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底辺配信者の私、朝活配信中に遭遇したキメラにされた少女と契約して悪の秘密結社をぶっ壊したら伝説になってしまう  作者: マグローK


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第1話 朝活配信でバズる

 朝活配信。


 それは、朝の時間を有効活用して、1日を健やかに過ごすためのスタートダッシュを切るもの。少なくとも私はそう認識している。

 私、銀牙観ぎんがみ噛子かみこはダンジョン私塾認知拡大のため、今日も朝から配信をして多くの人に知ってもらおうとしている最中なのだけど……


「さて、ここまでの四足系モンスターに対する立ち回りは伝わりましたか?」



「…………」


 ドローンのカメラに向けて聞いてみたけど、待てど暮らせどコメントはつかない。多分10分くらい経ったと思うのに反応はゼロだ。

 同接がバグっていなければ、2とか3、多ければ6になっている数値の奥にどなたか人がいるはず……だ、誰かは見てくれているはず。


 はずなのだけど、コメントしてもらえるほど、視聴者の方と関係を築けていないらしい。魅力をアピールできていないってことかな。


 湿っぽいダンジョンで1人、私の声だけがこだましている。

 そんな現実を認識してしまうと、配信中なのに、はあ、とため息をつきそうになる。もちろんしないよ?


 ダンジョンの後始末屋をやっていた時に気づいたから、ダンジョンで夜を明かしていたのでは人を助けることはできない。より人を守るため、自力でダンジョンに抗えるようになってもらう。

 そんな覚悟をもってダンジョン私塾を始めたのだ。こんなところで折れてはいられない。


「えーっと、そう、ですね。実戦は宿題としておきましょうか。朝の時間で忙しい方も多いでしょうからね」



「それでは、時間も長くなってきたので、そろそろ切り上げようと思います。これからもみなさんが健やかにダンジョンライフを送れますように。それでは一緒にー? おつかみかみーまたー」



 ドローンのカメラに向けて笑顔で手を振りながら5分程度待ってみたけれど、やっぱりコメントは1つとしてつかなかった。

 ただ、同接はみるみる減って1になった。

 終わったと思った人が見るのをやめてしまったんだろうな。

 いや、配信は終わり終わり。


「ここからは次に備えてセルフ作戦会議をしないといけないんだから」


 自分に言い聞かせるように声に出しながら、私は気合を入れるために両手でほっぺをパンパン叩いた。

 ジンジンとするほっぺの痛みで自分の存在が消えていないことを思い出す。

 後始末屋をやっていた時からの習慣だ。


「さて、と。まずは帰りますかぁ」


 どちらかといえば私は体を動かしながら考える方が得意だ。


 剣を解説用のなまくらから、普段使いのものへと差し替える。

 その隙に近づいてくる牛サイズの豚系モンスターを剣の一振りで木っ端微塵にした。


「慣れちゃうと急所に当てずに倒さないようにする方が大変なんだよね」


 ただ、そこまでいかないことにはダンジョンは危険がつきものだ。

 そして、そこまでいっても不意打ちで死んじゃったりするのもダンジョン。


「コケェエエエエ!」


 ダチョウのようなニワトリ風モンスターが脇目も振らずに走ってきた。

 ダンジョンをコツだけでなんとかしてるからね、モンスターからしたら雑魚に見えるんでしょう。


「はいはい」


 私は通り過ぎざまにニワトリを切り裂いて、さらに階を上がろうとした。

 のだが、階段に足をかけたところで私は足を止めた。


「……ガツガツ、ガツガツ、ガツガツ」


 聞き慣れない音が響いてくる。

 それはまるで何かを一心不乱に食べているような、そんな音。

 野生動物が捕食しているような容赦のない咀嚼音。


「モンスター……? いや」


 モンスターの可能性は考えにくい。なぜなら、モンスターはダンジョンからの魔力供給で生きていけるからだ。

 他のモンスターを捕食する危険を冒さなくても生存できる。

 もしモンスターが他のモンスターを捕食するなら、それは成長のため、もしくはダンジョンからの魔力供給では足りないほどの大食い。


「じゃあ、野生みのある探索者か」


 私としては納得できる答えだ。


 Aランクダンジョンに朝から探索へやってきている人なんて、正直探索歴長しと言えど、私は出会ったことがない。

 大抵はパーティで来るから、時間を合わせたり、今日の目的を決めたりして早くても昼頃から探索を始める人ばかりだと思っていた。


 けれど、モンスターがモンスター捕食をしているよりも可能性としては大きい。

 探索歴長しと言えど、モンスターがモンスターを捕食している話なんて、創作でしか聞いたことがない。


「なんだ。この時間で探索してる私は別におかしくないじゃんね」


 1人、勝手に仲間を見つけた気になって期待しながら音の方へと向かった。


「え……」


 目に飛び込んできた光景に私は絶句してしまった。


 私の視界に入ってきたのは人でもモンスターでもなかった。


 言ってしまえばその中間。ボサボサに伸びっぱなしの髪。それも右が黒髪、左は白髪。そして、くすんだ肌に右は黒目で左が真っ赤な瞳をしたボロボロなワンピースだけを着た少女。そう、ここまでは普通の人間に見える。

 ただ、その体は歪でとても人には見えなかった。腕や足は人のものにカマキリやバッタの手足を後からつけたような姿をしていて、落ち着きなく動き続けている。

 目の前の少女は無造作に鎌状の腕でトラックほどもありそうな牛型モンスターの体をさばいては、そのまま喰らいついていた。


「なにあれ。なにあれ」


 これまでの探索者人生の中で見たことがない何かだった。


 動物になるスキルを持っている人でもここまで中途半端な姿はしていなかった。

 大抵が、まるっきり動物になってしまうのだ。


「魔力量もえげつない。捕食の隙をさらしても周りのモンスターを寄せつけないほど。今まで会ってきた中で一二を争う個体じゃない?」


 観察する私に、彼女は気がつくとじっと目を向けて、向こうの方からも観察するようにしばらく見てきた。

 一瞬だけ目が合った気がする。その顔はよく見るとどことなく見覚えがある気がした……。


「って、いっけない。分析だけじゃなくて記録記録」


 我ながら探索者精神をなまらせていた。

 新種のモンスターならデータを集める必要がある。そこらの雑魚とは話が違うのだ。


「もしかしたらフロアボスの進化した姿とかかもしれないし」


 背を向けて逃げる少女を前に慌ててスマホを取り出したところで、私は固まってしまった。


 いや、こんなポカ、本来の私ならしなかったと思う。


「通知がすごい。なんか広めてもらってる……ってか配信切れてないじゃん! あれ? なんで同接が増えてるの!?」


:うおおおおお!

:やっと気づいたぞ

:クバちゃんの配信から来ました!

:さっきのなんですか?

:反応かわいいな


 同接2000の瞬間に見たはずが、視聴者の数がみるみるうちに増えていく。


 謎のモンスターを発見したことが記憶から飛んでしまいそうになるほどに、私の頭は疑問で埋め尽くされていた。


「え、えええ? 一体何が起きてるの? 誰がこんなことしてるの? これ、本当に私の配信!?」

いつも読んでくださりありがとうございます。


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