表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/90

覚悟

火葬が終わった後、俺たちは

みんなの遺灰を集めて骨壷に入れる。


墓穴を俺たちが掘り、スーマさんが魔法を使って

墓石を作り上げ、文字を掘っていく。


永遠のように感じる時間だが、

何にでも終わりはくるもの。


最後の一人の墓を掘っていると

ある光景が俺の脳裏をよぎった。






――――――――――――――――――――――――






思い出すのは誕生日会の終わり。


(う〜ん…こんな平和な里じゃあ

天才の俺の才能は持て余しちまうな。

あ〜あ…なんか面白い事起きればいいのに)


そして占ってもらった日…


(自分の思う通りに歴史を作る?)


ベラキサムに会った後…


早くスキル、試してみたいなぁ…

イマジーネの兵と戦って、二人を貴族に戻したいな!






――――――――――――――――――――――――






そんな…そんなことって…!!!!


「あぁ…あああ…!!」


ジーアベルはジーニスの嘆きに気付く。


「ジーニス?」


俺が…退屈で平和な日が終わらないかと…


「そんな…俺が…???」


面白い事が起きればいいのにって…!!

兵士と戦って両親を幸せにしたいって

思っただけで…こんなことになるなんて…!!


「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!!あああああ!!!!」


「どうした!?ジーニス!!?」


「そんなぁ………そんなぁぁああああ!!」


「おい、しっかりしろ!!ジーニス!!!!」


俺は意識を暗闇に落とした。






――――――――――――――――――――――――






ショックで気絶してしまったようだ…


今は深夜のようだ。父さんも母さんも

ベッドにもたれかかるように寝ている。

俺を運んだ後、ずっと看ていてくれていたみたいだ。


「だけど…もうここにはいられない…」


俺は二人を起こさないようにベッドから出て、

里から出ていく準備を始める。


工房へ行き、一振りの曲剣を握る。

なんの変哲もない剣だ。唯一の長所といえば、

敵を切りやすいように、刀身を曲げた剣だ。


父さんが少年時代に考えたものらしい。


鉄の曲剣を…父さんと俺が

二人で作った大事なお守りを…

俺は腰に差して覚悟を決める。


「行くのか…?ジーニス」


驚いてバッと振り向くと、

スーマさんが工房の扉にもたれかかっていた。


「はい…真相に気付いたんです…」


「私も、お前が考えていた事がわかった。

里を囲っていた私の魔法は、スキルの派生だ。

その魔法は里を隠蔽する効果を持っていた」


「…」


「スキルから派生した魔法は、

純粋なスキルに比べると打ち消される」


スーマは顎に指を添わせ、考える。


「イマジーネ兵にバレたということは…

純粋なスキルの力が働いたということだ」


「はい…全部、俺のせいなんです…

俺が父さん母さん、そしてスーマさんと

一緒にいるとまた悲劇に巻き込んでしまう…」


「…お前がそう思い込むと、そうなるんだろうな」


「どういう意味ですか?」


「お前のスキルの効果がそういうものだ。

スキルの名は…『心の干渉』。お前が思うほど、

現実の世界に干渉を引き起こすものだ」


「俺は出て行きます…迷惑はかけられない」


「そう思い込めば、迷惑はかかるだろうな?」


「じゃあどうしろって言うんですか!?

こんな事があった今じゃあ…幸せになれるような

思い込みが出来るほど、腐ってませんよ!!」


「そうか…」


自分の掌を見つめる。


「俺はまだ未熟なんです…その未熟さが

どんな悪影響を及ぼすのか、わからない…」


「ならば自分を見つめる旅をしてくることだ。

お前の、ジーニスの、原初を思い出すんだな」


「原初…?」


「そう、原初だ。お前の口癖は?」


「天才…」


「それを追い求めてこい。自分の原初を見つけ、

その旅を終わらせた時、また戻ってくるがいい」


「俺が…ノイタークに戻るなんて…」


迷う。こんな俺なんかが、戻ってきてもいいのか…?


「心配するな。その時になれば、大丈夫さ。

安心して旅に行くがよい。お前の両親は必ず守る」


そう言うとスーマさんは俺の頭を

胸元に寄せ、包み、頭を撫でてくれる。


「これから大変な旅になるだろう。

お前は時に絶望するかも知れない。

そんな時は思い出すんだ…自分が天才だと」


「ス、スーマさん…やめてください」


「ん?どうした?」


「興奮しちゃうじゃないですか」


「ふふっ、馬鹿者め。」


ポカッ…


スーマさんは俺を殴る。

けど、いつもみたいに鋭い痛みじゃなく、

軽く触れるような弱々しい殴りかただった。


「…どうしたんですか?」


「もうこのやり取りは今日でしばらくお預けだ。

さあ、もう行きなさい。自分探しの旅へ」


スーマさんは涙声になりながら、

俺に顔を向けないようにしている。


「ありがとうございます。父さん達のこと頼みます。

では…また会う日まで…お元気で…!!」


俺は初めて、里の外へと足を運んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ