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4-5 悪意はゆっくりと、しみ出すように

「魔獣が出たぞぉぉぉぉ!!」

「魔剣士を派遣しろ!!到着までに急いで防衛線を張れ!!」


‥‥‥どこの地域であっても、この世界では魔獣が出現したら人々はすぐに行動を起こし、被害を出来る限り最小限にとどめるように工夫を凝らす。


 ある村では堀を作ったり、ある町では城壁で囲み、またある都市では城壁に兵器を配置するなどをして魔獣に対抗しうる手段を取るのである。


 とは言え、魔獣の命を完全に根絶できるのは魔剣しかないので、魔剣士たちが到達するまでの時間稼ぎぐらいにしかならないが、それでもかなりの時間を稼げると言えば稼げるだろう。



 だがしかし、その日、その場所に出た魔獣は違っていた…‥‥









「せいやぁ!!」

「っと、今の翼での体当たりは危なかったですネ」


 空中で体当たり攻撃を行ったが、軌道を読まれていたようでゼナは回避してしまう。


 本日の授業の模擬戦では空を飛ぶ魔獣対策として他の生徒たちがインスタント魔獣を用いて相手をしていたが、俺の方はゼナに相手をしてもらっていた。


 というのも、空中戦に関してはドラゴンの翼が生えているので、機動力がインスタント魔獣よりも桁違いに異なり過ぎているのである。


 他の生徒たちも対空手段を持ち始めているとはいえ、それでも空を飛ぶ魔獣相手ならば自分で言うのもなんだが突出しすぎてるので、そこでゼナと模擬戦をすることにしたのだ。



 メイド魔剣が空を飛ぶのかと言われそうだが、実際に飛べているのだから仕方がない。


 まぁ、ソードウィングモードとかではなく‥‥‥こちらが自前の翼で飛んでいるのに対して、何故か空中を足踏みして飛んでいるというのはどうなのかと思うが。


「本当にそれでどうやって飛んでいる、いや、空を駆け抜けているんだよ」

「足場をちょっと固めているだけデス。空中歩行の技術もありますが、ここは空気をほんの数秒固める技術の方がやりやすいだけなので、それを選択したのデス」


 どういう技術だとツッコみたくなるが、理解できないのが目に見えているので止めておく。


 なお、ゼナの服装はいつものメイド服…‥‥スカートをはいているので下から見たら中が見えかねない危険があるとは思うが、そこは対策しているようで暗闇しか見えないようにしているらしい。ズボンをはけばそんな謎の技術を使ってまで隠すこともなくなりそうだが、そこはこだわりなのだとか。



 とにもかくにも、空中でお互いにぶつかり合い、そろそろ一撃をなんとか当てられそうな…‥‥そんな時だった。


ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!

「なんだ!?」

「警報でしょうカ?」


 突然学園中に何やら非常にけたたましい音が鳴り響き、模擬戦を行っていた生徒たちの動きが止まる。


 確かこの音は、かなりの非常にのみ流される警報音であり、授業内でどのような音なのか聞くことがあったが、実際に流されるのは入学してから初めてだろう。


 なお、王都に来て早々の大量のプチデビルという魔獣が出現した時にも実は流れていたようで、王都自体に危険が迫る際に流されるそうだが…‥‥



『緊急事態発生!!魔剣を扱える生徒たちは、ただちに運動場の方へ集まり、指示があるまで待機をしてください!!すぐに動けるように準備をして備えてください!!』


 警報音に続けて、学園中に音声放送を行う道具で放送音が鳴り引き、全員指示に従う。


 インスタント魔獣はすぐに回収され、俺たちも地に降り立って他の生徒たち共に行動を行う。



「あ、フィー!!急いでこっちの方に来てくれ!生徒会の方でも招集がかかっているぞ!!」

「わかった!」


 一応財務の方に所属しているので、生徒会が集まる方へ呼び出され、全員がすぐさま整列する。


 普段の学業に含めて、魔剣士としての訓練もしっかりされているので、誰も乱れて動くようなことはない。


「生徒諸君、緊急事態が起きた事をここに連絡する!学園長より指示があるぞ!」


 生徒会長が生徒会含め集まった生徒たちへ向けれ声を発し、いつの間にか設置された壇上にこのデュランダル学園の学園長ガッドハルドが姿を表した。


 いつもならばその手に持つ魔剣エレキギールを鳴り響かせて出てくる学園長だが、今回は非常時のようでふざけた様子もなく真剣な表情だ。


「緊急事態が起きた。生徒たちは聞き逃すことなく、話を聞いてくれ!」


「今から2時間ほどまでに、この王都より南西にあるルゾン領内に、魔獣が地中より出現した。すぐさまその地域近辺の魔剣士たちが派遣されたが…‥‥全滅し、その魔獣たちがこちらへ向かってきているそうだ!!」

「ぜ、全滅!?」

「うっそだろおい!?」



 学園長の言葉に驚愕する生徒たちもいるが、そのまま話は進む。


「魔獣の詳細は不明!地中より現れたのでモグラやオケラ、ミミズなどの姿をした魔獣かと思われたが、現地からの情報によれば宙を浮遊する黒くて丸い物体のような魔獣だ!!接近戦は危険と思われ、遠距離の出来る魔剣士の招集を生徒たちからも募る!!」


 要は魔剣士たちを緊急招集する必要があり、生徒たちであっても必要とされるほど不味い事態らしい。


 しかし、黒い丸の物体のような魔獣‥そんなの、いたか?


「魔獣に丸いのって何がいたっけ?」

「ダンゴムシ型の魔獣グソクムッシャというのは、過去に出現した例があるようデス。しかし、飛んだという情報はないはデス」


 とにもかくにも、正体不明の魔獣は今、魔獣として生きとし生けるものすべてを葬る行動が出ているようで、そのためなのか人の多い王都めがけて接近しているらしい。


 道中にも魔剣士たちがいたりするのだが、対空迎撃を行ってもひるむことなく、むしろ攻撃をされて歯が立たないようだ。


「何にしても、魔獣なら出るか。生徒会長、自分は空を飛べるので、先に相手と対峙しておいても良いでしょうか?」

「ああ、許可する。ただし、不味いと思ったら必ず退却を忘れないように」

「分かっています」


 一人で解決できると思わないし、一旦確認のために向かうほうが良いだろう。


「ゼナ、ソードウイングモード!!」

「了解デス!」


 ドラゴンの翼を広げ、そこに刃の翼が付け足され、一気に飛翔する。



「南西の方角から一直線となると‥‥‥こっちか」

「魔獣までの距離はまだあるようデス。反応を感知次第お知らせいたしマス」


 空を駆け抜け、魔獣のもとへ俺たちは急ぐ。


 到着しても、対空迎撃への反撃情報からすぐに攻撃もしにくいし、一旦直接目で確認するために向かうが…‥‥


「それにしても、宙に浮かぶ黒い物体か」


 何だろうか、この嫌な予感は。


 先日の悪夢で見たような、何かが現実に現れるとはどういうことなのか。


 何の関係もないとも言い切れず、言いようのない不安を抱えつつ俺たちは魔獣の飛行しているところまで向かうのであった。


「‥‥‥いや、悪夢だったのは目覚めた後だったか」

「何か言いましたカ?」

「何でもない」



‥‥‥正直言って、夢よりもその後にあった物理的なダメージの方がはるかに酷かった気がする。こんな状況で何を思い出しているのかと思うが、潰れた果物のような気分を味わいたくなかったなぁ。

突如として現れた、謎の黒い物体の魔獣。

先日の夢との関連してそうで、言いようのない不安が渦巻く。

気にしている暇もないのだが、関係ないと言い切れないのがなぁ‥‥‥

次回に続く!!



‥‥‥でも正直言って、夢の後の方が酷かった。いや、うっかりやった自分が悪いのが分かるが、それでもぐしゃぁっとなるのは体験したくなかった。

案外、ドラゴンが混ざっていようが人の身体って脆いんだなぁ…‥‥

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