第七話 「みんな……!」
「リアム!?」
オリヴィアが叫ぶ。
ボルガンの剣は、ノアではなく、リアムの脇腹に刺さっていたのだ。
「き、貴様……! ごふっ」
ボルガンの口から血が溢れ出す。見ると、リアムの剣がボルガンの心臓近くを貫いている。ほどなくして、リアムとボルガンがその場に崩れ落ちた。
「リアム!!」
オリヴィアがリアムのもとへと駆け寄る。
「はは……こんなときに、やっと、目が合うなんてな……」
自嘲的に笑うリアム。
「喋らないで! すぐに傷の手当をしないと!」
オリヴィアはリアムの傷口を押さえて止血を試みる。そのオリヴィアの手に、リアムの手が重ねられる。
「……大丈夫だ。傷はそれほど深くない」
「で、でも……!」
「これを!」
ノアが自分の服の裾を引きちぎり、オリヴィアへと渡す。オリヴィアはそれを受け取ると、リアムの脇腹を一周させた。
リアムは寝転がったまま、そんなふたりを見ている。眩しさに、少し目を細めた。
「俺が間違えていたよ」
リアムがふたりを見ながら言った。
「ドラゴンは敵なんだとずっと思っていた。けれど、人間同士でも争い傷つけ合う。きっと種族なんて関係なかったんだよな……」
「リアム……! もう大丈夫だからっ! 血がっ……!」
「大切なのは互いを理解しようとすること。そして歩み寄ること」
リアムはオリヴィアの後ろに立っている人たちを見て、少しおかしそうに笑った。
過度な出血のせいで、視界が霞んできている。そこに立っているのが、人間なのか、ドラゴンなのか区別もつかない。それが、ドラゴンと人間が溶け込み合っているように思えたのだ。
「リアム」
ノアがリアムの傍に膝をついた。
「本当に今まですまなかった。差し出がましい願いだが、今後の国の発展のためには、お前の力が必要だ。手を貸してくれないだろうか」
リアムは先ほどより大声で笑った。
何故この王は、自分に反旗を翻した相手に謝っているのだろう。
「俺は……」
「戯言をおおお!!」
リアムの返事を遮ったのは、倒れていたボルガンだった。
最後の力を振り絞り、落ちていた剣をリアム目掛けて振り下ろす。
ノアが態勢を翻し、その剣を受け止めようとしたが、その直前でボルガンの動きは止まった。
「リアム! 大丈夫か!?」
「……っ! 親父!」
ボルガンの背後から現れたのは、リアムの父親だった。
「俺の息子に何をしようとしている!」
「そうよ! リアムに手出しさせやしない!」
「そうだそうだ!」
城の者たちの声だ。
「みんな……!」
みんながリアムを守ろうと戦っている。その姿に、リアムは涙が溢れてきた。
「ごめん……親父、ごめん……! みんなもごめん!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、リアムは何度も何度も謝罪を繰り返す。
「くそ! くそ! お前ら! さっさと俺を助けないか! こいつら皆殺しだ!!」
もうボルガンの命令に耳を貸す者はいない。
「くそおおお!!」
最後に獣のような叫び声をあげ、ボルガンは力尽きたように倒れ込んだ。
近くにいた村人がボルガンの脈を確認したが、無言で首を横に振る。
「誰も死なせる気はなかったんだがな……」
ノアの悔しそうな声が漏れる。オリヴィアはそっとノアの手を握った。




