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第一話 「正面突破だろ!」

 恐ろしいほどのスピードで空を駆けるドラゴンが三匹。

 白銀色のドラゴンの背には、マントをはためかす人影。しっかりとドラゴンの背にしがみついている。落とされることなど微塵も考えていないのだから、強張る拳は緊張の現れかもしれない。


「見えてきた……」


 まだ小さいが、城を視線の先に捉える。ドラゴンたちがより加速したようにオリヴィアは感じた。まだ遠くに見える城だが、この分ではあっという間に到着するだろう。オリヴィアはしっかりと城を見据える。


 城が近づいてきても、ドラゴンたちのスピードが落ちることはなかった。ローマンが心なしか少し口角を上げながら、三匹の先頭を行く。リリーも負けじと翼を大きく広げ、飛んでいく。ノアはそんな二匹を呆れた様子で見ているが、彼の気合もまた隠しきれてはいなかった。


 城への距離がみるみるうちに縮まっていく。城にいる者たちも、もう三匹のドラゴンの存在に気がついているだろう。それでも一行は速度を緩めない。


「正面突破よ!」

「正面突破だろ!」


 村を出発する前の出来事だった。

 城への潜入方法を話し合っているとき、ローマンとリリーの声が重なった。

 城は湖に囲まれているため、こっそりと侵入するといっても船が必要になり、気づかれる可能性が高い。飛んでいけば、もちろん大きなドラゴンの体はすぐさま見つかってしまうだろう。みんなが頭を抱え、結論が出ないまま時が過ぎていくことに、ふたりは耐えきれなくなってしまったのだ。


「うだうだ考えているのは時間の無駄だ! 正面突破しかない!」

「あんたと同じ意見なのは癪に障るけど……私もそう思います、王!」

「はぁ……落ち着け。罠が仕掛けてあったらどうする?」

「俺たちだって色々と対策はした。あとは罠にかかる前に倒せばいい!」

「ローマン……はぁ……」


 ノアは何度目か分からないため息をこぼした。

 オリヴィアはというと、ノアの隣でただ聞いているだけ。というのも、今回の作戦において、自分は足手まとい以外の何者でもないことを気にしているのだ。戦うこともできなければ、飛ぶこともできない。


「お前らにとっては、コソコソする方が難しいだろう。お前ららしく、正面から乗り込めばいいさ」


 老婆の一押しで、彼らの作戦は決まった。

 そうして、溢れんばかりの闘気をたぎらせた二匹と、それを一歩後ろから見ている一匹という現在の構図ができあがったのだ。


 三匹が目指したのは屋根のない中庭。巨体で舞い降りるには、ここが一番適しているのだ。

 中庭が見えると、一行の目が三本の十字架をとらえた。城に残された三人のドラゴンが磔にされているのだった。

 項垂れている三人に意識があるのか、ないのか、上空からでは分からない。それほどまでに弱っているように見えるのだ。


 飛んでいる三匹の目が鋭く釣り上がる。


 ローマンの半歩後ろを飛んでいたリリーが加速し、ローマンを追い抜いてそのまま中庭へと直進。それにローマンとノアも続いた。

 中庭に舞い降りた三匹は次々に人型へと姿を変え、身につけたマントが風にはためいた。


「みんな! 今行くわ!」


 リリーの声に気づいた三人が顔を上げたが、その様子はどこかおかしかった。目をカッと開き、何かを伝えようとしているが、それは口を覆う布によって防がれてしまっている。


「かかった!!」


 リリーが三人まであと一歩のところまで迫ったときだった。

 突然の声とともに、視界一面が真っ白に染まる。考えるまでもない。ペイルダストが撒かれたのだ。

 周りが何も見えない状態の中、辺りは奇妙な静寂に包まれる。

 少し経つと、ペイルダストによる煙が落ち着き、周りが見えるようになってきた。


「やったか?」


 黒いローブのひとりが言った。

 目を凝らした彼らの視線の先には、四人の影が。


「容赦ねーな」

「本当に飽きもせず、同じ手ばっかり使うんだから」

「オリヴィア、大丈夫か?」

「ええ。私より皆様が」


 何事もなかったように会話するドラゴンたち。誰一人として倒れてはいなかった。

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