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路地を駆け、路地裏の抜け道を潜り、二人は逃げていく。
途中一度見失ったものの、二人の特徴的な匂い、というか魔力の痕跡のおかげで、俺は追いかけることができた。
やがて二人がたどり着いたのは、一軒の古ぼけた民家だった。
廃屋紛いの薄汚れた雰囲気の家に、二人が入っていく。
さて、どうしたもんかな?
家の周囲を探ると、朽ちかけた屋根に這い入れそうな隙間を見つけた。
あそこからなら、忍び込めそうだ。
屋根に転移した俺は、気配を隠しつつ侵入し、天井に張り渡された梁木の上で、下の様子を伺う。
下には先程の二人の他に、四人程の男たちがいた。
「何しくじってんだ、ガキい!」
罵声とともに、一人の男が男の子の方を蹴り飛ばした。
「ち、違うんだ、変な猫がいて……」
「たかが猫にビビッて、仕事を放り出したってのか! 舐めてんじゃねえぞ! 飼ってやってる恩を忘れやがって、この妖精もどきが!」
男が蹴りを何度も叩き込む。
「や、やめて下さい……お兄ちゃんに、ひどいことしないで」
別の男に抱きすくめられながら、女の子の方が泣きながら訴える。
「それじゃあ、お前が、あいつの代わりに、俺たちに誠意を見せてくれるのか? この間みたいに、さぁ?」
女の子を後ろから抱きしめている男は、下卑た笑みを浮かべて少女の足や顔を撫でまわしている。
「ひ……」
女の子の目に、嫌悪と恐怖が浮かんだのを見て、男の子が声を荒らげた。
「やめろ! 妹に手を出すな!」
「うるせえ!」
男が手にした棒状の『何か』を振りかざすと、男の子が苦痛で身をよじった。
腕を伸ばしてのたうつ男の子の腕には、奇妙な腕輪がつけられていた。
男の手元の『何か』と、男の子の腕輪が魔力で同調し、苦痛を齎しているようだ。
「お前らはそいつで縛られてるって、まだ分かってねえのか? もう一度、躾すっか? 面倒くせえ!」
男のつま先が男の子の体に突き刺さり、悲痛な叫びが上がる。
……ああ、胸糞悪いものを見ちゃったな。
ほんと、やだやだ。
腹の底に、どろどろとした怒りが沸き上がるのを感じる。
あまり、目立った行動はしたくないけど、流石にこれは見過ごせねえわ。
梁木を蹴って、俺は下へと飛び降りた。




