5-90 自爆装置はロマンらしいが、あると困るのもどうなのか
‥‥‥人というのは、心の奥底に思いを隠すこともある。
人ならざる身でも、人のような心がある場合同様のことがあるそうだ。
だがしかし、そんな隠し持ったものでも何かをきっかけに出てしまうことがあるという話も聞いていたけれども‥‥‥
「‥‥‥シャレになりまセン。私、違いますよ‥‥‥」
しゅわしゅわと過熱する頭を水で冷やすも水蒸気になっており、全然頭が冷えた気分にならない。
醒めた後に彼女の主を盛大に勢いよくふっ飛ばし、逃げるように自分用の部屋を用意し、即興で冷却用の滝を室内に造ったのに、頭に落ちる前に蒸発するとは意味がなさすぎるだろう。
でも、そうなるのも無理はないのかもしれない。私は今、超・恥ずかし想いを抱いているのだから。
「まさかまさか、酔ったような状態であんなことをしでかしてしまうトハ‥‥」
自分の刀身を鍛える中で、自己修復中の状態だと過剰に修復作用が働き、一時的に酒に酔ったような状態になる可能性は聞いていた。
けれども、そんなことを実際に体験してしまうと、かなりシャレにならないことになっていたのだと否応なく理解してしまう。
酔う行為自体は知らなかったけれども、やったことに関しては全部覚えているのだ。
理性が働かず、普段抑えている分が歯止めが聞かず、かなり好き勝手にやってしまったことを。
その上、自身の主を襲いかけたというか性的にやらかしかけたというか‥‥‥
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
何をしでかそうとしていたのかまではっきり思い出し、ゴロゴロと転がって悶えるゼナ。
顔から火が出るような、いや、本当にぼうっとちょっと燃えている状態になるのだがそんなのはまだマシな方である。
やらかしたことのほうがはるかに最悪すぎるというか、恥辱の極みと言って良いだろう。
「なんですかなんですかなんですか酔った私ハ!!あのような真似をふふふっと笑いながら、ご主人様に対して迫って‥いやあああああああああああ!!」
なお、この室内はしっかり防音になっているので、この悶え苦しむ叫び声は外には聞こえない。
張り裂けるような、自身の恥ずかしさで叫ぶ声は山を砕きそうなものなのだが、それでも耐えきっているのはきちんとした設計の賜物だろう。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ‥」
しばしの間悶えまくり、本来はそこまで疲れることがないはずなのに精神的なものは体力とは違うのか物凄く濃く疲労するゼナ。
メイド魔剣としての嗜み、『何とか生き延びて仕える』というのが辛うじて彼女を生かしているのだろう。
「それでも、やってしまったことは変わらないのデス。たとえ記憶を消しても事実は残りますし‥‥‥ああもう、この後どうやってご主人様に顔を合わせればいいのでしょうカァァァ!!」
その主はこの部屋を作る前にふっ飛ばしてしまったが、それは関係ない。
自分の曝しまくった部分が恥ずかしすぎて、あわせる顔もないのである。
「これでもし、青薔薇姫にでも見られて‥いや、手遅れですかコレェェェェ!!ニゲバモナニモナイノデーーーーーース!!」
疲れているけれども落ち着くこともなく、言語野のどこかが変な故障をしたのか口調もおかしなことになる。
すぅぅぅっと、とりみだしまくっても仕方がないので、一旦深呼吸を繰り返し…‥‥そしてさらに時間をかけて、ようやく彼女は落ち着いた。
「…‥‥良し、旅に出ましょウ。暇をいただくのは非常につらいのですガ、この恥辱に比べればマシなのデス」
「いや、旅に出るって何をどうすればそんな結論になるの?」
「今はまだ厳しいので、もうちょっと心の平穏を‥‥‥オゥ?」
名案だと思い結論を口だす中、ふと後方から声が聞こえた。
思わず答えてしまったが、何か変な気がして振り向けば…‥‥そこには先ほど、ふっ飛ばしてしまった彼女の主がいた。
「ご、ご主人様…いつの間に、デスカ」
「最初から、ふっ飛ばされてなんかぐるぅっと何処かを一周したかと思ったら、気が付いたら部屋に突っ込んでいたんだよ」
「どのあたりから聞いてましたカ?」
「それでもやってしまったことは…あたり、かな?」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
全部ではないのだが途中から聞いていたことには変わりなく、思わず叫ぶゼナ。
全身が既に真っ赤に燃え盛っており、羞恥心が限界を超えてしまったらしい。
というか、主が突っ込んできた時点で気が付きそうなのだが、その音が聞こえないほど悶えてしまっていたという事にもなるだろう。
「あの、ゼナ。俺は気にしてないからな?襲われたとはいえ、命を奪うとかはしてないし‥」
「当り前ですヨ!!私がご主人様の命を奪うのは、流石にメイド魔剣としてダメな類なのです!!ここでヌッコロしてしまうと消滅確定デスシ!!」
メイドとして、魔剣としての立場ゆえに命を奪うのはタブーなのだ。
いや、今はそんな事よりも、この場に居られること自体が非常につらい。
「とりあえず出て行ってくださいご主人様!!私はこの後全身バラバラにしてオーバーホールして、三日三晩洗浄しマグマの海で熱消毒し、全身全霊で100年以上捧げる舞を踊って空の彼方へ飛ばなければいけないのデス!!」
「さらっととんでもないこと言うなよ!?というか、何をどうしてそんな結論を導き出すんだ!!」
「『メイドたるもの、己の醜態をさらしたからには、納得のいく清算を』とあるのデス!!私の醜い心の欲望で、ご主人様を性的に襲いかけたという醜態にはそのぐらいのことをしないと釣り合わないのデス!!」
「そこまでやるのかよ!?」
「そうでもないと、駄目なんデスヨォォl!!メイドで魔剣なのに、ご主人様の事を異性として好きになるようではまだまだ未熟だと自分で言っているようなものなのですカラァァァァァ!!」
「…ん?」
「…ア( ゜Д゜)」
‥‥‥‥いきおいとは恐ろしいものだ。自分の思いも何もかも、爆発させてしまう時があるのだから。
それもよりによって、最悪の時に限って盛大にやらかしたのだから。
「あ、う、あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうああアウアウアウアウアウアウアア」
「ぜ、ゼナ。なんか真っ赤を通り越して周囲が溶解しているけど大丈夫か!?」
「アウスススアワワブbヅアソウsトdgドウstドウトウtコルcツオcトウc、ガビピィオイィィィィィィィィィィ!!」
カチッ
「え?」
―――ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
その日、一つの村の片隅で、大爆発が起きた。
幸い、頼れるどこぞやの姉が既に事態を読み切っていたようで、ひょっこりと抜け出して村全体を守れるようにしていたので、どこにも被害はないだろう。
ただ一つ言うのであれば、何処かのドラゴンが真っ黒に焦げ、その傍らでは振り切れてしまい意識を飛ばした自爆メイドぐらいの被害が確認されたことだろうか…‥‥
「‥‥‥ファファファファ、最新のはずなのに、初心すぎるのが傷か」
そんな情けない妹の姿を見て、その姉は苦笑いを浮かべるだけであった‥‥‥
最初のころの、冷静沈着真面目な雰囲気はどこへやら。
盛大にぼろが出まくっていないだろうか。
魔剣のはずなのに、人に近いものになっているせいなのだろうか‥‥
次回に続く!!
‥‥‥ある意味一種の、爆発オチなのだろうか。何気に初めてやった気がする。多分。




