2-4 苦労人は、どこにでも生えてくる
「‥‥‥そうか、一人残らず捕縛したか」
「はっ、違法な商売を確認しており、現在一族全てを調査中。結果が出しだい判決を下しますが、処刑は免れないでしょう」
ドルマリア王国王都内、中心部にそびえたつドルマリア王城内にて、この国の国王ザブートン・アイアス・グラン・ドルマリアは臣下たちから報告を受けていた。
昼間に起きた、王都周辺に突如として現れた魔獣の群れの対応を行っていたが、全てを殲滅して落ち着いた今、その元凶共を逃さないように動いているのである。
「しかし、今どき魔獣の知識に関して抜けている商人がいたというのはおかしい話だ。魔獣どもの恐ろしさを知らぬものなど、いないはずだろ?」
魔獣、それはこの世界において生きとし生けるものすべての命を奪いつくす存在であり、どれほど恐ろしいのか周知はされているはずである。
それなのに、魔獣を呼び寄せるような真似をする大馬鹿者が出るのは、普通は考えにくいのだが‥‥‥
「証言によれば、今回の原因となった魔獣『プチデビル』に関して、その容姿から簡単に抑えられるだろうという短絡的な考えを持った者たちが捕縛して連れてきていたという話も出てきております。商人たちの間では基本的に魔獣の売買行為自体が禁じられているのですが‥‥‥そのものたちは、恐ろしさを良く認知せずに、高く売れるだろうと考えた馬鹿もので間違いないでしょう」
「そうか‥‥‥」
恐ろしいものをよく理解していたとしても、それを真に理解しうるものは案外少ない。
さらに言えば、根拠のない自信があるからこそ無謀な行為に及ぶ愚か者がいるのも事実であり、今回の輩はその愚か者に該当したようだ。
「残念だな‥‥‥しっかりと分かっておれば、多少怪しいものがあったとしても、この国で生きて行けただろうに。何故、愚か者が出るのかは理解に苦しむぞ」
‥‥‥国を運営する立場にある以上、多少の負の面を見る時があるのは理解している。
全てをきれいごとで済ませたくとも世の中そううまいこと行くわけがなく、だからこそ多少のあくどい部分や腐った部分は見張りつつ、どうにか抑え込もうとしているのだ。
だが、それでもその抑えが効かない部分から漏れ出た愚か者どもは、どうしようもない。
たとえそれが、今までの商売で多くの金の流れを作っていたとしても、それを根底から潰すような輩になったのであれば、徹底的に根絶するしかないのだ。魔獣どもの脅威はそれだけ大きいのだから。
今回のプチデビルたちの一件によって、何かが裏で動いていないかなどの情報を吐き出させ尽くせば、もう後に残るのは処刑のみである。
例え、知らなかったと言っても魔獣たちの恐ろしさがあるからこそ、情けをかける意味はない。
「それにしても、大群が襲ってきたとはいえ時期が良かったな。まだ魔剣士の卵と言うべき者たちが集まっていたのは幸いだったか」
「王都直属の魔剣士部隊が動く前に、初の実戦をこのような形で行わせてしまいましたが、魔獣どもの殲滅に貢献してくれましたからね」
「学び舎で学ぶ前に、まずはその力のありようを実感させられたのは良い事だったと思いましょう」
とりあえず今は、そんな愚者共の話をしている意味は無いだろう。
面白くもない話しよりも、今年は入って来た新しい魔剣士になる者たちに関しての話題にその場は切り替わる。
「新しい魔剣士たちは、誰も彼も初めての実戦で多少自信はなかったようですが、それでも何体もの魔獣を葬り去り、魔剣について考える時間が出来たようです」
「魔獣どもに唯一死を与えられる魔剣を持つからこそ、力の振るい方を見つめる良い機会にもなっただろう」
「にしても、報告を聞く限り今年も魔剣のバランスが色々と違いますなぁ。全体に攻撃するものや、単体のみ、あるいはその両方に、魔剣と名がつくのに剣の形状を持たぬもの…‥‥毎年調査を進めていますが、魔剣の種類に関しては、違いが見えて面白い」
「さらに言えば今年は、今までにない魔剣もいたようですな」
「ああ、人型の魔剣というやつか」
ふと、魔剣についての話題に出ている中で、とある魔剣の名が挙がって来た。
「人型の魔剣というか‥‥‥ドップルン地方のとある少年が獲得したという魔剣か」
「はっ。今までに大槌や太鼓、ブーメランなどの魔剣らしからぬ形状の魔剣の情報はありましたが、今年度はどうも人と変わらぬ見た目を持ちながらも、魔剣であるという存在が出たようです」
「詳しく聞くと、所有主である少年の手に宿って剣と化す情報もあるようですが、単体での行動も確認されてますな」
「しかし、何故メイド服を…‥‥魔剣業界ではそれが流行っているのか?」
魔獣を唯一屠れるものとして、魔剣は知られているのだが、その詳しい事に関しては実はまだ謎が多い。
そして今回はその謎に更に加わるかのように、人型の魔剣が現れたようだ。
「現在、魔剣のカテゴリとしては様々なものがありますが、どれにも当てはまるようで当てはまりにくいから、新カテゴリとして『メイド魔剣』なるものを作るべきか議論を重ねております。とは言え、まだ情報不足故に長引きそうです」
「ううむ、メイド魔剣…‥‥いや、それは本当に魔剣なのか、非常に気になるのだが」
「ツッコミどころが多いような気がしますが、魔剣であるというのは本人が、いや、本剣が言ってますのでどうしようもないかと‥‥‥」
訳の分からないことに関して、その場にいる者たちは首をかしげて悩むが、その回答を得ることはできない。
何にしても、色々と変な特徴を持つ魔剣として考えるのであれば、そう珍しい事でもない‥‥‥と、思いたい気持ちを全員抱く。
「ひとまずは群れも殲滅をし終え、今年度の分は全員集結しました。事後処理も早く済むでしょうし、あと数日以内には魔剣士の卵たちは我が国の学び舎にて入学式を迎え、魔剣士としての務めを果たしはじめます」
「それもそうだな。難しく考えずとも、今年度も無事に魔剣を手に入れた者たちが来てくれたと思えばいいだろう。とは言え、魔獣の発生は今もなお、各地で確認されるからこそ油断はするな」
「「「はっ」」」
国王の言葉に対して、返答する臣下たち。
今年度も無事に魔剣を持つ者たちが王都に集まってくれたとはいえ、ここだけではなく他の領地などでも魔獣の被害があるからこそ、早く成長してもらい各地へ出向いてもらいたい。
自分達のいるこの王都の守りも重要だが、国としては全てを守りたいと思う気持ちは、この場にいる者たたち全員が抱いているのだ。
「しかし、メイド魔剣か。生きた魔剣と言うべきか、話せるのであれば魔剣に関してのいまだにわからぬことを話してくれればいいのだがな」
「ああ、その件に関してですが、魔剣には意志があるという情報などをそのものは話してますね。魔剣士たちの魔剣に触れ、会話が可能だという話もあるようです」
「ほぅ、ソレはソレで興味深い。魔剣が見ている光景も、面白そうだ」
「とは言え、大半がかなり赤裸々なというか、知りたくもなかった、知らないほうが良かったという話があるようですがね」
「‥‥‥一体何を言ったのだ?」
「それは、本人たちにしか分からないかと」
詳しい内容が記された報告書が出されて、彼らはそれに目を通したが、思った以上に魔剣は周囲を見ているということを理解させられた。
そして同時に、色々な場面を見ているのかと遠い目をして思うのであった‥‥‥
「‥‥‥今年度、既に就職している魔剣士たちの給与を、僅かでもいいから上げる事を検討してくれ。こんな悲惨な話などは、知りたくはなかった」
「人は案外、見ていない部分が多かったようですね‥‥‥‥」
「あと姿絵も用意されてますが、これはこれで中々の美女なのは良いのですが‥‥‥一つ、とある問題が出てきました」
「何がだ?」
「我が国の学び舎、住む場所の提供として寮を用意していますが、過去にあった例によって男女分けており‥‥‥この場合、どう対応するのが良いのでしょうか‥‥‥?」
こうやって苦労人予備軍は育っていくのである。
いや、すでに予備から外れているというか、大人という立場だからこそ悩まされるというか。
色々とまともな人が多いようだけど、その分真面目に考えすぎてしまうのかもしれない‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥テンプレだからこそ腐った人もいないわけじゃない。でも、やっぱり苦労人がどうしても増えそうなのは避けられない話なのだ。
ツッコミ要員育成作業とも言えるか?




