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心の欠片  作者: 羅依
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《加藤大喜》

俺は加藤大喜。

鹿児島県の聖南高等学校の3年生。


テストはいつもトップ。

大会でもいつもトップ。


だけど、全国テストでも全国大会でも

いつも1位で同点になる奴がいた。

学校は彼女の話でいっぱいになる。

俺だって、1位だったのに......

女子だって、男子だって、

彼女の話ばっかり。


「なぁ今回のテスト結果見たかぁ?」

「みたみた」

「また......さん1位だったよなぁー」


そんな話をしている中、

俺はいつも教室の窓側の後ろの席に座って

本を読んでいる。


......話す奴がいないから


俺は高校生になって友達を作ろうとおもった。

その一歩として、みんなに知ってもらおうと、

生徒会長になろうと思った。


俺の成績だったら、普通になれるはずだった...。


なのに、いつも2番の奴が生徒会長になった。


なぜだ?

普通だったら俺のはずだろ?


ほら、まただ。


俺の後ろで彼女の話をしている。


俺は両手で両耳を抑え、踞った。


教室の一番後ろで......


聞きたくない。


もう、聞きたくない。


黙れ、黙れよ!


俺の周りで、アイツの話なんか、


すんなよ!


なんで、俺じゃなくて


アイツなんだよ!


そのとき、

ふと想った。


もしかしたら、彼女も


俺と同じコトを考えてるかもしれない。


俺と同じかもしんない。


そんな事を考えながら、

家に帰る。


「・・・・・。」


ただいまなんて言わない。

どうせ返ってこない。

「おかえり」なんて言われないから。


だって、この家で

俺の存在は『無』なのだから。


話しかけても、そこに存在していないような

無視されてるような


『孤独』


俺は、この家に生まれてから

ずっと、『無」だった......


食事も自分で、

金はアルバイトで、

一人暮らしをしている気分だった。

同じ屋根の下に居るというのに...


......彼女はどうなのだろう?



明日からは夏休みだ。

俺は机の引き出しから通帳を取り出した。

通帳をひらく。

今、ある金は

数十万。

高校に入ってから、

アルバイトで貯めた金。

使う手段もなく、貯まった金。

この夏休みで使い切って

しまおうかと思った。


この家に、

ここの学校に、

ここの町に、

夏休みの間だけでもいいから、

本当に存在しなくなってしまいたい。


......と


本気で想った。


だって、

この場所には

俺を必要とする人がいないから。



俺は、足下に落ちていた

アルバムを手に取った。


中にある写真は少なかった。


ページをパラパラとめくり、

途中で手を止めた。


その、ページにある写真は

彼女と俺が写っている

たった一枚の写真。


2人で中学の最後に撮った

初めての写真。


確か彼女は写真を

貰ってないはずだから、

この世で一枚しかない写真だ。


2人共、この瞬間は

本当に笑顔だったんだ。


いつも笑わなかった

......彼女と俺。


でも、初めて

本当の笑顔になれたんだ。


少し嬉しかったんだ。


理由もなく、

2人して、

本当の笑顔に出逢えたから。


それが、きっかけで

俺は友達を作ろうとしたのかもしれない。


だけど

結局、俺からは笑顔が消えたんだ。

やっと出逢えた笑顔だったのに、

すぐに手放してしまったんだ......。


その後、俺達は

大会などで会っても

決して笑いはしなかった。


彼女からも笑顔が消えていたんだ。


あの瞬間が、夢だと想うくらいに...


俺達から笑顔が綺麗に去っていた。


その瞬間の彼女の笑顔を思い出した俺は、

彼女に逢いたいと想った。


......彼女の笑顔をまた見たいと想ったから。


そしたら、俺も自然と笑顔になれる気がしたから。


また、本当の笑顔に2人で出逢いたいから。


でも、彼女の連絡先をしらない。

俺が知っている

彼女のコトといったら、

女の子。

雪園高等学校の3年。

北海道住在。

それと、

......笑顔を失ってる事。


それしか、知らないんだ。

彼女のコトを。


でも、もし彼女が俺と同じだったなら、

何処かに行くかもしれない。

自分の住んでるところから、

消えたいと想いながら。


なら、東京に行こう。


そこなら、もし彼女に逢えなくても

あんなに人がいれば、

俺を必要とする人が

現れるかもしれないから。


どちらにしても

俺は......

この場所から...

『孤独』から

...抜け出したいだけなんだ。


1人でもいい、

ただ、俺を必要としてくれる人が...

親でも友達でもいいから...

居て欲しかったんだ。


でも、

必要としてくれなかった。

なら、

他人でもいいから必要として欲しい...


それと、

俺に......


俺に、生きる理由を教えて欲しい。


親や友達が教えてくれなかった、

俺が生きる理由を...


俺がこの世界に生きている存在理由を...


・・・教えて欲しいんだ。


だから、

俺はこの場所から離れるんだ。


明日から、


必要とされるための...


生きる理由を知るための...


この場所から離れるための...


一歩を踏み出すんだ。


全ては、


......明日から。

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