プロローグ
勢いと何かとその他色々混ざった既に、爆誕した作品。
どうぞお楽しみください。
‥‥‥その世界では、魔剣という存在があった。
魔が付く剣という名の通り、ただの剣ではない。
一振りごとに持つ力は異なっており、火柱を上げ、水を切り裂き、雷撃を降り注がせ、その力は多種多様に存在しつつも、一人に一つの剣しか授けられない。
何故、魔剣が存在しているのか?それは、この世界のものには答えることができない。
ただわかっていることとすれば、この世界で襲い掛かってくる魔獣という存在への対抗策として何処かでその存在が産み落とされ、年月を経て広がったという事ぐらいだろう。魔獣に唯一対抗できる剣だからこそ、魔の名前を持って生まれた剣という説もあるらしい。
何をもって魔獣が人々を攻撃し、それでなぜ魔剣が対抗策として生み出されたのかということは誰にも分らない。けれども、だからこそ人々は魔剣を手に持ち、魔獣を打ち倒す。
「‥‥‥それが、この世界でのルールのようですが、本当にどこの誰がこのような事を決めたのでしょうかネ」
ふわふわと浮かぶシャボン玉のようなモノの中に見える世界を覗き、彼女はそうつぶやく。
彼女は、とある一柱の神ではあるが、この中の世界を作った神ではない。
誰がどのようにして世界を定めるのかは、それこそ神々ですら把握しきれないものであり、生み出した神が管理することも放棄して、それが当たり前になっていることもある。
そして今、ここに放棄されていた世界を偶然にも拾い上げ、覗きこんだのだが‥‥‥ありきたりのようで、面白みはそこまで無い。
けれども、好都合でもある。管理下に無い世界であれば、自分が手を下すことも結構簡単にできるのだから。
神の干渉は本来そこまでしてはいけないのだが‥‥‥そこは、特例という便利な言葉が存在するので、どうとでもできるのである。
「とはいえ、運命などもあるようですし、全てを把握はできないですネ。ここは世界のルールを乗っ取ったかたちで情報を得るのが良さそうデス」
そうつぶやき、彼女は持っていた本を開き、その中に並べられている写真に目を通す。
「‥‥‥ふむ、世界に漂う魂や、この後に生まれる存在なども計算に入れると‥‥‥この子ですカネ?少々合わせた改造が必要ですが、それでも可能でしょウ。一応、意志を聞いておきますが‥‥‥やりますカ?」
「‥‥‥ハイ。仰せのままに、私が私の主を得るためニ」
写真に問いかけて出てきた返答に、その神はニヤリと笑みを浮かべる。
そしてすぐに、考えを実行に移す。
「やるのであれば、徹底的に」
「合わせるのであれば、それ相応に」
「かと言って、全てが合うのではなく、自主的に改良できるように」
「‥‥‥そして何よりも、自身の答えを導き出せるように」
その世界に降り立って不便が無いように、親心的なものとどう変化するのか見たい好奇心が混ざり合い、準備が整えられていく。
「さてと、後はふさわしい相手ですが‥‥‥ここはもう、運命に従うとしましょウ」
やろうと思えば、自分の手で操作することは可能だろう。
けれどもそれは面白くも何もなく、だからこそ自由気ままに身を任させ、どうなるのか見てからのお楽しみである。
‥‥‥この日、その世界に一振りの新たなる魔剣が、産み落とされた裏側にそんな動きがあったことを誰も知らない。