表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/70

第九話 「お前さんも罪な男だねえ」

 マーヤを先頭に、ドラゴンの王のもとへと向かう。俺は配膳台の下の段に隠れている。台には白い布を被せてあるから、外から俺の姿は見えない。


「あれー? みんな揃ってどうしたの?」


 風のドラゴンが現れた。俺を含め、人間側に緊張が走る。


「ねえ、何を運んでいるの?」


 少しずつ足音が近づいてくる。足音とともに、鼓動が早まる。


「お食事でございます」


 マーヤの声が少し震えている。もう足音はすぐそこまで迫ってきていた。

 出るしかないか、そう思い布に手をかけたときだった。


 ガチャンッ


 食器の割れる音がした。


「ちょっと! 服が汚れちゃったじゃん!」

「申し訳ございません。すぐにお拭きいたします」


 マーヤの声ではない。黒いローブの誰かだろう。


「いいよ! そんな近寄らないで……グッ」


 ドサッ


 言葉が途中で途切れ、何かが地面に落ちる音がする。

 ゆっくりと布を持ち上げると、そこには荒い呼吸を繰り返す風のドラゴンが倒れていた。


「こうも簡単に引っかかってくれるとは。縛っておけ」


 無抵抗な風のドラゴンが、縄で縛り上げられていく。


「ドラゴン様が……縄がほどかれたりしないかしら……」


 マーヤが呆気にとられた表情で呟いた。


「ドラゴンには毒になるペイルダストを練り込んだ縄だ。動けやしない。さっさと行くぞ」


 縄を締めている男が淡々と答える。

 とはいえ、マーヤの表情からは不安の色が消えない。今までずっとドラゴンたちの力を間近で見てきたのだから、仕方のないことかもしれない。


「マーヤ、安心して。ちゃんと俺たちは勝てるし、マーヤのことは俺が守る」


 城の人間の中で唯一、俺の考えを分かってくれたんだ。俺にはマーヤを守る責任がある。


「リアム……うん、分かった」


 俺の言葉に安心したのか、マーヤは頷いてから、また先頭に立って歩き始めた。


「お前さんも罪な男だねえ」


 ボルガンがそう言ったが、意味がよく分からなかった。俺はまた配膳台に身を隠す。


 布に覆われた暗い視界の中、城の中を進んでいく振動だけが感じられる。


 コンコン


 振動が止まると同時に、扉をノックする音が聞こえてくる。

 俺たち……人間たちの反撃開始の合図だ。


「ごめんね」


 布を取り払うと同時に、そんな声が聞こえた気がした。

 声の主を探し当てる間もなく、視界一面が真っ白に染まる。


 ドラゴンたちはペイルダストを吸い込んだだろうか。

 オリヴィアは無事だろうか。


 どこだ……!

 オリヴィア、どこなんだ!!


 煙が収まってくると、少しずつ辺りの様子が見えてきた。

 一番に目に入ったのは、黒いローブのひとりがオリヴィアへ手を伸ばす姿。


 オリヴィアに指一本触れさせてたまるものかと、焦ってそれを止めに入る。

 それでも、オリヴィアの口から出てくるのは、俺への感謝ではない。


 ドラゴンの王の味方をするというのか。

 あろうことかドラゴンの王を名前で呼んでいる。


 どうしてだ……!

 そいつは敵。ドラゴンなんだぞ……!!

 何故庇う?

 何故親しげにする……?

 俺の方が長くオリヴィアを見てきた。ずっと一緒に過ごしてきたんだ!

 なんでこんなやつに……!!


 ああ……。もうこいつからオリヴィアを引き離すには、殺すしかない。

 俺の手でドラゴンの王を。


 そう思ったときだった。


 耳を咄嗟に塞いでしまうほどの爆音と衝撃が、部屋を襲った。衝撃の正体は他のドラゴンだ。壁に大きな穴があき、そこから瞬く間にドラゴンの王とオリヴィアが連れて行かれる。


「オリヴィアッ……!!」


 必死に伸ばした手は、オリヴィアに届かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ