表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
87/124

第83話 軽 重 〜命より軽いもの、命より重いもの〜

(・・・青い瞳の女性。執事長が言っていた魔法を他人に与えることができる能力を持つ人物はこの女性か。


いきなり隊長(リーダー)が登場とは、かなりの自信があるのか、戦術をわかっていないのか・・・。


反逆者達(トレーターズ)・・・。俺を襲ってきた奴もその一員か。


そして・・・あそこに見える、あの車両。

俺の記憶が正しければ・・・いや、見間違えなものか。


見間違えるはずがない。BMPT-3(テルミナトル)


ロシアの最新型装甲戦闘車両。

性能についてはまだ未確認な点が多いが・・・見てわかるのは、あのプレートだな。側面についているプレートはERA(爆発反応装甲)だ。ミサイルが直撃した瞬間にプレート自体が爆発して、装甲板を貫徹させないようにするもの。高コストな装甲だが・・・基本的にはどんなミサイル兵器でも無力化できる。金より命のほうが重い。コストをかけて有能な操縦手や砲手が死なないなら、金をかけるべきだ。

こいつへの対処法は普通に破壊するなら2発以上の対戦車ミサイルが必要になる。ERAに当てないようにするなら、プレートが張られていない真下か真上から一撃を当てるか・・・どちらにせよ、今の俺が実行できる手段ではない。




・・・杉村といい、こいつらといい、異世界に強力な兵器を持ち込むんで・・・いや、俺も人のことは言えないな。






・・・待て。

・・・サリアンと共にって言ってたな・・・。)




若干数秒の停止。

脳内で言葉の意味を全力で思考。

単純に考えれば『サリアンとトレーターズは共闘している』である。

大方、サリアンに庄野哲也の暗殺を依頼された汚れ仕事専門のチームだろう。そこまでは誰もが想像つく。






庄野の思考はその先を見る。








そして発見する。

断片的な情報だけでは決してたどり着かない、()()()()()()





(・・・()()()()()?いつから・・・?

・・・がわからない。サクラ姫は大丈夫か・・・?)





思考が終了し、現実世界に引き戻される。





「・・・お前ら、サリアンに」




「はっ!これから死に行くものに教える義理は無いねぇ!

そこの女とあの世で乳繰り合いながら考えなぁ!」




庄野の言葉は遮られ、戦闘車の機関銃が庄野に向けられる。

若干数秒の停止があだとなり、咄嗟に動いたとしても間に合わない。





(・・・くそっ。

数発食らってでも、生き延びなければ・・・!)






「てつや君っ!」




銃声。

それと同時にカスミの叫び声が庄野の鼓膜に響く。



カスミが庄野に覆いかぶさり、二人は地面に倒れる。

視界は覆いかぶさるカスミの顔以外見えなくなる。






「ぐふっ・・・カスミ・・・さん?」

「大丈夫?・・・顔の傷と、受けた傷、治しますね?」




左から飛びつかれたため、庄野の右腕は地面と背中に挟まって動かせない。

義手の左腕でカスミの背中に触れる。






(・・・()()()()()

せめて、生身の腕で触らないと・・・。)




「俺は後でいいっ!それよりも、カスミさんは、大丈夫なんですか?」

「・・・大丈夫だよ、てつや君・・・。




・・・ごほっ・・・。」


















カスミの口からきれいな朱色の液体が流れる。




「・・・カスミさんっ・・・カスミさん!」




「だい・・・じょ・・・ぶ。


・・・()()()()()()()()・・・。」















倒れたまま、カスミは動かなくなった。







(嘘だろ・・・?カスミさん・・・?)







「邪魔なほうが先に死んじまったかい。結構、結構。あんただけに用があったからねぇ。話は出来るかい?」

「・・・用だと?」




「はっ!流石だねぇ。大抵の異界人は、目の前で人が死んじまったら会話なんてまともにできないんだけどねぇ・・・。

用というものでもないさ・・・あんたには、選択をしてもらう。





一つ目は、ここで私と殺り合う。

まぁ、武器の無いあんたがこれを選ぶとは思わないけどねぇ。一応、選択肢は与えてやるよ。



二つ目は、私から逃げる。

・・・あんたが本気で逃げられると思ってるんなら、ね。



三つ目は、私についてくる。

・・・ホントは、あんたをここでぶっ殺してしまいたいんだけれどもね。



さぁ、選ばせてやるよ。」








(・・・何が選択させてやる、だ。選択の余地がねぇよ。



一つ目も二つ目も実行の可能度はゼロ。

コピードールがいない状態でまともに戦えるわけがない。戦うにしても、逃げるにしても、この距離からスタートだとさっきみたいなゴリ押しの回避もできない。却下だ。



三つ目の選択肢だが・・・本意じゃなさそうだな。何か隠している様子だった。

・・・俺を消すことはサリアンの意思だろう。そうじゃなければ、一年も森に逃亡生活をしなくて済んだんだからな。

俺を連れていく意味・・・考えられる要素は多々あるが、連れていかれる場所によるだろう。

憶測でものを測ってもしょうがない。とりあえず、従うしかないか。)



「わかった。三つ目に従おう。・・・ただ、この子の埋葬だけでも、させてもらえないか?」

「断る。この娘が死んだら埋めろって喋ったのかい。死人に口なし、だよ。


ほら、ついてきな。あれに乗るよ。」


シエラが指さした方向には、馬車が用意されていた。




(・・・用意がいいことだ。)





立ち上がる。


下を向く。




庄野の脳裏には、元気に子供たちと走り回りながら、洗濯物を取り込む彼女の光景が流れる。




庄野の目には、その女性が背中から血を流して倒れている姿が映る。




(・・・カスミ、さん・・・。

俺なんか、庇わなくてよかった・・・。

俺の命より、自分の命を大切にしてほしかった・・・。)




前を向く。

しっかりと前を向いて歩くが、その足は重かった。













馬車の中は静かだった。馬が地面を蹴る音、車輪が地面を削る音以外は何もしなかった。


かえってそれが、恐ろしかった。

シエラにとっては。



(・・・ずいぶんと、おとなしくついてくるんだねぇ。

てっきり、ついてくるふりをして逃げだすかと思ったんだけど・・・。



・・・戦いになったらどうしようかと思ったけど、賢明な男でよかったよ。

まさか、あんなにBB弾を使うと思ってなかったからね…。


血骨弾ブラッド・ボーン・バレット・・・通称、BB(Blood-Bone)弾。

私に武器はいらない。私に弾丸はいらない。私の血、私の骨を固めて別の物質として再構築し、それを武器として扱う。それを弾丸として発射する。体のほとんどは機械化させているから、体内のカルシウムはほとんど武器として使っている。私自身が武器工場。

だから、チューブを抜いた武器は骨になって消える。使用した血弾は液体に戻る。


・・・今回は血弾を使いすぎたからねぇ・・・こっちもフラフラさ。

まぁ、連れてきたBMPT-3(テルミナトル)の乗組員たちが束になってこの男にかかれば、勝てるだろうけどさ・・・反撃をうけて兵を削られたくはないからね。

狙撃手に突っ込んでくる、命を軽視した行動をとるような男・・・自己の防衛より敵の戦意喪失を優先するキ〇ガイ野郎・・・こんな奴が手を伸ばせば届く距離にいるってだけで、気分が悪いよ。









「・・・さぁ、ついたよ。降りな。」

(ここは・・・サリアン?)




見慣れた光景に驚く。

そこに広がっているのはいつものサリアンだった。

魔王、杉村に襲撃を受け、ひどい有様だったサリアンは約1年の間に元通りとなっていた。




「何を驚いてるんだい?」

「いや、一年前に襲撃を受けたのに、もう元通りなんだなって。」


「そりゃあ、魔法の国だからねぇ。簡単に直るさ。ほら、ついてきな。」

「・・・。」


(そんな簡単に修復されるのか?恐怖魔法を使うあの女の子に国をめちゃくちゃにされたときは、そんなに修復なんてできてなかったのに・・・。


・・・なんだろうな。この・・・違和感しかない感じは。)





庄野が連れていかれた場所は牢屋であった。



(はぁ、またここか。)




特殊鍵を開けて中に入る。

入ったらすぐにベッドに腰を掛けて、再び思考を始めた。











「あんた、何で牢屋の入り方、知ってんだい?」

「・・・あぁ、入ったことあるので。」



「・・・あんた、一応・・・この国では『英雄』とされてるんだよね?」

「さぁ、知りません。サリアンと交流を持っていたわけじゃないので。」



「そうかい…まぁ、どっちでも構わないけどね。

あたしから言えるのは一つ。








『一週間後にあんたは処刑される。』







闘技場で魔物にぶっ殺されてね。

せいぜい、最後まであがくんだね。アッハッハッハッハ・・・。」




大きな笑い声はどんどん遠ざかっていき、聞こえなくなった。


(処刑、か・・・。動けない状態で殺されるわけじゃないのか。

わざわざこんな手間のかかるような、()()()こういう形式をとるってことは、この形式に意味があるってことだ。





ということは・・・いや、これ以上考える必要はない。

これからどうなるのか・・・わかっていることは・・・



()()()()()()()()()()()になるってことだ。


まずは・・・何としても、生きてここを脱出することからだ。

命あっての物種・・・命より重いものは無いんだから。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ