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6.ヤンデレが家に来るってさ

今回は短めです。

次は12月22日投稿予定です。



「また………その、栄養食……食べてる、ね?」


「ん?ああ、まぁね……」


ユリとの特訓を始めて4日目。

つまりは来月の試験まで残す所後3日程度となった昼下がりの日。


俺は最近のブームになりつつある黄色いパッケージをしたビスケットの様な物を口に含んだ。


「大丈夫、なの………?それ……」


「ああ、健康には良いし、値段は安いし……今の所、欠点は見当たらないな」


「ふーん………」


俺がきっちりと弁明したにも関わらず、怪訝そうな顔でこちらを見てくるユリ。


まぁ、正直に言うと味には不満があるが……。

しかし、俺にはこれしか打てる手立てがないのだ。


先日、ユリと特訓をし始めるようになってから俺の時間は大幅に減り、今では睡眠時間が三時間を切るのがザラではなくなってしまっていた。

そのため、苦肉の策として用意したのがこの栄養食作戦である。


家事の中でも特に、炊事と洗濯は時間を食う。

なので食事を全部栄養食にすることで炊事の時間をカットにしにいこうというものだ。


食べ始めた当初は、この無味無臭の独特な味わいに参っていたが、段々とこの味わいにも慣れてきて……。

今ではこうして眉ひとつ動かさずに食べることができるようになった。

今の状態ならば一生は無理でも10年ぐらいは持たせられるだろう、と思えるぐらいに。


ま、と言ってももうすぐ試験の期間に入るのでユリとの特訓ももうすぐ終わりを迎えるだろう。

問題はどうやって7位に入らないか、ということだが……。

まぁ、それも追々考えていくことにしよう。

そもそもの話、俺とユリが7位まで行けるかどうかも怪しいしな……。


なんて、そんなことを考えている急に目の前で良い匂いが漂ってきた。

これは……。


「相変わらず良い匂いだな、ユリの弁当は……」


「えへへっ……そう、かなぁ………?」


「ああ、凄い美味そうだ」


「えっ、えっ………で、でもっ………わ、わたしなんて、ぜんぜんっ………」


おお!今、一番可愛い『えへへっ』を聞いた気がするッ!

今までは何だかんだ言って病んでるときしかその言葉を聞いたことなかったからな……。


それくらいに、ユリのテレ顏は可愛かった。



……だからだろうか?

俺はこの後、調子に乗った発言をしてしまった。


「いやいや、そんな謙遜することないって!ユリは可愛いし、異能も強いし、それにご飯も作れる!いやー、俺もこんな娘に毎食作ってもらいたいなぁ」


「………ほ、ほんとう?」


「うんうん、ほんとほんと」


「じゃあ………作ろっか?」


「……へ?」


そこで始めて、俺はユリの顔を見た。


「作ろっか………毎食、あさ、ひる、ばん………毎日、毎日………」


「えっ、あっ、えっと………」


黒い、闇を思わせる眼。

その目は俺以外の景色をまったく視界に入れていなかった。

ただ、俺だけを吸い込もうと陰鬱に………粘りつくような視線で以って俺を見据える。


「でも………そうなる、と毎日、学校で渡してたら………あさとよるが食べられない、ね……?」


「そ、そうだな……」


俺が相槌を打つと、ユリは会話に一呼吸おいた。


と言っても、ユリが何を言う気なのか、俺はもうとっくに察していた。


「だから………ね?しのくん、のうちに、お邪魔しようと、思うんだけ、ど………どうかな?だめ、かな?」


「え、えっ、とそのあの……」


「ーーーねぇちゃんとこっちみて?」


「ひうっ……」


目があんまりにも怖いものだから、自然と目を逸らしていると、俺の顔を掴んで無理やり目を合わせる。


ユリの目は相変わらずドロドロと濁っていて、男だというのに俺は思わず情けない声を上げる。


「ねえどうする?わたしはべつに強制しているわけじゃないけどでもなんで部屋の中に入れたくないのか気になる、気になるなぁ?なんて思ったりもするんだけどねぇ、どうするわたしを家に入れる?」



「ーーーそれとも無理やり入って良いの?」


「…………」


こ、怖すぎだろ〜〜〜ッ!この女!

やべえよ俺、こんなヤバイやつに会ったことねえよ!

なんでこんな奴に目つけられてんの、俺!?

過去の俺は一体何をやらかしたんだよ!


と、そう叫びたかったものの顎をがっちりと固定されていて思うように口が回らない。


その結果……。


「ふぁ、ふぁい……よ、喜んで、お招きさせていただきますっ」


「うん、ありがと……っ」


と、こんな情けない返事しか返せなかった。





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