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4-16 そして欲望は、時たま何かを産んでしまう

「‥‥‥本当か?滅びの大地に、森が復活したと?」

「本当です、ゴゼルゥン大神官様。緊急連絡で来た情報であり、間違いないという事です」


 ガタゴトと馬車が揺れながら進み、その中ではファルン神聖国のゴゼルゥン大神官とその付き人タルガスが話し合っていた。


「しかし、信じられんな…‥‥あの謎の汚染によって腐り切っていた大地に、急に森ができがあるとはな。もしそれが本当だとしても、何か原因が無ければいけないだろう?」


 物事には何かと原因が存在しており、それが無ければ起きることは何もない。


 一部の例外もあるかもしれないが、それでも今回の情報に関して大神官は警戒をしていた。



「数年前に、一夜にして滅びた大地…‥‥あまりにも異常すぎる状態ゆえに、混乱が生じぬように情報統制がされた場所に、なぜ今になって緑が戻ったのか」

「そもそもそこにあったのは、小さな村や町程度で、何かを引き起こすような組織も何もなかったはずですし、謎が多い場所でしたからね」


 とにもかくにも、その滅びた大地に緑が戻ったという情報を聞き、彼らは直接自分たちの目で確かめに向かっていた。


 立場的には誰かを派遣して探らせても良いのだが、場所は謎の多い滅びの大地。


 また突然何かが起きて滅んだ時に、普通の人を派遣させていては余計な犠牲が出ると考えた上で、緊急時に戻る事ができる魔道具を身に着けた二人が向かっているのである。


 なお、この馬車の御者に関しては到着次第すぐに逃げられるようにしてもらっており、自分たちが調査中でも待たずに見捨ててすぐに逃げろと言う命令もされていた。



「っと、見えてきましたよゴゼルゥン大神官様!!本当に森がうっそうと茂っているようです!!」

「どれどれ‥‥‥おおぅ、確かに目で見るまでは半信半疑だったが、日の下にこれだけ照らされているのを見ると本当だとしか言えんな」


 目的地が近づいてきたところで、馬車から身を乗り出して確認すれば、そこには確かに広大な森が広がっていた。


 ついこの間までは何もかもが凄まじい地獄の大地になっているかのような光景が広がっていたはずなのに、今目の前にして見ればそんな光景はどこへ行ったと言わんばかりの状態であった。







「ふむ、確かに生きた森だな。間違いなく、生命の息吹などが戻ってきているだろう」

「こうやって見ると、奇跡でも起きたのかと言いたくなるような茂り具合ですねぇ」


 森の側に到着し、二人は馬車を降りて現地確認を行っていたが、こうやって葉っぱや枝、草花に触れてみると幻でもなんでもなく、確かに存在しているモノだと実感できた。


 何もかもが駄目になっていた大地とは違い、ここに命がしっかりと芽吹いているのだと肌で感じ取る。


「戻って来た、というのは語弊かもしれぬな。どちらかと言えば、町や村が出来上がる前の自然本来が持っていた姿に還っただけというべきだろう」

「でも、どうして急にこんなことになったのでしょうか?」

「問われても分からぬ。命の亡き大地になぜこれほどまでに命が突如として戻って来たのか、ギリギリ観察できるほかの村や町、後は報告をよこして来た者たちに対しても聴取を行い、調べぬとな」



 滅んだ大地にふたたび命が芽生えたのは喜ばしい事なのだろう。


 けれども何が原因で、このようなことになったのかはわからないままだ。


「とりあえず、本国へ戻り報告をするぞ。ここでの情報を記録しつつ、今後の調査で何か‥‥‥む?」

「どうなさいましたか?ゴゼルゥン大神官様?」

「…‥‥タルガス、少し静かにしろ。何か聞こえないか?」

「はい?」


 ふと、何かに気が付いたゴゼルゥン大神官の言葉にタルガスは首を傾げつつ、耳を澄ませた。


 聞こえてくるのは風が吹き抜けて揺れる木の葉の音ぐらいだと思ったが…‥‥確かに、何者かが話している声が聞こえて来た。



「----、で、帰れるのか?」

「---、ハイ。----、ですから、---行けるはずデス」


 聞こえてくるのは、若い男女の声。


 この復活したての森の中にあるものとしてはどう考えても不自然であり、絶対に何かこの状況になった原因を知っているだろうと彼らは思えた。


(どうします、ゴゼルゥン大神官様。話している者たちのところへ突撃しますか?)

(いや、もう少し様子を見たほうが良いだろう。何者か分からぬうちは‥‥‥)


「それじゃ、行くか。ゼナ、ナビを間違えないでくれよ!モードチェンジ、『ソードウイング』!!」

「了解デス!!」


 どうしようかと相談していた最中、聞こえてきた声。


 次の瞬間、何かが光ったような気がしたかと思えば、突然強風が吹き荒れた。


ゴウッ!!

「「どわぁっ!?」」


 それは何かが急に飛び出したかのような強い衝撃で、しばし体を押されてしまう。


 それでも何とか耐え抜き、動き方から見て上の方に飛んだと判断しつつゴゼルゥン大神官は上空を見た。


 ちょうど都合のいい事に、森の中でもここは上の方がまだ開けている場所のようで、空がきれいに見えている。


 視力はそこまで良いわけでもないのだが、それを補うために懐からメガネを素早く取り出し、何がいるのか見逃さないように目をこらしてくまなく探せば、何かが飛んでいるのが目に見えた。



 鋼の翼のような、それに重ねて他にも翼があるような人物の姿を。


 ぐわっと目力を強めてもう少し細かく見えないか根性を出すと、うっすらと青い髪色などが確認できたが‥‥‥次の瞬間には、その姿は失せていたのであった。



「…‥‥何者だ?いや、二人いるかのような声だったのに見えたのは一人だったが…‥‥待てよ?」


 その姿が何なのかよくわからなかったが、ふとゴゼルゥン大神官はある話を思い出した。


 神聖国の方からドルマリア王国に向けて留学の話があり、神殿で学んでいた者の一人が向かい、そこでの生活の様子を詳細に書いた手紙を送ってきていることを。


 その手紙の内容には、王国の学園には不思議な少年と魔剣の話があり…‥‥話の中に、翼を生やすような内容も存在していたという事を。



「…‥‥しかし、王国とここでは相当距離が離れているはず。そもそもそうだとしても、何故ここにいるのか‥‥‥むぅ、手紙を出して確認するしかないのか」


 分からないことが多すぎて、どうしたものかと悩まされる。


 とりあえず今は、王国に留学している彼女のほうへ確認を取ったほうが良いだろうと判断し、一旦調査を終えてすぐさま帰路につくのであった‥‥‥



「戻るぞ、タルガス。すぐさま確認作業へ‥‥‥おや?タルガス、どこへ行った?」

「ここですゴゼルゥン大神官様‥‥‥助けてください」

「何故、見事に木に突き刺さっているんだ?」

「さっき吹っ飛ばされたからですよぉ!!しかも運悪くこれ柔らかい木で、勢いそのまま貫いてしまったんですってばぁぁ!!」


…‥‥帰路につく前に、木を貫通して刺さったタルガスを引き抜くのであった。



「ううっ、ひどい目に遭いました。よくゴゼルゥン大神官様は耐えきれましたね?」

「あたりまえだ。何事があっても吹き飛ばされないようにしなければ、神官としては大変な時もあるからな。欲望に溺れぬように、しっかり心身ともに健康でいるためにも足腰を鍛えておくのは当然のことだ」

「まだまだ修行不足でございました。でも、当然という割には、例えばデップリーニ大神官様は見事にふくよかな体形ですよね?」

「あれはもうそろそろ、出荷されるらしいからな‥‥‥いや、今口にしたことは聞かなかったことにしてくれ」

「‥‥‥出荷?」



目撃されたようだが、気にすることもあるまい。

今は帰国し、学園へ戻る方が先決だろう。

それにしても、ここまで勢いよく飛んだっけ…‥?

次回に続く!!


‥‥‥うん、まあ、管理する人がいなかったらそりゃどこからヌルっと来てもおかしくはないよね。

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