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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

罪と罰の山羊達

作者: 鳴海 理桜

愛するために何が出来る?

堕天する昔の名前はもう覚えてない。

これは僕達が堕天するまでの物語。


僕と姉さんは父親が違う。

いわゆる異父姉弟。


新しいお母さんがおうちに来た時はちょうど僕が13の春だった。

強いバラの香りを付けた新しいお母さんの隣にいたのは艶っぽいホワイトムスクの香りがするちょっと顔に怪我をしてた伏し目がちだけど澄んだ青で僕と同じ緑っぽく光る瞳のきれいなお姉さん。

お父さんからは、今日から僕の新しいお母さんと新しい姉さんになるんだって言って貰えて僕は内心大いに喜んだ。

前のお母さんと弟はお父さんが1年もしないで怒って追い出したんだって。まだ10も言ってなかったあの子は冬を無事に越せたかな?そしてお母さんはどうにしろ、姉さんは大丈夫かな?

第一印象に頭をよぎったのはそんな心配だった。


父さんに部屋の案内を任されたから僕はこの日のために張り切ってメイドと掃除した2部屋を案内した。一応、爵位があるからメイドさんくらいは居るし、ゲストルームもある。

僕はここでは跡取り息子で一人っ子だからあ兄弟姉妹が出来るのはどの立ち位置でも嬉しい!

でも、今回姉さんになった彼女と目が合った時だけはいつもの高揚感とはまた違ったんだ。

なんだろう?やっと逢えた。って思えたんだ。

不思議、姉さんとは初めて会うのにね?

僕は何人目かのお母さんを抱きしめ歓迎し、姉さんにも。すると、僕の肩口から、ほゥ…。と決して歓びに出るはずのない蕩けた声が漏れた事に一瞬我が耳を疑った。姉さんは自然に頭を撫でてくれた、友愛の証だ。


そんな父さんは、2人を大いに慈しんだ。

特に身体の弱い姉さんは。


天気のいい日は庭の木陰で、天気の悪い日は家の書斎で読書をすることが習慣になるくらい。

だが、度々夫婦部屋から諍いのこえが聞こえてきたがその時は必ず姉さんの部屋に行って姉さんの膝に頭を預け目を閉じる。

すると必ず怪しい手のひらが降りてくる。

何も問わず、ただひたすらに、柔らかく僕の髪の毛にスルスルと指を這わせ梳くように流れるように撫でる。それがとても心地がいい。

何も恐れることは無い。

大丈夫。今回はきっと……。


季節がふたつすぎて、風に冷気を帯びる頃やっと姉を抱いた。コレは犯さざる罪だったのだろうか?だが「先に抱いたのは本当に自分だったのだろうか?」

事の発端は彼女の衣替えを手伝っていた事だ。

クローゼットを眺めると父の好みの服ばかりしかかかってなかった。下着もだ。

思い切って聞いてみたら、姉は言いづらそうに


「お父様が他の男に買わせた服に身を包んだ私は不愉快だったみたい。だから今までの全ての服はは要らない。私の金で新調する!ですって」


そして気づいたことが、18歳も超えた女性に化粧ポーチのひとつもないのだ、コレは聞かれなくとも想像が着く。父に没収されたんだろうな。

恐らく肌の出ない服ばかり着てるのも清純派が好みな父の着せ替え人形にされてるのか?

もしかしてそこで父に抱かれている可能性すらある。だから姉は更に艶めいて浮くしく更に寵愛されてるんだろう。

では母は??何故喧嘩が怒る?何故母は父に寵愛されないんだろう?


女とはかくも醜い。

腹を痛めた娘とて美しさを比較してしまうそして認められなければその怒りは娘へと行く。

ヒステリーとして。姉は抵抗は何一つとしてしない、それさえも母の怒りを助長させる。

そして姉の服の下の打ち身が広がりそれが知られ母は父に折檻される。その石棺さえがご褒美なのだろう…、流石の僕には理解できない領域だ。


姉さんの身体は、打ち身があろうが首を絞めたり手首の縄があろうが、それでも美しかった。

吸い込まれそうな青い瞳に不思議に揺らめく緑の輝き艶のある白い肌、僕と鏡合わせのような口元のほくろ、ふわっと男を誘う誘う魔の香り。飲まれてもいい。姉さんになら。

ただ父さんが本当にそうなのかは気になる。

そのことをボヤくとクスッと姉さんが笑って明日の晩に部屋においで…と瞳を細め妖艶に笑って額にキスをし答えてくれた。.


その次の日、僕は姉さんに教わった部屋に預かっていた鍵で上階に行く扉を少しだけ開け足音を忍ばせ目的の部屋に近づく。すると、鎖の音、ムチの音、下品な豚にも劣る男の声、口を縛られてるのかくぐもった女性の悲鳴。

これが何を意味しているのかは言うまでもない。吐き気がする。僕は気取られないようにいそいで階段を降りて施錠をし、自室に行って洗面台に込上げるものを吐き出した。


なんで姉さんはあれを見せようとしたのだろうか?

分からない、分からない?母さんは知っていたんだろ……いや、あの嫉妬狂いの女がアレを見たら間違いなく発狂する。

こればかりは姉さんに聞こう僕だけで推理するだけじゃ嫌な想像しか出て来ない。



あの後から数日は姉さんの元に行かず母さんの元に甘えに行くようにした。無論、本心では無いが。代替品だ。でも、母さんは僕が甘い声で寂しいのだ。と、少しだけそばにいて欲しいんだ。と言うと喜んで甘やかしてくれた。

姉との関係を疑われたけど、逆になぜ疑うの?と傷心したような顔で見上げると途端に狼狽える。とても、彼女は優しくて慈しみ深くて驚くほどに単純なヒトだ。

ベッドに座って、母さんの肩に凭れ見上げるだけで、彼女は簡単に落ちる。

ここ何日かで分かった。

こんな単純な女性であれば、娘を手に入れるためにどう言ったって丸め込めるだろう。

僕だってそれは容易い。

母さんは女を捨てきれない。母で居られなかった。情欲が欲しい、愛情が欲しい、女として求められたいだけなのだ。まぁ、何とも罪深い哀れな人だ。同情はしないけどね。



数日で気持ちに整理が着いて僕は姉さんの部屋を訪ねた。「どうぞ」と短い返事の後に僕は強ばった顔のまま姉さんと対面した。姉さんはベッドに座ったまま、僕を真っ直ぐ見ていた。

すると、フッと姉さんが微笑んで姉さんは隣に座るのを促してくれた。


「大丈夫?」

「姉さんこそ」

「わたしはいつものことだから」

言葉の向こうに「慣れてる」と続いてるのがありありと感じて僕は歯噛みした。

姉さんとの顔の距離を縮める。

口付けをするのはごく普通の仕草だった。

「姉さんは良くても、僕は嫌だったよ」

「それが私やお母さんをここに置く条件だったとしたら…?」

っ!?

絶句した。

姉母娘はたとえ身寄りがなかったとしても、父親となんと言う罪深い制約をしてしまったんだ。それでは今までの母達妹や姉たちもその被害者だったのかと思うと、我が父親ながら嫌悪感しかわかない。

そんな僕の様子を見てた姉さんは冷えた手を僕の額に当てた。

「ーー。辛そう、大丈夫?」

「当たり前だよ、自分の父親のこれまでの悪業に気付いてしまったんだ、平常でいられないよ。僕は」

「そうね…」

姉さんはそれだけ言って沈黙し窓を見上げた。

僕は姉さんの膝にうつ伏せに凭れながら一緒に窓を見上げる。


澄んだ夜空にシルバームーンの三日月が浮かんでいる。




「でも、月が美しい間なら、私は頑張れる」

わずか見上げる姉さんの夜空のような瞳は強い輝きを持っている。ここで一言でも「逃げたい」と、言ってくれれば、ぼくはなにをしても姉さんをこの牢獄から出してあげられるというのに。


僕にはできない選択肢。僕にはできない強さ。

姉さんにしか持ちえない強さ。それで良い。僕は、俺は、俺としてカタをつける。今までよくも籠絡してくれていたか、甘いところだけしか見せなかった。親子なら世界の裏側も見せなければならない。


新月の夜に僕は父さんの部屋を訪ねた。

「父さん。大好きな父さん。入っていい?」

「お前か、入っておいで」

品の無い香水の香りが鼻につく

父さんの部屋には下着姿の色んな女性がいた。

「あら、かわいー♡」

「息子さん美形ー♡」

「お姉さん達とも遊びましょ♡」


色気づいてイヤになる。。

僕はニコリとも威圧のある笑顔をお姉さんたちに向ける

「お姉さんたち、遊びたいのは山々なんだけど父さんと大事なお話があるからまた今度遊びに来てね♡」

自分でもゾッと凍りつく笑顔だと思った。

姉さん方は慌てて衣服を整え5分もせずに出ていってしまった。

のこったのは親子だけ。


「残念だね、お前も17だ。そろそろ大人の社交を教える頃だと思ったんだけど」

「本当に…残念、……まぁ僕には姉さんが居ればほかの女なんていらないんだけどね…ッ!!」

カタリ……手元にあったブランデーの瓶を手をとり振り上げる。重厚感のあるブランデーはまるでハンマーのように父親の側頭部の骨を粉砕した。

数多の淫行や家族への暴行、性的暴行、闇市への手出しもしていたらしい殺されて悔やむのは少量の遺産と屋敷と少しの土地だけだ。

父の死と共に後継者は跡取りの僕が継ぐこととなったが、仕事は役員になげやり状態になっていたことがわかった。

そこから事業を持ち直すことからやり直すことから始めた。

姉さんは母さんと平民の時のくらいがあるから、作物を育てたり売ったりは得意だし立て直しは何とかなりそうだった矢先だった。


ぼくの頭から角が生えた。

側部からねじれるように生えるそれは頭がおかしくなりそうだ。

角が生えることは堕天、禁忌の証。

人が人としてのやってない罪を犯し堕天した。

僕が人してやっていけない罪、『憎悪での親殺し』、そして『近親姦』だ。


母は絶望したが、姉は静かに抱き締めた「貴方だけに背負わせないから……もう…大丈夫だから」


すると母が膝から崩れ落ちた胸を掴んで苦しそうにしている。姉は寄り添うか残酷なことを言った。

「苦しいわよね、もう苦しまなくていいの。始まりの門に戻るだけよ、おやすみなさい」

いつ手に入れたのか暗器のように太腿に忍ばせて置いたアイスピックで確実に彼女は母親の命を借りとった。

母のからだから抜き取ったアイスピック空に一閃し付いた血を薙ぎ払った。するとメキメキと桃色の蔓植物が絡まったねじれ経つのが生え、

僕に向かって天使のように微笑んだ。


アイスピックを落とし手を伸ばす。

「もう、独りじゃないよ」


『なんで……』

抱き寄せる涙が止まらない。溢れてくる。


『私は露草、行こう黒角。これからは2人で生きていける』



全てが開放されたんだ。

堕ちた事で。罪を背負ったことで。

2匹の山羊はそれでも……あたらしい生を今を2人で2頭で謳歌している。


拝読ありがとうございます。

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