第25話 ラビットホール
最近なんだかグダってる…
たぶん湿気のせい!雨続きでじめじめだから。
あまりにストレスたまるので、金欠にも関わらずネコ雑誌買ってしまいましたよ。
癒されるんだなぁーこれがっ!
和歌山電鐵貴志駅のたま駅長カワイーッ!
>∀<
…はっ!
いかんいかん、本編にはいらねば…
それではドウゾー!
「Der Nußknacker」でお昼を食べ終わった二人は、旧市街を歩いていた。
パステルカラーのかわいらしい家々の間、曲がりくねった狭い路地。
「……う〜ん…女の子かぁ…
まぁフランツの事だし、でも……すっごくカワイイ娘だったら…?」
「ねぇレナ、さっきから小声で何ブツブツ言ってるの?」
フランツが尋ねると、麗奈はギョッとした様子で振り返った。
「えっ!?
あっいや、何でもない何でもない!
あははははっ」
「…?
ならいいけど…」
怪訝そうに首を傾げるフランツ。
「あ、そ、そんな事よりさ、ほらレポートよ〜!
あれどうしよっかなぁ〜あはは」
「ん〜、それじゃ今から家で続きしようか。
がんばれば明日までには終わると思うし」
「そ、そうだねっ、がんばんなきゃね…
あははは……」
慌てて話題をそらした麗奈だったが、残念な事に口からでたのは自分自身が今一番触れたくない話題だった。
「……はぁ。」
またパソコンの前で小一時間レポート作成……そう思うとどうにもやるせない。
がっくりと肩を落として、麗奈はフランツの後ろをついていく。
と、その時。
「……およ?」
最悪の気分でうつむいている麗奈。
その耳に、なにやら騒がしい声が届いた。
「…ちょっとフランツ」
「ん?」
フランツが振り返ると、麗奈は5メートルほど後ろに突っ立っていた。
ちょうど脇道があるらしく、彼女はその方向をじっと見ている。
「どうかしたの?」
何やら興奮気味の麗奈は、脇道の方を見たまましきりに
「こっちこっち!」
とフランツを呼ぶ。
(また寄り道して……)
課題を終わらせるのにいつも半日以上かかる麗奈の事だ、早く連れて帰らないと明日の朝までレポートを手伝わされる。
そう思ったフランツは、
「早く帰ろうよ〜」
「いいから!
ちょっと来てってば」
「えぇ?
レポートはどうするんですかー」
「黙れ
その事は言うな」
「ごめんなさい。」
しぶしぶ脇道のところまで引き返す。
道の向こうには、なにやら人だかりが出来ているらしかった。
「ね!ね!なんか事件かな?」
「みたい……だね?」
いったいなんだろう?
この街で事件なんて滅多にないから、この人だかりにはそれなりのワケがあるんだろう。
事故?
それとも……
「殺人事件かも知れないわね!
なんかパトカーのサイレンとか聞こえちゃってるしー!」
勝手に盛り上がってる麗奈を見て、不謹慎な……と呆れ半分、フランツも少し興味がある。
もう少しよく見ようとして、彼は半歩前に進み出た。
すると、
「あ、…あれロルフじゃないかな?」
「え?
うそマジほんとに?」
人混みの中に、見慣れた人物が1人。
同じ大学の仲間らしき人影が背伸びをして前を覗き込んでいた。
どうやら向こうも二人に気づいたらしく、大きく手を振っている。
「ほら〜こうなったらもう見に行くしかないっしょ!」
麗奈の上がりきったテンションを目の当たりにして、フランツもとうとう折れた。
「わかったよ……
じゃあ、ちょっとだけね」
近くへ行ってみると予想以上にたくさんの人がいて、狭い路地がすし詰め状態になっていた。
この大人数を引き寄せているのが何なのか見ようと麗奈がピョンピョン飛び跳ねている横で、背の高いフランツはかろうじて路地の奥を見た。
人ごみの向こうには黄色いテープが張られていて、その中には警察が数人と若い男が一人。
ちょうど、事情徴収を受けている最中らしかった。
「よう二人とも!」
人ごみの中から声がしたかと思うと、ロルフ・クリューガーのが現れた。
「ロルフ!
ちょっとなんなのこの人だかり……」
「それがさ、昨日の夜中にここで喧嘩してたらしいんだよ」
「喧嘩?」
フランツが怪訝そうな顔をするのを見て、ロルフは腕組みをしてうなずいた。
「いや、俺も良くわかんないんだけどよぉ…
なんか酔っぱらった学生が殴り合いしてたみたいでさ。
でもって、今日になってここを通りかかった人が見つけたんだとさ」
そう言って、ロルフは立ち入り禁止のテープの方をあごで指す。
「ボロッボロになって倒れてるのを三人な。
どいつも命の危険、ってほどのケガじゃなかったんだけど顔がまぁ酷い有様でなぁ。
まともに喋れるヤツが一人残って警察とお喋り中ってわけだ」
「じゃあ他の二人は病院送り!?」
興味津々、といった様子で麗奈が目を輝かせている。
このぶんだとレポートの件はまた忘れてるんだろうな、と思ったがフランツは黙っておいた。
「あぁ、さっき救急車で運ばれてったけど……
ありゃ一方的にやられてたな。
二人とも鼻の骨が原型止めてなかったぜ、
まぁ、どいつもガラの悪いチンピラっぽかったからどうでもいーけど。
っていうか問題はそこじゃねーんだって!!」
「うわっ、なにどうしたのさいきなり?」
突然ロルフのテンションがMAXになったので、フランツは思わず後ずさった。
「どうしたもこうしたもねーよ、
あいつら見たんだって!」
警察と一緒にいる痣だらけの男を指差して、ロルフが興奮しきってまくし立てる。
「み、見たって…何を」
眉をひそめるフランツ。
すると一度深呼吸をしてから、とてつもない秘密を暴露するような口調でロルフは重々しく口を開いた。
「……ラビットホール。」
ルの字を言い終わった後、さも自分が重大な役目を果たしたかのように、したり顔になるロルフ。
その後話題に食いついていったのは麗奈であった。
「ら、ラビットホールって言ったらあの都市伝説の…!?」
「そう!
その都市伝説のが現れたんだってよ、この路地に!」
すっかり盛り上がっている二人をよそに、フランツはキョトンとした顔をする。
「……ラビットホール、ってなんだっけ?」
流行に疎い彼は、都市伝説についてもほとんど興味がなかった。
そしてフランツの問題発言を聞いた途端、麗奈とロルフはこれ以上ないというくらい酷い軽蔑の眼差しをフランツに送ってきた。
「ちょ……そりゃないぜ冗談だろフランツ!?」
「フランツ、今度ばっかりはさすがにがっかりだわ……」
「…え?
そんなにマズかった?」
フランツが頭をかくと、二人は神妙なおもむきで何度もうなずく。
「いいフランツ?
この際だからはっきり教えてあげる!
ラビットホールて言うのは今国中でいっっっっちばーーーん有名な話題よ!」
深刻な顔でそう言うと、麗奈は携帯を引っ張りだしてフランクの顔ギリギリに突きつけた。
「ほらコレよコレ!
ちゃんと読んで!!」
どうにか携帯の画面に焦点を遭あわせると、どうやらどこかのニュースサイトに接続されているようだった。
"今、ドイツ国内の若者達を騒然とさせている怪奇現象、「ラビットホール」。
東西全域で騒がれているこの都市伝説は現在確認された目撃証言でも200件におよび、その実態は完全に謎に包まれている。
警察側は「うわさ話に対する若者達のいき過ぎた反応に過ぎず、熱が冷めれば騒ぎはすぐに収まるだろう」と証言し、あくまで単なる怪談として断定されている模様である。
しかし、この都市伝説絡みで負傷者や行方不明者が出たとも囁かれており、教育機関では、子供の一人歩きや不審者に対する注意が保護者へと投げかけられている。"
「どう?
だいたいわかった?」
携帯画面から顔を離して、フランツは浮かない顔をする。
なんかスゴそうなのは分かったけど……これじゃ「ラビットホール」自体が何なのかさっぱり分からないじゃないか。
「よしレナ、後は俺にまかせろ!
このヘタレは一筋縄じゃいかねぇ……」
麗奈を押しのけて、今度はロルフがフランツの前に立ちはだかる。
「いいかフランツよく聞けぇ!
ラビットホールってのはなぁ…………
なんか穴が開いてマジ凄くってそっからだなぁほらアレだデカいモンスターがガオォォで通り抜けたら異次元に繋がってるとかでなんかもうブラックホールというか次元の歪みというかチョーマジイカしてるぜあぁ〜俺も見たかったあぁぁ」
「すいません何言ってんのかさっぱりです」
とはいえ……どうも「異次元に繋がってる穴」みたいなものらしいな……今の話を上手くまとめたら。
フランツは周りの人混みを見渡してみる。
そういえば確かに、さっきから「ラビットホール」って言葉がそこらかしこから聞こえる気がするけど、
……もしかしてこの人たち、みんなソレ目当てで集まってるのかな…?
"立ち入り禁止"のテープの方を見ると、例のチンピラらしき男の声が聞こえてきた。
「だから本当なんだよっ
穴からガキが落っこちてきてよぉ……
そしたら…ひ、ヒトガタのバケモンが……ガキをよこせって…
他のやつらみんな、ぶっ殺されて……!
ホントだって、信じてくれよぉ……っ」
「他の二人は気絶していただけだ。
どうせ酔っぱらって幻でもみたんだろう…
ゲームのやり過ぎだ。
ったく、これだから最近の若いもんは……」
心底怯えきった様子の痣だらけの男を、警官がなだめている。
(…なんだろう?)
フランツは、なんだか得体の知れない不安に襲われた。
(人の姿をした、化け物……)
雑踏の中、1時を告げる鐘が、不気味に鳴り響いた。
それを合図にか、同時に電子音のメロディーが聞こえてきた。
「あ、フランツのケータイじゃない?」
「ん」
麗奈の言うとおり、それはフランツの携帯の着信音だった。
(誰からだろ……?)
フランツはポケットから何気なく携帯を取り出す。
そして携帯を開いた彼は、そこに表示された名前を見て、
(………はぁ!?)
目を見開いた……幽霊でも見たように。
「もっ、もしもし!?」
彼は携帯を耳に当て、食い入るように電話に出た。
聞こえてきたのは、良く聞き慣れた声。
久しぶりの、耳障りな嘲笑。
『あっはははっ!
よぉ、久しぶりだな元気してたか』
「…お前、なのか……?」
額を冷や汗が流れる。
『そうだよ俺だよ。
……なに?
陰気臭いお出迎えだなぁ、
2ヶ月ぶりだろうがもっと快く喜べや』
「3ヶ月ぶりだよ。
お前、今まで何して……」
度々失踪する男からの、久しぶりの連絡。
フランツは言ってやりたい事が山ほどあったが、頭が混乱して上手く口に出せない。
『う〜ん。
まぁアレだな、今まで何してたのかは秘密だけど
今いるのはオマエんちのリビングだよ』
「……はぁっ!?」
家宅侵入罪……っていうか鍵はどうしたんだ?
こいつと話していると頭がどうかなりそうになる……。
「なんで家にっ……」
『まぁまぁそう慌てなさんな、
面白いお土産置いていってやるから。な?』
お土産……?
「ねぇねぇ、さっきから誰とはなしてるのよ?」
袖を引っ張る麗奈をひとまず放置して、フランツは携帯に集中する。
「……何の事だ」
『それは帰ってからのお楽しみだろ。
あ、んじゃもう切るな?
ルーが遊んでくれってじゃれついてくるんだよ」
「え?
あっおい待て……」
『ばいば〜い♪』
ふざけた口調の声が響いた後、切断中の、ツーツーという音が虚しく耳に残る。
「………」
「ねぇってば……どうしたの?
顔色悪いわよ?」
麗奈が心配そうにフランツの顔を覗き込む。
「……帰らなきゃ」
「え?
ど、どうしたのよ急に」
焦ったような口調のフランツに麗奈が尋ねる。
そして彼は、苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「……シュヴァルツが帰ってきた。」
駅の近く、住宅街にある一戸建て。
自分の家に帰ってくると、フランツは開口一番に叫んだ。
「おいっ!
どういうつもりだ勝手に人ん家に上がり込んで!」
それなりに広い家の中に、声が響く。
返事はない。
「ね、ねぇ…ホントに帰ってきたの?」
フランツに続いて玄関に入り、麗奈が聞いた。
「うん……リビングにいるって、さっき電話で……」
急ぎ足で家の奥へ向かうフランツ。
彼がリビングを覗き込むと……
そこには誰もいなかった。
「…もう帰っちゃったのかな」
麗奈が残念そうに呟く。
「ったく……あいつ何考えてんだか…」
はぁ…、と大きくため息をつくフランツ。
すると彼の頭にある事がひらめいた。
「あ、そういえばお土産がなんとかって言ってたけど…」
「え?
お土産!?」
途端に麗奈の顔が明るくなる。
「お土産ー!
いいじゃん探そうよ、きっとどこかに置いて帰ってるはずだよっ」
「あ、うん」
フランツが頷くと、彼女ははしゃぎながら部屋から出て行った。
「あの子の事だから絶対わかりやすい所に置いてないよ!
フランツはリビング担当ね〜っ
あたしは寝室をさがすから!」
「え?あ、ちょっと…」
人んちの寝室に勝手に入るなよ……と思いつつ、フランツもリビングを捜索し始める。
麗奈の悲鳴が聞こえたのは、それから数秒後の事だった。
「…きゃあーーーーーーーーーーーッッ!!」
「っ!?」
(な、なんだ?)
驚いて心臓が飛び出しそうになった。
(まさか何かあったんじゃ…!?)
急いで寝室に駆け込むと、麗奈が呆然として立っていた。
「れ、レナ!
どうしたの、大丈夫…」
冷や汗をかきながら叫ぶフランツ。
すると、麗奈は手を伸ばして彼の口を勢いよく塞いだ。
「ふがっ……」
「シーッ!
静かにして……起きちゃう」
「むぐ?」
フランツの口に手を当てたまま、彼女は目を輝かせている。
その視線の先には……
フランツは目を疑った。
3回ぐらい目を擦ってみた。
古典的だがほっぺたをつねってもみた。しかし……
ベッドの上ですやすや寝ている少女は、なぜだか視界に残ったままだった。
「あ……ありえない…」
夢だ。これはきっと夢に違いない。
自分のベッドの中に、金に近い胡桃色の髪の少女の人形のような本物の少女のような……これはいったいどういうことだ?
「きゃぁあ…可愛い〜お人形さんみたい…」
麗奈はいつの間にやらベッドの横にかがみ込んで、眠る少女の顔をうっとりと覗き込んでいる。
さっきの悲鳴って、まさかこういう事か……?
女の子って時々悲鳴の上げドコロがよく分かんない……そんな事を考えながら、フランツはほっと胸を撫で下ろし……
てる場合じゃない!
「な、なにその娘!?
なんでウチのベッドで……え?え!?」
完全に混乱状態のフランツを差し置いて、麗奈は少女の寝顔にすっかり魅了されていた。
「や〜もう可愛すぎる〜妹にしたい!
ん……?」
少女の寝息にあわせて、かけられた毛布が規則正しく上下している。
その傍ら……少女の胸の位置から少し横にずれたところに、もう一つふくらみが出来ている。
しかも、そのふくらみも規則正しく上下しているではないか。
「……?」
麗奈は恐る恐る手をのばして、毛布をはぐってみた。
すると……
「キャアーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「うわっ!
こ、今度はなに?」
フランツが我に返ると、麗奈がまた何かを見つけて騒いでいる。
「ふ、フランツ見て見て!
にゃんこ、ちっちゃいニャンコ!」
少女の横で、子猫が丸まって眠っていた。
「きゃあー///
もうなんなの?このツーショットは神々しすぎる!
可愛いーちょっとフランツカメラ持ってきてよカメラ!」
「ちょ、レナ?
落ち着いてよ、ホントに起きちゃ……」
そう言って、フランツが少女に視線を戻した時。
「……あ。」
『う……んぅぅう……』
目を擦りながら起き上がった少女は、上半身を起こして、軽く伸びをした。
『ふわぁぁ……』
可愛らしいあくびをして、再び眠そうに目を擦る。
その奇麗な碧い瞳が、フランツの灰色の瞳と視線を合わせた。
それは全てのはじまり。
舞台では、役者が物語を紡ぎ始める。
やっと出てきましたね主人公。
人ん家でなにしてんだ?
なんだかよくわからないけど、やっとストーリーが「不思議の国編」と繋がってくれそうです。
そしてフランツの受難はつづく!




