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おうさまがかえってくるようななにか

「国王陛下。貴方が悪いのだよ、私たち貴族を蔑ろにしているのだから」


「……」


「ふふふ、声も出せないか。

 さしもの古代の英雄も、現代の魔術士百人による束縛には手も足も出ないようだな」


 フェノチルム王国宰相ジャルガモンは悦に入る。


 この王国は建国より千年の治世を誇る。

 政変などで王朝が変わった事を考えれば、周辺国家では一番の古さを持つ国である。

 だが、他国からは成り上がりの蛮族国家として見下される。


 理由はその王にある。

 王はこの地にあった魔物の湧き出る魔窟を鎮め、建国を果たした英雄だ。

 在位は治世と同じく千年、人の身でその年月を経られる方法を知る者は当時は居たかも知れないが今は居ない。

 高貴な血が混ざったわけではない、只の成り上がりだというのが他国の見解だ。


 問題はそれだけではない。

 他国と比して自国の貴族の権力は少ない。

 貴族ではあるので貴族間で婚姻するのだが、相手が他国の者だとそちらの親戚から嫌味や忠言を言われる。


「それだけの地位にあるのにその程度の事も出来ないのか?」

「地位に見合った権力があるべきだ。今の待遇は不遇すぎる」


 もっともだと思い王に訴え出ても、建国当初からの方針と退けられる。

 不満を溜める貴族は少なくなく、それらを束ねて人知れず万全の準備を整え、ようやく今に至った。


 それらの苦労を思い出し喜びをかみ締めるジャルガモンだが、王を拘束している障壁が少しずつ砕かれだしたのを見て頬を引き攣らせた。

 慌てて次の指示を出す。


 王を倒そうと考えた際、最も頭を悩ませたのがその倒し方だ。

 骸骨のような外見のくせに素早く、無駄に頑丈。

 数々の犠牲の上、導き出されたのは多重障壁ならばなんとか抑えられるだろうという事。

 しかし、それでは此方からも攻撃する事はできない。

 貴族全員の賛同があるわけではないので、永遠と封じておく事もできない。


 そこで考えついたのが攻撃ではなく相手を消し去る方法。

 元にしたのは転移魔術。

 それを改悪した結果、実験対象はこの世から消え失せた。


 指示に従って執務室になだれ込んで来た魔術士の中でも高位の十人は、王を取り囲み呪文を唱えだす。

 王の周囲が黒く染まっていき、障壁ごと完全に包み込んだ。

 そして次の瞬間、それは弾けて跡形も無く消えた。


「これでこの国は正しく生まれ変わる。

 さあ、新たなる王を迎えに行くとしよう」


 ジャルガモンたちが去った後には、誰も居ない執務室が残った。


―――


 建国史に曰く、無限に魔物を生み出す魔窟を鎮め王となり、この地に国を建てた。

 単純に事実だけ抜き出せばその通りだが、語られていない事柄が幾つかある。


 この世の中、万物万象に神が宿り、神気に満ちている。

 勿論、人にも宿っており、内神(自らの内に宿る神)と対話する事でその力を行使する術を手に入れる。その術を指して神術と言うが、これは余談。


 神気に満ちているといっても、多い所、少ない所、流れている所、留まっている所と様々。

 神気は清浄ならば活力を与えるなど良い効果を齎すが、反面穢れると悪影響を及ぼす。

 そうした悪影響を及ぼす穢れた神気の事を瘴気と呼び、それに侵され変質した物が魔物だ。


 そして、魔窟とは地下に瘴気が溜まり、魔物が発生し続けている場所を指す。

 大抵洞窟なので魔窟。

 これが地上ならば魔界と呼ばれ、海ならば魔海と呼ばれる。


 当時、元王は魔物を狩る集団の長をしていた。

 魔物は生きている時は瘴気に侵されているが、倒されると一切の瘴気が失せ、色々な素材を得られる。

 それらを売って生計を立てていたのだが、問題点が一つ。


 理由は不明だが、魔物を倒すとそれから瘴気が失せるだけではなく、その周囲からも失せ、換わりに穢れの塊が生じる。

 つまり、魔物を倒すと魔物が生まれる環境ではなくなり、稼げなくなってしまうのだ。

 この塊は瘴気核と呼ばれ、万神殿の人々が浄化をするためにと買い集めているが、少額なのでさほど足しにはならない。

 魔物が尽きれば新たな狩場を探して情報集めや移動などしなければならず、魔物狩りの集団は他にもいたので着いた所で無事な狩場かどうかは運任せ。


 有限な魔物資源、それが問題だった。

 瘴気核を利用して魔物を造ろうとする者たちもいたが内神に反旗を翻されたり、自身が魔物化したりと碌な事にならなかったので手は出さず、かといって何処かのお抱えになり指定の狩場を巡らされるのも気に食わないと誘いは蹴っていた。


 魔物は生もの。鮮度が大切な部位もあり、加工するにも場所が必要なので人里近くが狩場として理想ではあるが、そう贅沢を言っていられる状況ではなくなりつつあり、競争激化する前にと未開の地へ足を向けた。

 加工場を中心とした一時的な拠点を作り、周囲を狩り尽くすと更に奥へと向う。

 これを繰り返し続ける事数年、件の魔窟にはそうして辿り着いた。


 魔窟もこれまで通りに処理しようとした。

 しかし、上手くはいかなかった。


 深い地の底に、居たのだ。

 瘴気に狂い、歪んだ神が。


 神術の極みに神化というものがある。

 文字通り自らを神そのものと化し、その力を自在に揮えるようになる。

 魔物の変質した部位は部分的な神化だという説もあり、その延長線上にそういう存在がいる可能性が示唆されてはいた。

 だからと言って、まさか自分たちが出会うとは思っていなかった彼らは、苦戦を余儀なくされた。

 多数の犠牲者を出しながら何とか倒すと、巨大な瘴気核が生じた。

 神だったからで済ませれる大きさではなく、よくよく調べればその神は辺り一帯の土地に宿る神だった。


 その時、瘴気に中てられたのか一人が言った。


「瘴気は一旦が消えてもまた生じるが、すぐに魔物を生じるほど影響力のある濃さにはならない。

 しかし、これだけの土地の広さから一点に凝縮すればどうだ?

 幸い、場所は空いている。誰かをねじ込んで制御させればあるいは」


 誰をと言う問いに、一人の人物が挙がった。


 婚約者を失って抜け殻の様になっている団長。

 本人、内神共に能力的には申し分ない。


 賛成多数で可決され、すぐさま制約魔術が組み立てられた。

 魔術とは、魔物化した人間がその者の内神ではありえないはずの神術を使った事の研究の中から発明された技術で、神気は使うものの、内神との対話は特に必要としない。

 ただし、内神と離れている事、例えば炎神系なのに水系を使うなどすれば内神の離反を招き、それほどでは無くても無理な力なため、行使にはその離れ具合に応じた瘴気の発生を伴う。

 そういった注意が必要なものの、神術よりも利便性や汎用性は高く、こういった変わった事に用いられる。


 土地を統べる者という制限は外せなかったために王として祀り上げた。

 これが建国史の真相だ。

 魔物の管理や近場に拠点設置など理由から魔窟を形成、その拠点が発展して国となった。


 なお、団長が我に返ったのはそれから五百年程後の事だ。

 婚約者を失った衝撃だけでなく、突然大量の神気を押し付けられ、その処理に手一杯になり、外部に向ける余力が無くなったからであろう。


 五百年経っている事に驚いたが、制約に縛られている事に愕然とした。

 どうにか自由を得られないか。

 制約に阻まれる中で、可能性を見出したのは転移。

 五百年前には無かったその魔術で一瞬、ほんの一瞬だが制約が弱まる感じがした。

 その一瞬を延ばせないか、名目は別にして研究させる事にした。

 平行して自分が王で無くなれば制約は外れるのではと、色々仕向けた。


 そして、それがようやく実った。



―――



〈……くくく、はーっはっはっはっ!!

 やった!遂にだ!!〉


 何処とも知れぬ光無く、声も広がらぬその場所で、喜び浮かれる。

 制約が邪魔をしなければ解くのに何の支障もない。

 気がついてから五百年ぶり、その前も入れれば千年ぶりの自由だ。

 唯人の身で千年生きれるはずも無く、土地の神気を流し込まれた結果、色々と混ぜ合わさってしまったようだが、たいした問題ではない。

 身体維持に回される神気量は最小限だったため骨と皮ばかりになってしまった体に、肉が戻っていく。


 一通り喜び終えると、此処から脱出しようと考えた。

 用は穴を開ければいい。

 魔術如きで開く代物だ、狙いさえすれば容易に出来るはずと、繰り出された一撃で見事に穴が開く。


 穴向こうは、火に塗れていた。


「?」


 どうみても城の中には見えない。

 気付かない内に移動していたのか、開ける場所の細かな違いで開く場所が違うのか。

 考えても今すぐ答えの出ない問題はとりあえず横に置き其処へと出る。


 内神の能力から火の影響は楽に防げる。

 場所は近場の誰かに聞けばいいと考えていると、気配を察知した。

 火にまかれているのなら、助ければ答えてくれるだろうとそちらへと向った。



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