死神の唄/慟哭
出来れば評価とコメントよろしくお願いします。
出来る限り問題点を解決して続けていきたいです。
はぁ、はぁ……と、荒い息遣いで鉄で頑丈に作られた廊下を走るのはスキンヘッドに強面の顔の男。とは言っても、今のその表情は恐怖で引き攣り、死を感じたせいで溢れる涙と鼻水のせいで酷い事になっているのだが……。
そのスキンヘッドの男を足音も無く追い込むのは自分の背丈程の大鎌を軽々と構える女子高の制服を着た少女である。
「な、なぁ!なんで俺を追うんだ?俺は何もやってないだろう!!たとえこの世界がデスゲームだとしても」
見覚えの無い少女に追い掛けられ、命を狙われているスキンヘッドの男は、この世界の事をデスゲームと言い、まだ俺は何もやっていないと言う。
そう、この世界は途轍も無く現実に近い世界である。そうで無ければ、自分の体重より重いはずの大鎌を少女が持てる筈が無いのだ。
「うん、貴方はまだ何もしていない。良い事も、悪い事も……でも、此処はデスゲームの世界、例えまだ何もしていないNewプレイヤーでも……容赦は、しない。それに、この眼が貴方を黒と判断した」
小さいながらもよく響く鈴の音の様な声でそういう少女、彼女の言うNewプレイヤーとは、新しくこのゲームに参加したプレイヤーの事を指す。
そして、この眼が貴方を黒と判断したというのはただ単なる中二病ではない、この世界が限り無く現実に近い世界と言った通り、この世界では不思議な能力が使える。それは大鎌然り、彼女の眼も例外では無い。
裁定の眼、それが彼女の持つ一つの能力。
周りの人間が解っているのはある程度の業を持つ知的生命体を白と黒で判断できる……と云うモノである。
白とは善人、または誰にも業を成していない者に見られ、黒とはその反対、なにか後ろ暗い事をしている人間、又は罪人等に見られる。
「そ、そんなの、理不尽じゃねぇか……たったそれだけの事で俺を殺すなんて……」
何時の間にか行き止まりに着き、壁を背にして恐怖に引き攣る目で少女を見る。
それは、罪人が裁かれる時、少しでも実刑が軽くなる様に乞う様な目だった。
その時、スキンヘッドの男は周囲の温度が下がった気がした。否、本当に霜が降りる程下がっていた。
「たったそれだけ?違う……それ程迄に重い、重い罪だ。あの時も、私がアイツを見逃したから、千里が……っ!だから……だから私はお前達を殺す……例えそれが千里の望む事では無くても……それが私に出来る唯一の贖罪」
暗く、昏くなる眼に写っていたのは絶望、後悔に溢れんばかりの憎悪。それに気圧されたスキンヘッドの男が腰を抜かすと、ぶらりと下げた大鎌をしっかりと握り、フラフラと一歩ずつ近付いて行く。
「や、辞めてくれ……辞めろ、誰か、誰か助けてくれ!」
フルフルと顔を振り、叫ぶ様に命乞いをするスキンヘッドの男。
「大丈夫、ここは殆ど誰も通らない寂れた通路。だから安心して逝くといい…」
そう言って大鎌を振り上げ、ザンッと振り下ろす少女。その後、首の無い胴体と綺麗に斬られた首だけが無機質な通路に転がっていた。