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それからの数日、俺はセラエノからこの世界について色々と教わることになった。
すなわち、この世界がどのような姿をしているのか。
そこで人間や人間以外の生命体が、どのような共同体をつくり、繁栄しているのか。
「この森は、中央大陸の西、ランド王国の領域のほぼ中央にあります。西に行けば、交易都市ヴィエルジェがありますから、まずはそこを目指してみるのがいいでしょう。東をずっと進んで山々を越えていくと、都市国家連合が広がっています。あちらの国は、妖精に寛容ではないので、気を付けてくださいね」
眼鏡をくいつ、と直しながら俺に説明してくれるセラエノ。
うーん、完璧な女教師ムープに、思わず挙手して質問してしまう。
「はい、セラエノ先生! クロニアの言ってた帝国って何ですか?」
「南にある海峡を越えた先、南方大陸に広がるガイエン帝国ですね。南方大陸は、古来から少数の国家が乱立していたのですが、三十年程前に初代皇帝が武力で統一、建国しました。今は内戦も落ち着いているようですが、近付く際にはこちらも気を付けて下さいね」
うーん、世界の危難って何なんだ。やっぱり、戦争とかなのか?
「過去、御使いが派遣された危難というと、魔法文明が人類の大半を死滅させるような発明をしたり、大地の震えで大陸が崩落しかけたり、堕落した魔神が世界を闇に包もうとしたり、とかですね」
ファンタジックなネタが多いなぁ……パターンが多すぎて、見当がつかないな。
そして、そんな授業の合間で、力の使い方の指導を受ける。
いつぞやハゲンと戦った修練場に連れ出されて、改めてレクチャーを受ける。
「ソータさんは、魔法とクロニアの権能とを、上手く使い分けられるようになりましょう」
「どう違うんです?」
「魔法とは、人にあっては、神言と魔力によって世界の理に介入し、奇跡の業を起こすとです。一方、妖精はより魔力の塊に近い存在であるため、神言なしでも世界の理に介入し、廃法を使うことが出来ます。ソータさんの場合だと、姿を変えたり、強力な攻撃を放つ時に使っているものです」
セラエノが、何かを呟くと、自分の掌の上で炎を起きた。
「これが、魔法ですね。そして権能は、魔力を奉じることで、神の力を一時的に借り受けるもの。御使いだけの特権です。ソータさんの場合、時間と空間の操作が、それですね。神の力そのものですから、魔法では起こし難い事象も、起こせるんですよ?」
ふーむ、成程。
というか、ハゲンと戦う前に教えておいてほしかったなあ。
「こうしたことは、頭で考えても仕方ないんです。感覚が追い付かないと、意味ないですか
ら」
そして、俺はセラエノの指示で、魔法を使って素早く化ける練習や、炎を起こす練習、あるいは権能を使って、短距離跳躍を繰り返したり、空間の間に断裂を作る特訓などに励む。
「ソータさんって、人間に化けるの、お上手ですね」
「え、そうですか?」
「ええ。妖精猫に限らず、動物から妖精になった子たちって、人間に化けるのが苦手な子が多いんですよ。人間を模倣しようとして耳や尻尾を隠し切れなかったり、あるいは表情が硬かったり。それで妖精だとばれる子たちも多いんです。けれどその点、ソータさんは完璧ですね」
まあ、元人間ですので。とはいえ、褒められたのは、素直に嬉しい。
時折、ガーブやハゲンたちも参加して、俺の特訓が続いた。
気が付けば、一か月が経過していた。




