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70 女子高生も大学生と異世界を観光する

 休日の朝。今日はちょっとそわそわする。昨日の夜にヒカリさんからラインで今日会いたいって言われていいよーって返事したらすごく感謝された。何かあったのかな?

 縁側でぼーっとしてたら車が外で停まる音がした。もう来てくれたのかな?


 そう思ってサンダルを履いて見に行ったらヒカリさんが手をあげて挨拶してくれたから、返しておいた。真っ白で長い髪で服も真っ白で絵本の住人みたいに綺麗。それで首からいつものカメラを下げてる。


「ノラちゃん、おはよー。急に悪いわね」


「全然いいよー。今日は暇だったから」


「ありがと。それとこれあげるね」


 ヒカリさんが白い紙袋を手渡してくれるから中身を見てみると中にぬいぐるみが入ってる。

 狐みたいな動物で茶色い毛をしてて、首まわりがモコモコしてる。


「イーブイだ!」


「ノラちゃんが好きそうだと思ってね。この前ゲーセンで取ったの」


「ありがとー。この子すごく好きー。イッブイイッブイ」


 ゲームはあんまり知らないけどこの子だけはすごく気に入ってるんだよね。

 喜んでたら急にヒカリさんが不適に笑ってた。およ?


「ふふふ、賄賂を受け取ったわね。さぁノラちゃん、私を異世界に連れて行って!」


 頭を下げて懇願されちゃった。何かあったのかな?


「いいよー。そういえばコルちゃんは一緒じゃないんだね」


「実は大学の課題で外国の文化について論文を提出しないとダメなの。それでせっかくだからあの世界について勉強したいなって思ったの」


 そういうことかー。大学生になるとそういうのも出るんだね、大変だ。


「それなら大歓迎だよ。着替えて用意するからちょっと待っててね」


「おっけー」


 それから準備をして2人で異世界に出発!


 異世界の街に来たらヒカリさんが早速カメラを構えてた。


「ここ、ここ! やっぱりこっちはいいわね~」


 そういえばヒカリさんと異世界に来るのは生誕祭以来になるのかな?

 ヒカリさん、ずっとシャッター切ってて既にテンションあがってる。


「文化って何を見たらいいのかな? 誰かに聞いて回る?」


 こっちの文化は私もまだまだ知らない所ばかりだし現地の人に聞くのが早そうだけど。

 ヒカリさんはカメラを下ろしてこっちを見てくれた。


「んー、それは最後でいいかな。とりあえずこの街の色んな所を案内してくれない? 歴史も大事だけど、まずはここはどういう所なのかっていうのが大事だから」


 ヒカリさんが真剣に話してるから、それに従っておこう。

 とりあえず私の知ってる場所を案内していく。異世界の門、色んな店がある通り、噴水広場、天球塔、住宅街の街並みって見ていく。


 ヒカリさんはどれも1つ1つ丁寧に撮ってた。地面のタイルの微妙な紋様、レティちゃんの店の蔦、酒屋の看板、住宅街の仕切り、他にも色々と細かい所まで撮ってる。すごく熱心で見てるだけで感心してくる。それに何も言わないでカメラを撮ってるヒカリさんは何か格好いい。


「あ、ごめん。何か私ばっかり楽しんでるわね」


「全然いいよー。ヒカリさんってもしかして風景撮る方が好きだったり?」


「あちゃー、バレちゃったわね。人を撮るのも好きだけど、自分の夢を考えたらこっちの方が好きなのよね」


「ヒカリさんの夢って?」


「私ね、記者を目指してるの。世界には色んな素敵な場所や街があるでしょ? でもそれを知らないままで人生が終わるって勿体ないじゃない。だから1人でも多くの人にそんな素敵な所があるって知って欲しいなって思ってるの」


 それは素敵な考えだなぁ。私もこの異世界を知らないままで終わってたらきっと平凡な人生で終わってたんだろうし。素敵な場所は素敵な出会いもあって、自分の考えにも影響すると思う。


「すごくいいと思う。もしヒカリさんの雑誌が出たら私にも教えて欲しいな」


「ふふ、ありがと。この話はコルには秘密にしてね。まだ誰にも言ってないから」


 家族にも話してない大事なのを私に話してくれたんだ。でも身内だからこそ言いにくいっていうのもあるのかな?


「分かった~。そうだ。まだ行ってない所があったよ。魔術学園、あそこなら良い写真が撮れるんじゃないかな?」


「それは是非とも見に行きたいわね」


「今から行こ~」


 それで魔術学園までやってきた。大きな校舎で校門は植物のアーチで潜るようになってる。今も生徒が出入りしてて自由な感じがする。ヒカリさんは感嘆しながら写真を撮ってる。


「勝手に中に入っていいの?」


「多分、大丈夫かな。私もよく出入りしてるけど学園長の人には怒られてないから」


「えっ、ノラちゃんって学園長と知り合いなの? やば」


「なりゆきだよ~」


 それで中に入って廊下を歩いてる。ヒカリさんは流石に生徒を撮るのは躊躇ってシャッターは切ってない。そんな感じでぶらぶらしてたら丁度前の方に顔見知りを発見。


「リリだー、やほー」


「ノノ! それにあなたはヒカリ! 久し振りね!」


「リリルちゃん、久し振りねー」


 リリと手を合わせて今日の挨拶完了。リリは今日もキラキラの金髪がとっても綺麗。


「2人だけって珍しいわね。それに学園に来るって何か用事かしら?」


「うん。ヒカリさんがこっちの街を見たいって言うから案内してるんだー」


「へー、そうだったのね」


 リリや一部の人には私達が日本人って知れ渡ってるからこのニュアンスでも伝わってるのが嬉しい。


「リリルちゃんもこの学園の生徒なのよね?」


「そうね。そうだわ、せっかくだし2人も魔法学の講義を受けたら? 面白いかも」


 まさかのリリの提案。


「いいのかな? 入学資金とか払ってないけど」


 前は途中に入って勝手に受けちゃったけど。


「その辺はゆるいから大丈夫よ。フェルラ先生の意思で学びの意欲のある人は拒まないってのがこの学園の理念にもなってるし」


 そんな理念があったんだ。そこまで言われたらせっかくだし受けてみたい。ヒカリさんも同じみたいで頷いてる。


「じゃあお願いしようかしら?」


「うん、任せて。こっちよ」


 リリに案内されて教室に案内される。前来た所と同じで横に長い机がいくつも並んでて後ろの方は段差になって高くなってる。一番前には黒板もある。既に生徒は満席状態で私達は空いてる後ろの方に座った。


「へぇ。大学の講義室と結構似てるのね」


 ヒカリさんが言った。大学の講義室ってこんな感じなんだ。


 それから少ししたら白い髭が特徴のサンタさんの先生が入って来て生徒の雑談も止んだ。何かすごい久し振りに見た気がする。


「こほん。では前回のおさらいから始めよう。魔力は成長と共にゆるやかに総量が増幅していく。つまり年を重ねるほど魔法使いとして成熟していく。とはいえ、生まれや血統において基礎魔力が高い場合もある。しかし魔力が高いだけでは優れた魔法使いとは言えない。それは何故か覚えているか?」


 サンタさんが生徒全員を一瞥してると、リリが勢いよく手を挙げた。その時にサンタさんと目が合って優しく微笑まれちゃった。もしかして顔を覚えられてる?


「ではリリル君、言いたまえ」


「魔法を使う魔力の消耗は魔の流れをどれだけコントロールできるかにあるからです」


「正解じゃ。どんなに魔力があっても魔の流れを闇雲に扱って魔法を使えば非常に疲れる。だが魔力が少なくとも魔力コントロールをしっかりしていれば相応以上の魔法を扱うこともできるだろう。故に基礎魔法を完璧に覚えるのは非常に重要だ。ワシも、この年になっても未だに完璧でないからのう。ほっほっほ」


「でも魔力を回復できるポーションもありますし、コントロールってそんなに大事なんですか?」


 リリがまた手を挙げて指摘してる。なんかすごい積極的だ。


「ポーションも薬であるからな。短期間で何度も併用すると効果は薄まってしまう。飲むならば1日に2本くらいが限度じゃな。それ以降は大した回復を見込めなくなってしまう」


 それを聞いて生徒の皆が必死にノートに書いてる。こうして聞いてると魔法って分野でもしてるのは私達の学校と全然変わらない。ヒカリさんも真剣に聞いてメモに書いてる。


 そんな感じで授業は進んでリリが色々と熱心に質問してるのが印象的になったまま終わった。


「では今日はここまで。次回まできちんと予習するように」


 そう言ってサンタさんが出て行くと教室はがやがやと騒がしくなる。


「どう? 面白かった?」


「うん。リリが勉強熱心で偉いなーって思った」


「わ、私!? じゃなくて授業内容の方! ヒカリはどうだった!?」


 何かリリが顔を赤くして話題を逸らしてる。うーん、かわいいなー。


「色々と勉強になったわ。こっちの指導方針ややり方もね。思ったのは先生が授業を進めるというより、生徒と一緒に進めるっていうのが印象だったわ」


「これがいつもの感じよ。気に入ってくれたなら嬉しいわ」


「うん。とても良かったわ」


 ヒカリさんが嬉しそうな顔をしてる。こういう顔を見てるとやっぱり大学生って感じがしていいなぁ。


「それじゃあ私は次の授業があるから行くね。ノノもバイバイ!」


「頑張ってね~」


 リリと別れて私達も教室を出て魔術学園を後にする。ヒカリさんも撮った写真を眺めて満足そうにしてるし、連れて来た甲斐もあったなぁ。


「ヒカリさん、お腹空いてない? せっかくだしご飯食べて帰ろう」


「それはいいわね。こっちの料理美味しいから好きなのよね」


 生誕祭で美味しいのご馳走になったからね。それで早速異世界の酒屋を目指して歩いた。


 カランカラーン


「いらっしゃいませー! ノリャお姉ちゃん!」


 入店したら給仕服のセリーちゃんがペコリとお辞儀してた。


「セリーちゃん、こんにちは。今日は客として来たよ~」


「お2人様でよろしいですか?」


「うん」


「ではでは、こちらにどうぞ~」


 案内されて端の方のテーブルに着いた。周りは相変わらず色んな種族の人が賑やかに食事をしてる。セリーちゃんにメニューとお冷を出される。メニュー開いたけど、文字が読めないんだった。これは困る。


「セリーちゃんのオススメってある?」


「ええっと。それならあります! 少々お待ちください!」


 そう言ってセリーちゃんがパタパタって走って行って厨房に走った。それから少ししてから料理を運んでくれる。


 出されたのはステーキみたいな小さな肉に群青色のソースを少しかけて、横には焼いた茸に小さな木の実を添えられてる。それと別の皿には緑色のパスタに赤い粉がパラパラ振られてて、具には彩りのある葉が混ざってる。香りの時点でおいしいって分かったよ。


「グレンシシの肉とマイマイ草のパスタです! あ、でもグレンシシは小さく切ったんですけど、追加が欲しくなったら言ってください」


 もしかして私達が女性だから気を使って量を減らしてくれたのかな。確かに獣の人よりは食べられる自信はないし、これは嬉しい気遣い。


「ありがとう。セリーちゃんの接客もすごくさまになってるよ」


「嬉しい! ノリャお姉ちゃーん!」


 セリーちゃんが私に抱き付いてくる。こういう所はまだまだ子供だなぁ。


「おい、接客中だカァ!」


 店員の鴉さんに怒られてセリーちゃんが私から離れる。短い幸せだったよ。


「頂きます」


 まずはお肉の方を食べてみる。ナイフみたいのしかないけど、これでどうやって食べるんだろう? 他の人を見たらこれで刺すみたいだった。なるほど、側面が刃になってて先で刺す感じかぁ。


 それで口に運んだら肉汁が広がってしかも柔らかい! それにソースが絶妙に後からじんわりと甘く広がって、なんかもう言葉がでないかも。


 ヒカリさんはパスタを食べてて一口飲み込むと急に立ちあがった。何事?


「料理長!」


 ヒカリさんが叫ぶと厨房にいた狼頭の大将さんが顔をあげた。


「めちゃうまい!」


 そう言って親指を立てると狼さんも親指を立ててる。すごい意思疎通だよ。


「それと緑色のかわいい店員さん! あなたの接客すごくいい! べりーぐっど!」


 そしたらセリーちゃんが恥ずかしそうに頭を下げてる。ヒカリさんはそれだけ言って満足すると席に座って食事を再開してた。これが大学生のキャパシティかぁ。


「ノラちゃん。今日はありがとうね。色々考えたんだけれどやっぱりこの異世界の論文はやめようと思う」


「え、そうなの?」


 まさかの告白で思わず驚いちゃう。


「うん。なんかね、この世界は私達の世界で広めちゃいけない、そんな気がしたから」


 ヒカリさんが目を瞑ってそう話してくれる。ヒカリさんなりの何か深い思いがこの短い間にあったのかな。


「ま、そもそも広めようとしても誰も信じないと思うけれどね。でも私はここが好きよ。だからノラちゃんや皆だけの秘密っていうだけで満足かな」


 そう話したヒカリさんの表情はすごく儚くて、それで綺麗だった。女性の私でも一瞬だけドキッてしちゃった。


「私もこの世界が大好きだよ。ここの人達は皆良い人達だし」


「そうね」


「けどそうなったら論文はどうするの?」


 急ぎみたいだったし。


「そこは徹夜で何とかするわ! 美味しい料理も食べれたし!」


 うーん。やっぱり大学生すごい。けど、ヒカリさんはすごいよ。ちょっと抜けてる所もあるけど、やっぱりコルちゃんの姉なんだなって思ったから。

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