霧の声
マイが寝ている間に何も問題はなく、
今度は交代して俺が休む番になった。
「ゆっくりお休みください…言われた通り、
何かあればすぐ起こしますが、いいんですね?」
「ああ…何かあったらすぐ言うんだよ?」
テントに入り、剣を寝具の側に置き、俺は横になる。
「今日は色々大変だった…黙って出て
旅に行っちゃったこと、父さん達怒ってるかな」
そう考え事をしているうちに
いつの間にか俺は意識を落とした
――――――――――――――――――――――――
「…ス……ジー…ス………ジーニス…………」
何者かに呼ばれ、俺は目を覚ます。
「ん…んん…?なんだ??ここは…」
気が付けば真っ白な何もない空間にいた。
「ジーニス、ようやく目覚めたか」
その声に俺は驚き周りを見渡すが誰もいない
「ここだジーニス」
白い空間の中、どこからか来た大量の霧が
何かに…いや人の形になっていく。
「あなたは…誰なんですか?」
「お前に魔の手が迫っている」
「あ…あの…?」
「まだ全てを教える時ではない。
自分を、自分の原初を信じろ」
「俺の原初…」
「また会おう。そしてその時は…」
「えっ!?ちょっと待ってください!!!」
霧がどこかへと消えていき
同時に俺は意識を落としていく…
「待っ…て………」
―――――――――――――――――――――――
「ジーニスさん!ジーニスさんっ!!」
俺はその慌てたような声に急いで飛び起きた。
どうやらあの白い空間は夢だったようだ。
「なっ!なに!?あぁ…マイか…」
「ジーニスさん!大変なんです!
あそこの森が燃えているんです!!」
「!!?」
そうしてマイが指差す方へと目を向けると
森が激しく燃えている部分がある。
ここから近くで燃えており、すぐ行ける距離だ。
もしかしてあそこにノイタークの里と同じような
迫害されて潜んで生きている人たちがいるかも…
そして俺たちの里と同じような目に遭っている
可能性だって無いわけじゃない…!!
こうしちゃいられない!!
「マイ!!行くぞ!!!舌を噛むなよ!!」
そうして魔法のテントを一瞬で畳み、曲剣を
腰に差し、マイをお姫様抱っこで勢いよく担ぐ。
「えっ…ちょっとジーニスさ…」
「ごめん!!あそこに急いで行かなきゃ!!」
俺は最大限の力を振り絞って走り始める。