに計算されてる」と心の中で驚いた。


---


美咲は卵焼きを焼き、野菜を切り、唐揚げを詰めていた。

卵焼きは不揃い、野菜も大きさがバラバラ。だが弁当箱の中は赤・黄・緑がバランスよく並び、色の配置は計算されていた。


「雑すぎ!」

「でもなんか映える!」


女子たちが驚きの声を上げる。美咲は「雑って言われても、色の配置はちゃんと考えてる」と心で反発しつつ、「計算してることを分かってもらえた」と胸の内で嬉しさを噛みしめた。

悔しさと嬉しさが同時に押し寄せ、複雑な感情が心に残った。


湊の弁当をちらりと見て「豪快なのに姿勢は綺麗」と感じ、少し不思議な気持ちになった。


---


やがて品評の時間。机の上に並んだ弁当箱は、午後の光に照らされて鮮やかに輝いた。


「湊の肉巻きおにぎり、豪快すぎて弁当箱からはみ出してるけど、味は最高!」

「美咲の弁当、形はバラバラなのに、色合いが綺麗で食欲そそる!」

「この唐揚げ、衣がカリッとしてて映える!」

「こっちのサラダ、彩りがインスタ映えする〜」


部員たちが次々に感想を口にし、笑い声が響いた。


試食すると、肉巻きおにぎりを噛んだ瞬間、タレがじゅわっと染み出し、米のふっくら感と肉の香ばしさが口いっぱいに広がる。

美咲の卵焼きは甘さがふわりと広がり、野菜のシャキシャキ感がアクセントになっていた。唐揚げは衣がカリッと割れ、中から熱い肉汁が広がる。


「これ、彼氏に食べさせたら絶対落ちるやつ!」

「湊くん、弁当男子ってモテるんだよ〜」

「美咲の弁当、雑なのに逆に映え狙ってるでしょ!」

「写真撮ろうよ!今日の部活弁当ランキング作ろ!」


女子高生らしいノリが飛び交い、部室は笑いと熱気で満ちていった。


---


午後の光が弁当箱を照らし、豪快と繊細――正反対の二人の弁当が机の上で並んで輝いていた。

家庭的な温かさと挑戦的な豪快さが、同じ机に並んでいる。

窓から吹き込む風に桜の花びらがひらりと舞い、二人の弁当の上に落ちる。

その瞬間は、豪快と繊細を結ぶ橋のように見え、二人のこれからを象徴するように静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ