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第5話 クッキーには紅茶を

さて。

あれから10分が経った。

…いや…20…30分…?

ひょっとしたら1時間は経ってるかも。


あの〜、いつまで落ちるんですかこの穴!?


あ、そういえばママも言ってたじゃん。

「落ちるときは凄まじく時間かかったから、何か暇をつぶせるモノを持って行った方がイイかも………サンドバックとか!」って…。


…いまさら遅いか。

こんなとこに暇潰しになるモノなんてあるわけないしね〜…。


「ぷはっ!

お、おねーさん抱き締めすぎっ」


いたよっ!!!


暇つぶしどころじゃない、何度見ても飽きないくらいのかーわいい子猫ちゃんだぁぁぁ!!!


「子猫ちゃん会いたかったぁーっ」

「うわわっ!

さっきから抱き締めてたでしょ?」


子猫は呆れたように言った。


「あ〜、あと僕は男だから、ちゃんよりは君って読んでもらいたいよぉ」

「えぁ!?

お、男の子だったんだ!」

「分からなかったの?」

「うんうん、可愛いから全然気づかなかった!」

「……あの、それ素で言ってますか?」

「あ、ご、ごめ……すす酢、 素ですた。」


おぅ…猫君は黙り込んでしまった。


「…あ、や…ごめんね?

そそそりゃアレですよねっ、いくらカワユイからって男子に向かってチャンは無いよねチャンはっ!

しかもこんなチンチクリンに言われたんじゃ気にも障りますよねマジホント申し訳ねぇっス

どど土下座しますんでどうかそれでご勘弁をぉぉ……」


あたしが空中スライディング土下座を決め込もうと身構えると、


「……ぷふっ」


およ?



「…くく、にゃははっ!

面白いねお姉さん。」

「あ……ご機嫌直してもらえた!?」


猫君はあたしの顔を見て可愛く笑った。

どうやら気に入ってもらえたみたい!


「えへへ。

猫君は可愛いねっ」


「いやだから男なんだけどなぁ…まぁいっか。」


心が広いところもイイッ!


「あ、そうだ猫君、この穴って底につくまであとどれくらいかなぁ…?」

「え?

Skipしたいならそう言ってくれればよかったのに」

…Skip?



「えい」


ガウンッ


「うぎゃわっ!!??」


突然、穴全体に衝撃が走る。



次の瞬間には、あたしは盛大にしりもちをついていた。


「あ゛〜、あいたたた…」

「大丈夫?お姉さん」

「う、うん。へーき。

…っていうかもしかして、言えばいつでも止めてもらえたの!?」


「?

そうだけど」


そうだけど、って…物凄く無駄な時間過ごしちゃったよおぃ。


「不思議の国の入り口は長ーいウサギ穴になってるんだ、お客さんがきた時雰囲気出るからだって聞いたけど。

でもこの国の住人はこのアトラクション飽きちゃったから途中飛ばしてさっさと底まで行っちゃうんだよー」

アトラクション?

途中飛ばし?

どうなってんだこのウサギ穴。


「他にも巻き戻しとか一時停止機能とかあるよ」

DVDかっ!


さて……あれだけ長く落ちた割には、思ってたほど痛くはなかったかな。

まあ痛いっちゃ痛いんだけどね。






「…ここが…不思議の国……?」



辺りを見渡してみると……。

どうやら、建物の中にいるみたい。


「…ここって…?」


内装はかなり綺麗だ。

バロック様式の豪華な飾りが、所々に備え付けてある。

正面には、金のドアノブがついた扉が1つ。


それから部屋の真ん中に、ガラスの丸テーブルが1つ。


間違いないや……ここは不思議の国の入り口。

この部屋についても、ママから話を聞いた気がするしっ!



「きゃー!!

とうとう来ちゃったよ〜え?凄いじゃんこれ異世界だよ異世界!

本物のファンタジーだ〜〜っ!!!」

「なんか…ずいぶんと嬉しそうだねっ」


不意に猫君に聞かれて、あたしは超高速で振り返った。

「あったり前ですよ!!

昔からここに来たくって何度入り口を探したことか……。

あぁ、あたしの夢はとうとう叶ったのね!?」


そうだよ!!

ママ、アタシも来たよ?ついにあなたの娘もワンダーランドトラベラー(ゴロ悪い)としての第一歩を踏み出すんだよ!!

今!!

この場所で!!!


そして、その第一歩は…この金のドアノブの扉、その 向こう側に……っ


胸をときめかせながら、あたしは、興奮に震える手を、ドアノブへと伸ばした……。




『おい待てや嬢ちゃん』


…はい?


「 今…なんか声した?」


もちろん猫君じゃない。猫君はちゃんとあたしの隣にいるしまずあんな言葉遣いしない。

するワケないでしょアホくさいわ。


…ってことは…?




「な〜んだ空耳じゃん驚かせやがっ『いや空耳ちゃうし。そんなボケとかいらんから一々ツッコミさせんなやアホか』



………。



『"………。"やないっちゅうに。コラ、人と話す時はちゃんと目ぇ見て会話せんかい言葉のキャッチボールにならんやろが』



あ〜やっちゃった、ドアノブが喋ちゃったよ。

いくらメルヘンって言っても出会い頭じゃキツいと思いますコレは。


だから……とりあえず正当なリアクションをとらせて頂きましょう。



「キィアアアアアアアァァァァァぁぁぁあああああーーーーーッッッ!!!???」



多分80デシベルぐらいいったんじゃないかな?

即座の音波攻撃の後で強烈な蹴りもお見舞いしてやった。


『ゲブフォウッッ!?』


ありがとう姉さん。教えてくれた痴漢撃退術が今役に立ったよ。

敵は虫の息だ。


「…はぁ…はぁ…。

な、なによこの人面超絶キモドアノブは…?」


「ここの門番だよ。」


猫君がさらりと答えた。あ、なんか耳から耳栓取り出してる。準備良いですねっさすがは猫君!



「…っていうか、門番?」

「うん。お姉さんに伝えたいことがあったんだと思う。」


「あ、え…それって…もしかして倒しちゃマズかった?

てっきり造形が潰れた化け物かと…」


勢いで撃退しちゃったけど、さすがに悪いことしちゃったな…。


「…や、気にしないで。

初めて見る人なら普通誰でも絶叫すると思うし…アレは…ねぇ?」


そう言って、猫君苦笑い。

良かった…あたしは間違ってなかった。

だって掴もうとしてたノブに目と鼻と口があっていきなり話し出したら……ねぇ?


「あ、そう言えばこのノブ、あたしに何を言おうとしてたの?」



『…て…テーブルの上を…見ろ…』

「「うわっ生き返りやがった!!」」


猫君とあたしは同時に叫んだ。


『…このっ…猫坊までそげんな事いうか…。』

「テーブルの上?

あっ!」


ガラスのテーブルの上に、いつの間にかクッキーと小瓶が置いてある。


「あ、そっか。

どっちかを食べると体が縮んで、もう一方は食べると大きくなるんだっけ」

「すごい!

詳しいんだねお姉さん」

     

あ、なんか猫君から尊敬の眼差しが!

「ふふん、一応下調べはして来てるからね!」


『知ってたなら先に小さくなってからドア開けようとしろや。

そのままの体型で通り抜けられるとでも思うたんか鏡見ろや』


「成敗っ」


『ぐべひはっ!?』



今度は倍の威力で蹴り飛ばしてやった。

確かに人間が通るにはサイズの小さすぎるドア。あたしもうっかりしてたけど…体型とか鏡見ろとか言ってる時点でコイツには他意がある。

女の子の敵決定。


「アンタもう黙ってなよノブの分際で」


…あ〜、なんか言葉遣い悪くなってきてる。

まいったなぁ、この腐れノブがうるさいからだ。

何か甘いものでも食べて落ち着こ…。

あ、ちょうど良いとこにクッキーがあんじゃん!!


「いっただきまーす。」

はむ。

う〜ん!香ばしくておいし〜っ!!!


「あっ!おおお姉さんクッキーの方はっ!?」


へ?

どうかしたの猫君?



ゴンッ


「あいたっ!?」


痛い!

なんか頭ぶつけたぁ!


「いてて……あれ?」


…猫君…小さくなってない?

あ、そっか。

あたしがおっきくなって……。


「てええぇぇええっ!?」

「えええじゃないよ!

クッキーは大きくなる方だってばぁ〜っ!!!」


あ、そうだっけ!?


あ〜思い出した!

確かママもクッキー食べて大きくなっちゃったって言ってたよ。

でも仕方ないじゃんそこまではっきり覚えてないよ〜!!


「…いや待てよ!?

アタシにはまだ小さくなる小瓶がある!

それさえあれば元の大きさに……」



ミシッ


「うっ!?」


ま…マズい。狭すぎて身動きすら出来ない。

…あれ?でもまだ大きくなるの止まってない気がするんだけど?


ミシミシッ


ええぇぇええ!?

ちょっと待ちなさいよこのままだと家を突き破るまで巨大化しちゃいますよ?


そのまさかですか!!??


「う、ウソォッ!

でもママは身動き出来ない程度で止まったって………」


……はっ!

そうだ、ママがここに来たのは確か6歳か7歳の頃………10年ぐらい発育してるあたしの場合、身長が高いぶん大きくなるのかぁ。

ってうおーーーい!?


「それかなりマズいよーーーっ!!」

「僕もマズいかも…狭い〜!!」

「うわ〜ん申し訳ないですー!」



ビリッ


え、今の何の音?


…まさか…いや、悪魔で仮説として……。

クッキーの効果があるのは人間の体だけ…つまり服には効果無しだったとしたら………?


小さくなるならまだいい。服の中に埋もれて見えなくなる。

じゃあ…体だけ大きくなるとしたら?



「い…いやぁぁぁぁあ見ないでぇぇええ////!!」

「ええ!?

どうしたのお姉さん?」


うぅ…。

でもこんな幼気な子猫になら見られても耐えられるかも。人間同士じゃないわけだし……。


『…ううっ…うーん…

何だ…?何がどうなって……』


ひぃっ!?


「アンタだけはいやぁぁぁあアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」     

     

『げぐほぉっ!?』


バキッ


「 「 あ。 」 」


ガッシャアアアンッ



…ドアのついてた壁が倒壊した。


「ぷはぁっ」

すかさず猫君が家の外に飛び出した。


「え…あ、そのっ」

家壊しちゃったよ。

どうしよ?誰の家なのかもわかんないのに!?


「ごっごめんなさ…」


慌てたもんだからそのまま立ち上がっちゃったよ。

「いてっ」


メキィッ


…屋根が外れた。


…服はちゃんと一緒に大きくなってました。

そりゃそうだよね…体だけ大きくなる薬とか犯罪だよ。

あるワケないじゃん不思議の国にそんなもん。


そして、あたしと子猫君の前で、家は跡形もなく倒壊した。

     

「…どうしよコレ?」


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