マイ
「あの…盗賊に襲われている私を助けてくださり
ありがとう…ございました」
目を覚ました女の子が俺に礼を言ってくる。
女の子が起きる頃にはもう夜になっていた
「あぁ、そんな。いいよ。困ってる人を
助けるのは誰だってそうするだろ?
俺は…天才…だし。普通の人よりも人一倍
人のためになるよう頑張らなきゃだし」
「は、はぁ…」
「君の名前はなんて言うのかな?」
「私の名は…マイ…マイ・トーンと言います」
「マイか、いい名だね」
彼女はマイ・トーンというらしい。
銀色の髪の毛に翡翠色の目。
可愛らしいまさに女の子って感じの顔だ。
目や鼻ははっきりしていて可憐である。
黒のニーハイに黒のショートパンツ、
貴族らしい白のシャツを着ているが、
盗賊に襲われたせいかボロボロだ。
見たところ貴族の出で、俺と同い年くらいかな?
「マイ。君のスキルはどんなものなの?」
「え、えぇ〜と…言わなきゃダメですか?」
「いや、ごめん失礼だったね。なんだったら
代わりに俺のスキルを教えてあげようか」
「えぇ…」
「俺のスキルは『心の干渉』。
思い込むことでそれが現実に干渉し
歴史を作り変えてしまうものなんだ」
「それは…ものすごいスキルですね…
盗賊達も相手にならないような
戦い方をしていましたし…
私なんて…戦うことすら出来ない…」
「…君のスキル、教えてくれないかな」
「は、はい…私のスキルの名は『信じる者』。
名前を見るに、何かを信じれば力が発動するはず…
ですが私は未だに使いこなせていないのです…
私は弱い者とずっと言われてましたので…」
「すごそうなスキルじゃないか?」
「そうなのでしょうか…?」
俺と同じようなスキルなんだろうか?
「ふむ…マイ、君の出身地はどこなんだい?」
「イマジーネです。…でもとても弱いので
トーン家の恥や汚点と言われていますが…」
なんか父さん達の境遇にも少し似てる。
なおさら放っておけないな、この子。
「君はこんな所で何をしていたんだ?」
「ここから東にある魔法都市ペイトゥーン。
そこに住む貴族に会いに行こうとしてました」
「なんのために?」
「えぇと…お見合い…です…」
マイは嫌そうな顔をしながらそう言った
「お見合い!?そんな若いのに!?」
「えぇ…貴族は16歳を過ぎれば結婚相手を
見つけなきゃいけないんです…長女や長男
以外は、他国との繋がりを強めるために」
なんとも可哀想な運命なんだろう…
「んー、馬車も壊れてしまったし、そうだ。
俺と一緒にイマジーネへ行かないか?
俺も調べたいことがあるんだ。俺の力で
マイを守ることも出来るし、どうだい?」
「えぇ…ええ!ぜひお願いします!
私一人ではイマジーネにたどり着くなんて
決して出来ないでしょうから…」
「よし決まりだ!イマジーネまでは結構遠いし
たびたび村にでも寄りながら旅をしよう。
あ、そうだ。テント持ってるんだった」
俺はカバンから携帯型の魔法のテントを出す。
家にあったものだ。ある意匠が作ったもので
軽くコンパクトに畳めるのに、
広げた時の大きさは結構ある。
二人分くらいのスペースはある。だけども…
「そうだな…交代で寝ようか。
マイは先に寝ていいよ?あんな事があった後だし…
そしてマイが起きて交代したとしても
何か異変が起きたら遠慮なく起こしてくれ」
「いいんですか…?先に寝るだけでなく、
遠慮なく起こしてくれだなんて…」
「いいよいいよ!ささっ!ゆっくり休みな」
「あ、ありがとうございます」
そうしてマイはテントの中に入り
しばらくするとテントから寝息が聞こえてきた。
さて、これからイマジーネへ行って
どうしようかな?まずはマイを家へ送り届けるか
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「うぅ…ぅ…!!この体も…そろそろ限界か…」
独り言を呟く者がいる。
「ようやく…!見つけたぞ…!!」
あるものをを見て、その者は不敵に笑う
「次こそは…!!必ず息の根を!!!」
そう言うと、その者は光り輝き、
四つの光をどこかへ飛ばした。
原初の時代、神と対峙した時に
勇者が見せた魔法と似ている。
「ぐっ…うぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」
その者は先程よりも輝く光を飛ばした瞬間、
その場に体を残して意識を手放してしまった。