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底辺配信者の私、朝活配信中に遭遇したキメラにされた少女と契約して悪の秘密結社をぶっ壊したら伝説になってしまう  作者: マグローK


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第15話 最終決戦! 完成品のキメラ!

 パカラッ、と音をさせての急接近。折られた刃が勢いよく後方へ飛んでいき壁へと突き刺さった。


 梨理安ちゃんは一撃で私の持ってきたBランクダンジョン用の剣をいとも容易く刀身ごとへし折ってしまったらしい。


 これでもそこらの壁くらい簡単に切れる剣なのに……。

 マンションの解体もできるくらいの装備だけど、ゴリラのパワーには勝てない訳ね。


 今の梨理安ちゃんがちょっとした分析をする隙を見逃してくれるはずもなく、すかさず反対の腕による連撃が飛んできた。私は転がりながらそれを回避。


「…………」


 距離を取ってその表情を見ると、信じられない物でも見るようにその剛腕と私のなまくらを見比べていた。


「完成品の攻撃をいなすとは、そこそこやるようだな。だが、人間に上位存在を倒すことは不可能。やれ!」


「……!」


「くっ」


 とっさに取り出した剣が悲鳴のような金属音を上げながら次々とへし折られていく。


 完成品と呼ばれるくらいだし、九美果ちゃんより弱いってことはないか。


 それにしても、梨理安ちゃんは元から物静かなタイプの優しい子だったイメージだけど、今の静けさはそれとはまた違う雰囲気だ。


 簡単に言えば不気味。眼圧が以前とは段違いに鋭い。


 それが改造の影響だと分かっていても、まだ今以上の実力を出す気にはなれない。


「噛子お姉ちゃん。どうして本気を出さないの? 今のままじゃ噛子お姉ちゃんが危ないよ」


 九美果ちゃんの悲鳴に私は胸が痛くなった。


「梨理安ちゃんは敵じゃないから、攻撃はできないって」


「でも、そうしたら噛子お姉ちゃんが」


 九美果ちゃんの指摘は確かにそうだ。状況は外から見たら防戦一方に見えると思う。


 私だって本当なら攻撃を受けるのも嫌だ。


 孤児院で出会った梨理安ちゃんは、外部の人である私に対しても優しく接してくれた。院内の案内もしてくれたし、おままごとにも混ぜてくれた。

 そんな大人相手でも気遣えるような子なんだ。闘争なんて望んでいるはずがない。


「くははははは! もしかすると、元に戻せるなどと信じている訳じゃあるまいな? 完成品は私の指示を忠実に実行する傀儡。そんな願いは届かない。ほうら動け動け!」


「…………ふぅっ!」


「梨理安ちゃん!」


 梨理安ちゃんが腕を振ったその風圧で石造りの壁がへこんだ。

 今やAランク以下、全ての剣が刀身を粉々に砕かれて、ツバだけが残った状態。私はへこんだ壁を背に止まった。


 正直、身のこなしで攻撃の威力が殺せているつもりだ。それでも、武器が跡形もなくなるほどのダメージを受けるとは予想していなかった。


 身長で言えば私が見下ろすくらいの身長しかない梨理安ちゃんだが、私を追い詰めようとするその姿には異様な雰囲気があった。

 怒るでもなく、憤るでもなく、戦いを楽しむでもなく、ひたすら虚無。無感情でただ仕事をこなすような感覚。


 こんなもの、絶対に間違っている。


「ようやく追い詰められたな。手品のように出していた剣もストックが切れたか? これでとうとう終わりだろう。敗因は失敗作を大切に扱い、自らが前に出たことだ」


「……私は負けてない」


「ふっ。負け惜しみを。さあ、甲久雨梨理安。ひと思いにやってしまえ!」


 梨理安ちゃんの接近と同時、私は唯一腰に下げていたオーダーメイドで200万のSランク攻略用に用意していた剣を抜いた。


 先ほどまでと同じように梨理安ちゃんによる大振りの拳が一瞬にして剣に衝突した。


 だが、今回は刀身に傷一つつかなかった。


 攻撃はそよ風が私に届くだけで、剣を前に梨理安ちゃんの腕はまるで固定されているかのようにピクリとも動かなかった。


「なっ……。バカな。何をやっている!」


「やっぱりこれを出さないとかぁ。仕事を思い出すから、できるだけ使いたくないんだけどなぁ」


「何をごちゃごちゃと……、動け! 動くんだ甲久雨梨理安!」


 ツバを飛ばして言う元院長。

 だが、それは無理な相談だろう。力んで顔を真っ赤にしている梨理安ちゃんがそれを一番理解しているはずだ。


 自己主張が苦手なのはキメラになっても変わっていないらしい。


「痛いと思うけど、今だけ我慢して」


 私は剣の鞘でみねうちのように梨理安ちゃんの首をしたたかに打った。

 その体から力が抜けたのを見て、私はそっと抱き止める。


「さて、完成品と言っていた梨理安ちゃんはこれで無力化しました。あとはあなただけですね」


「……」


「ここまで追い詰められたら、観念しなさ」


 カチッ、という機械的な音がした。

 今回は元院長の足元から。


 その瞬間、ガラガラァッ、と地下空間全体に音が広がり、天井からぽろぽろと細かい石の破片が落ちてきた。


「自爆装置? いやまさか、そんなはず……」


「そのまさかさ」


 自慢げに両腕を広げて元院長は不気味な満面の笑みで私に見てきた。


「私を止めたことは褒めてやろう。だが、データをこれ以上渡すつもりはない。これが観念した私の態度だ」


「往生際の悪い」


「なんとでも言うがいい!」


 高らかに宣言した元院長の頭に頭上から落ちてきた瓦礫が激突した。


 血を流しながらその場に倒れるも私たちを見て血まみれの顔面に口が裂けんほどの笑みを浮かべている。


「逃げるなりなんなり好きにするといいさ。今さら持っていけるものは何もあるまい。私と心中するのもいいだろう」


「そんなことする訳ないでしょう」


「そうだろうな。だが、私は1人じゃない。すでに種は撒いてある。引き継ぐ者たちがすぐにでも現れるだろう。私の思想は永遠に不滅だあああああ!」


「……行こう!」


 私は梨理安ちゃんを抱きかかえて九美果ちゃんに目配せしてから階段を駆け上がった。

 視界の端では瓦礫に足を潰された元院長の姿が一瞬目に入った。


 階段を登っている間に声は聞こえなくなった。


 階段を抜け、地上へ出る扉を抜けると、すぐに瓦礫が押し寄せ階段は跡形もなく地下への道は塞がれた。


 今は、梨理安ちゃんを救出できたことを喜ぼう。

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