第2話 見えざる未来
初めてだから結構ムズかしいです、ハイ。
編集とか……( ̄□ ̄;)
屋敷では、いつものように和やかな時間が流れていた。
使用人達がせわしなく動き回り、台所からは夕食のいい匂いが漂っている。
「…う〜む、今日もごちそうの匂いだ。
セバスチャン、メイド達はパイを焼いたのか?」
リビングのソファーの上に腰掛け、父親は執事に尋ねた。
「はい、旦那様。
今夜はアップルパイを焼いたそうです。」
「そうか。
アリスが喜ぶぞ!あの子はパイが大好きだから」
「…そう言えば、あの子少し遅いわね」
父親の向かい側に座っていた姉が、時計を見上げて言った。
「なに?
まだ帰ってきていないのか、もうこんな時間だぞ?遅くならないように言っておいたのに。」
「じゃあ私捜してきますね」
そう言って立ち上がる姉を、セバスチャンが引き止める。
「いえいえ、お嬢様はごゆっくりお休みになっていて下さいませ。
お迎えにはこのセバスチャンめが」
「大丈夫よセバスチャン。ちょっとそこまで出かけるだけなんだから」
姉は執事に笑いかけると、急ぎ足で玄関へ向かっていく。
「あぁぁ、お嬢様?
お待ち下さい〜!」
(元気なようでセバスチャンももう年ね。
髪も髭も随分白くなったし。)
追ってくる執事の声を聞きながら、姉はクスリと笑った。
(それにしてもアリスったら、お母さんの所に行くといつも中々帰ってこないんだから…。)
小さく溜め息。
それから、姉は少し彼女達の母親の事を思い返してみた。
長い胡桃色の髪。
背は低めで、いつまで経ってもどこか子供っぽくってお話好きで…。 本当に優しかった。
母親というだけじゃなくて、何だか友達のような、姉さんのような存在だった。
母親が他界した事で家族が受けたショックは、とても口から言い表せたものではなかっただろう。 でも、今はみんな立ち直った。とても上手くいっている。
過去に縛られるのではなく、未来へ向けて歩き出す事が出来たのは…きっとアリスのおかげだろう。
彼女の明るさが、一家を悲しみから救ってくれた。おかげで母を失ったことを受け入れる事が出来るようになったし、父親も昔のように元気な人になった。
(本当にどこか母さんに似てるのよね、あの子)
そう思うと、自然と笑みがこぼれる。
(見た目だけじゃなくて、性格も本当に母さん似で…空想好きな所とか)
彼女達の母親は、子供の頃はそれはもう凄い空想家だったそうだ。
何でも、夢の中で壮大な冒険をしたんだとか。 それも2回も。
本にしたら間違いなく売れるぞ、とお祖父さんは笑っていたらしい。
(アリスもおんなじように夢を見るのかしら?
ひょっとしたらね。 なにせ名前まで同じなんだし…………)
玄関の扉に手をかけた時だった。
「……あれ…?」
……ドアノブが二重に見える。
(変ね、何だか頭が…ぼぉっと……。)
途端に視界が揺らぐ。
彼女の世界は、突然グラリと崩れ落ちた。
(…え……?)
何かが床に倒れる音がする。
それが自分である事に気付いた時、執事の声が耳に届いた。
「お嬢様…!?
お嬢様っ!どうなさいましたっ?」
駆け寄ってくる足音。
口の中に、馴染みのない鉄の味が広がった。
(…何…こ…れ……?)
いや…前にも味わった事がある。
喉を締め付けられる様な、この味…。
「…エリス…?
エリシア!?しっかりするんだ!誰か医者を、医者を呼んでくれっ!!」
父親の声もする。
目の前にいるのに、とても遠くに聞こえる。
何か言いたい。
大丈夫だから、心配しないで。泣かないでと伝えたい。
なのに口から溢れたのは、言葉じゃなくて、鮮やかな赤い色。
…どうしよう。
私の所為で…またみんなに悲しい思いをさせてしまう。
「ごめ……な…さ…」
「喋ってはだめだ!
いいか、すぐに先生が来るから!無理をするんじゃないぞ…。
ぁあ何てことだエリシア、お前まで…こんなっ…」
その時、ドアの開く音がした。
「ごめんなさいっ!
遅くなっちゃっ…た…………」
もう、この子が悲しむ顔なんて見たくないのに。
屋敷の中に少女の悲鳴が響く前に、姉は、静かに眠りについた。
_




