Session1-0 魔王生活始めてました
『貴方は“魔王”─、
この世界において貴方は魔王になる為にその命を灯しました
これまでの泥水を啜り、捨てられたパンを食し日銭を盗ってきた全てが魔王となる為の過程だったのです
ですがこれからは違います
貴方は世界の理を超え、新たな定理の元でその道を歩むことになるのです
初めはその力に戸惑いや孤独を感じることがあるかもしれません
でも安心して下さい
貴方は決して一人ではないのです
その存在が生まれたと共に産み落とされたもう一つの道連れとなる因子が在るのですから
それをどうするかは全て貴方次第
さあ、道無き未知の世界を思うがままに行きましょう』
「爺やよ、お主にこれは読めるか」
「申し訳ありませんがこの書物は“魔王”の資格を持つ者のみが読める代物でございます。何か契約の内容に不備がありましたでしょうか」
「そうか。いや、何でもない」
魔王になる儀式があると聞いて呼び出されたらと思ったら“ルールブック”と書かれた1冊の本を渡されたのがつい5分前。
そしてそれは受け取った瞬間に我の手をすり抜けと思ったら、独りでに宙に浮きページを捲りこれを見せてきた。
どうやらこの文字は我以外は読めないようで、今我の前に示されているのは何かの契約に見えているようだ。
果たしてこのふざけたタイトルの書物に事前に聞かされていた様な力があるのかは不明だが、受け取った以上は仕方ない。
我が覇道の為にその“理から外れた力”とやらを使わせて貰おうじゃないか。
「…本よ、我に力を授けよ」
その声に呼応するかのように本は勢い良くページを捲っていく。
明らかに受け取った時よりもページが多いように見える辺り、やはりあんなタイトルであっても魔本であることに間違いないようだ。
そして、あるページでそれはピタリと止まる。
『まずは魔王向け初期ステータスの作成から始めます
これらは無作為にランダムで生成され後からの変更はできません
初めに固有スキルの作成を行います
P32を参考に希望される能力傾向を選択した後に“生成する”を実行して下さい』
「なんだこれ」
だが、私はまだ知らない。
「ゴチャゴチャとして見辛いなこの表は…」
このふざけた儀式から1年もしない内に魔王の座を追われ、
「…この“補助系”でいいか」
そして運命の人と出会うことに。
『生成に成功しました。貴方の固有スキルはー、』
それから世界の形を大きく変えていく事を。
「はあ…?」
この時はまだ、想像だにしていなかった。
Session1-1へ続く