嫌悪感と嫉妬とたまにG
彼は、友達の彼氏だ。
そして、私の職場の先輩。
本当なら、祝福だけしていればよかった。
「あんたの彼氏、ほんとに優しいよね」って、笑っていればよかった。
あの子が惚気るたびに、心がちくりと痛む理由なんて、
気づかないふりをして生きていけばよかった。
でも無理だった。
仕事の帰りにふと優しく声をかけてくれたとき。
書類を落とした私を、さりげなく庇うように拾ってくれたとき。
彼の横顔が、あまりにも穏やかだったから。
好きになってはいけない。
誰よりも、いちばんよくわかっているのに。
友達の笑顔を見るたびに、胸の奥で醜い感情が蠢く。
嫉妬。
そんな言葉、自分には似合わないと思っていたのに。
人の幸せを妬むなんて、最低だ。
自分で自分を嫌いになる速度が、日を追うごとに速くなる。
ベッドに横になった夜、どうしても消えてくれない。
彼が笑った顔。
名前を呼ばれた時の、あの少し低い声。
それが波みたいに押し寄せて、胸が熱くなる。
“やめなきゃ”
と分かるのに、
彼を思い浮かべるだけで
身体が震えてしまう。
触れてほしいわけじゃない。
抱かれたいわけでもない。
ただ、
ほんの一秒だけでも、私の方を見てほしかった。
それだけ。
彼を想いながら右手が下に伸びる……
荒い息遣いに没頭しはじめる……
突きだった胸を揉みしだくと
私は彼を下の名前で呼び始めてしまう……
行為が終わったあと、息を整えながら涙が滲む。
彼を思った自分が情けなくて、不潔で、友達に申し訳なくて。
「ごめん……ほんとうに、ごめんね……」
誰に向けた言葉かもわからないまま、
暗闇に小さく呟く。
私はあの子の友達で、
彼の部下で、
誰のものにもなれない名前のない存在。
それでも、
叶わない恋に焼かれるように苦しみながら、
今日もまた彼を思い出してしまう。
どうしてこんなに──純粋で、みっともなく、痛いほど好きなんだろう。
大嫌いだ……こんな自分。




