《椎名香織》
私は椎名香織。
北海道の雪園高等学校の3年生。
北海道でも数少ない、有名校の一つ。
そこに、私は推薦入学をした。
実力テスト、中間テストなどは
いつも満点で、順位もトップだった。
運動だってできる。
大会にでれば、必ず優勝する。
男子がいたとしても...
だが、私はトップをとっても決して、
クラスで浮く存在にはならなかった。
彼奴がいたから...
いつも浮いた存在になるのは彼奴だから
全国テストや全国大会などで必ず、
私と同じになる彼奴。
容姿が良いって理由もあるけど、
彼奴は目立っていた。
「今回の全国テストの結果みた?」
「見たよっ!!」
ほら、また。
「......くん、1位だったよねぇ」
「うん!」
あっちでも。
彼奴の話ばっかりだ...
私も1位だったのに...。
私は成績はオール5だ。
普通だったら、生徒会になっていたと思う。
だけど、なぜか2位の男子が先生に頼まれていた。
別に、なりたかった訳じゃない。
だけど、普通は成績とかが良い人を選ぶんじゃないの?
結局、その男子は生徒会長になった。
なんでだろう?
成績は私の方が良いはず、
人望がないからとか?
そもそも、
先生に私は必要とされているのだろうか?
「全国テストも終わり、もうすぐ夏休みに......」
HRが始まった。
HRなど気にせず考え続ける。
先生に必要とされない。
なら成績が良くても、意味が無い?
そういえば、
友達からも必要とされていない?
話したことのないクラスメイトからも?
じゃあなんで私は
このクラスに、教室に、学校にいるの?
いてもいなくても結局私は存在していないの.....?
「高校生活最後の夏休みを......」
HRがもうすぐ終わる。
キーンコーン
カーンコーン
鐘が鳴る。
みんなが立ち上がる。
私も立ち上がる。
礼をする。
友達のところへ向かう。
私は席に座る。
教室を出る。
すると、教室の中は私一人。
ぽつんと、
後ろの席に座る私だけ。
なんで.......?
学校の人たちは私を必要としないの?
どうして?
私は教室を出た。
家へ帰る。
自分の親なら私を必要としてくれると想いながら......
玄関で靴を脱ぐ。
奥の部屋から2人の話し声が聞こえる。
「ただい・・・」
私が言ってる途中でお父さんの声が重なった。
「お前が、子連れだと知っていたら俺は結婚なんてしなかったんだ!」
え?
私のお母さんは再婚した。
再婚相手は優しく真面目な人だった。
......私の前では
お母さんの前では、こんなに暴力的だったなんて、
初めて知った。
「あなた、やめて!香織がもうすぐ帰ってくるわ」
「仕事行ってくる」
お父さんはドアを開け、
音がするほど強く閉めた。
私は、階段のところで靴を持ち
お父さんが家を出るのを見ていた。
「香織が...香織がいなければ私は、うまく家庭を築けたのに...」
お母さんは泣き崩れた。
えっ、今なんて?
私は今帰ってきたかのように「ただいま」と言った。
すると、奥の部屋からお母さんが出てきた。
私は、あえてさっきの事を聞かなかった。
「おかえり、香織。学校どうだった?」
「はい、通知表とテストの結果」
「また、オール5...。テストも1位」
お母さんは、なぜか私が成績良いと静かになる。
「あっ、また......くん1位なのね!」
また、彼奴...
お母さん、私も1位なんだよ...
なんで、お母さんも彼奴に興味津々なの?
なんで?
「じゃあ、私部屋戻るから」
「待って香織!これ、夏休み中のお小遣いだから...」
私は、お母さんに封筒を握らされて、部屋に戻った。
私はベッドに転がった。
握らされた封筒の中身を出した。
「1万円札!?」
私はベッドから、勢い良く体を起こした。
中身は1万円札が30枚ほど
お母さんは何を考えているのだろうか?
これで、好きなものをたくさん買えとでも言っているのか?
それとも......
それとも、家から出て行けとでも......。
それじゃあ、親は私を必要としていないの?
私は親にすら必要とされないの?
この場所には私を必要としてくれる人がいないの?
じゃあなんで私は、この場所に生まれたの?
なんで?
夏休みの間だけでも、
この場所から遠ざかろう......
何かが変わるかもしれない。
初めてだ...
必要として欲しい..
と想うのは。
30万ある。
お小遣いとかは貯金してる。
いざとなったらそれを使えば、大丈夫なはず。
今日は気づかれないように、過ごそう。
朝早くから家を出れば
別に何も言われないだろう。
逆に顔を見なくていいから喜ばれるかもしれない。
明日から新しい自分になろう。
明るい女の子。
優しい女の子。
とにかく人に好かれるように
変わればいい......。
失敗したとしても、
高校最後の思い出になるだろう。
なにもかも...
明日から変わるんだ。