第三話 「どこを見ているんだ!!」
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「リ、リアム!」
黒いローブとドラゴンたちの戦闘の隙を見つつ、ノアとオリヴィアの近くに潜んでいたリアム。網がドラゴンたちに投げかけられる直前に、オリヴィアを引っ張りだしていたのだった。
オリヴィアの声が聞こえていないのか、リアムは振り返ることもなく、ひたすら城の中を突き進んでいく。
その足が、ふいに止まる。
「オリヴィア! 遅くなってごめん! やっと助けることができた!」
振り返りながらそう言ったリアムは、満面の笑みだった。
その表情にオリヴィアは驚きを隠せない。そのままリアムの話は止まらなかった。
今まで自分に起きたこと。黒いローブたちのこと。城内の現状。オリヴィアに全てを聞かせるリアム。次から次へと溢れ出る言葉は止まらない。
「ちょ、ちょっと待って! リアム、私の話も聞いて!」
痺れを切らしたオリヴィアが、大きい声でリアムの話を遮った。
「ネッドと! ネッドと会ったのよ!」
「そうなのか! オリヴィアもネッドと会ったのか!」
リアムは嬉しそうに言った。
「それでね、ネッドは今少し離れた村にいるんだけど」
「村?」
「そう! そこではね、ドラゴンと人間が共存しているのよ!」
リアムの表情が固まる。
オリヴィアが村について話せば話すほど、リアムの目から光が失われていく。
「だから私たち、分かり合えると思うの!」
「そんなわけがあるか!!」
突然、リアムが大声で叫んだ。
「オリヴィア。ネッドと会ったんだろ? あの痩せ細った体も、傷も、全部ドラゴンのせいなんだぞ!?」
あまりの気迫にオリヴィアは、小さく後ずさりする。
「そ、そうなんだけど……」
オリヴィアの声は小さくか細くなり、リアムを見ていられず目を逸らす。
「でも……あっ、ノア!?」
そう叫びながら、オリヴィアは廊下の窓へと駆け寄っていった。
「大変! ノアが!! 助けに行かないと!!」
窓の外では、ナイフを持ったボルガンがノアの前まで迫っていた。
「どこを見ているんだ!!」
リアムは大股でオリヴィアに近づき、腕を掴むと、無理やり自分に向かせた。オリヴィアの顔を両手で押さえつけ、強制的に視線を合わせる。
「今、お前の前にいるのは俺だろ? 俺を見るんだオリヴィア」
リアムの顔が、オリヴィアへと迫っていく。顔を押さえる力が強すぎて、オリヴィアは逃げ出すこともできない。
オリヴィアの目の前まで迫ったリアムの顔。
オリヴィアは咄嗟に目を閉じた。
ガンッ
鈍い音とともに、顔の拘束がなくなった。
目を開けたオリヴィアの前には、ほうきを持ったマーヤが立っていた。リアムは頭を抱えて地面にしゃがみ込んでいる。
「オリヴィア! 今のうちに早く行って!」
「でも……!」
「急いで! 大事な人なんでしょ!?」
オリヴィアは一瞬躊躇った後に頷き、ノアのもとへと走り出した。頭を押さえながら立ち上がったリアムが、その後を追おうとする。
「ダメ! 行かせない!」
マーヤがリアムの腰に抱きつき、それを阻止する。
「離せ!!」
マーヤはありったけの力でリアムを抑える。どんなに惨めな格好をしていようとも、絶対に離すまいと、より一層その力を強めるのであった。




