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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第76話 再 会 ~久しぶりに会った女の子がちょっと女の子らしくなってるとキュンとしてしまうやつ~

「・・・彼の、容態はどうでしょうか?」

「生きている、とだけは答えられますな。アシッドスライムとの戦いで全身の皮膚が爛れてます。皮膚だけじゃなく、神経まで一部浸透している場所もありましたな。肉体は回復はしますが、機能までは保証しかねますな。

とりあえず、しばらくは安静にさせときましょう。

・・・それにしても、どうして彼はあんなところでアシッドスライムと戦ってたんですかな?」




ベッドに横たわる庄野の横で女性と老人が会話をしている。

ボロボロの状態だった庄野は何とか一命を取り留めていた。




「・・・わかりません。・・・わかりたく、ありません。」

「そうですか。・・・シスター。今日は休みなさい。昨晩、付きっきりで看ていたでしょう?彼もすぐには目を覚まさないだろうから、少しでも寝なさいな。」




こくりと頷くとシスターは部屋を出た。




「・・・さてっ。」



老人は庄野の横になっているベッドの横に立ち、庄野を見下ろす。





(・・・庄野哲也。

シスターから話は聞いていましたが・・・どうやったらこんな傷を受けながらアシッドスライムと戦えるのか、不思議でなりませんな。

片腕片足が無い。武器も持っていない。対処するには他に方法が無かったとはいえ、スライムを素手で撃退をするなんて・・・この世界に生きている人間ならそんな事は絶対に思い付かないでしょうな。








・・・シスターに『ライト』の魔法を使わせて彼の位置を特定して()()()()()()()()()()が・・・そんな事をしなくとも、私の目は暗闇でも昼間ほど明るく見える。




彼とスライムの戦いはよく見えましたな。






・・・()()

それ以外に表現の仕様が無い程に恐ろしい光景でしたな。

腕を、足を、体を溶かされてながら・・・激痛が全身を走るでしょうにその猛進を止めることなく、むしろそれが拍車をかけるようにスライムを殴り続けていた。

はっきり言って・・・人間には見えませんでしたな。






これが、サリアンの()英雄・・・?


私には恐ろしい()()に見えましたな。




彼をどうするか・・・よく考えないといけませんな。)








「・・・どうしたもんですかな・・・。」




椅子に腰を掛け、ぶつぶつと独り言を発する。











「・・・迷惑になるようなら、追い出してもらって構いませんよ。」

「ひぃっ!・・・起きて、いたんですか?」




突然庄野が喋りだしたため、驚きのあまり裏返った声が出る。




「少し前にですが・・・。

おはようございます。

命を助けていただきありがとうございました。

俺の存在は皆様にご迷惑になりますのですぐに出ていきます。

ただ、片足が無いので移動が不便なので杖のようなものを貸していただけると幸いです。それを貸していただけるなら即刻出ていきます。」

「あ・・・えーっと・・・。」




老人は困惑する。




(『まだ動けないからここに置いてくれ』と言われると思っていたんですが・・・まさか、『迷惑だから出ていく』と言い出すとは思いもしませんでしたな。



でも、起きたのなら・・・視ることができますな。

・・・スキル『心眼』発動。






心眼は()()()()()()()()()()スキル。



私の目に見えないものはない。

たとえ真っ暗な夜でも見透すことができる。

たとえ人の心の中でも、目を合わせればどんな事を思ったり感じているかを視ることができる。





その真意・・・見せてもらいますかな・・・。




たとえ・・・。







・・・。












暗い・・・。

何も映らない・・・?





























『心の闇』・・・?

何ですか、この、深さは・・・全く見えない。

人が抱えるには暗すぎる。何があったら、こんな・・・。








・・・()()()()()を一人で行かせる訳にはいかないですな。)






「あの、杖みたいなものは貸してもらえますか?」

「・・・え?あぁ、そういうものは無いんですよ。」




「そうですか。最悪、木の枝でも良いんですよ。簡単に折れないものでもあれば良いんです。」

「・・・そんなものは無いですな。どれ・・・体の傷も完治していないですし・・・ゆっくり、治ってからでも良いでしょう。」





「いえいえ。ご迷惑になりますから。遅くとも明日には出ますので。」


(・・・俺は何者かに殺されそうになった。生きていることがバレたらここが襲われてしまう可能性が高い。俺のせいでこの人に危険が及ぶような事はしたくない・・・。)




「いやいや・・・そんな傷で出ていかれたら心配で夜も眠れませんな。早くても一ヶ月は休んだ方が良いでしょう。」


(何か隠している様子ですな。

しかし・・・何を隠しているのかが分からない。


それに、あれほど暗い心の闇・・・。

それを抱えている者は絶望にうちひしがれて何も出来なくなるのが普通なんですがな・・・。

心の闇を見てしまった以上、ほっとくわけにはいかないですからな。)












水掛け論のような口論に誘われたのか、誰かがドアを開ける。











「明日、出ていくんですか・・・?出ていかなくちゃいけない理由って何ですか?」



震える女性の声が二人の口論を止めた。










ドアの前にはシスターが泣きそうな顔で立っていた。




「・・・カスミさん?何で、ここに?」

「何で?何で、出ていこうとするの・・・?

折角・・・また・・・会えたのに・・・。



そんな体で・・・どこ・・・行くの・・・?





独りじゃないと・・・ダメ、なの?」





ポタン、ポタン、と涙が床にぶつかる音が響き渡る。

シスター(カスミ)を泣かせてしまった事に庄野の決意は揺らいだ。




「・・・すいません。」

「・・・ぐすっ。何で・・・何で?」



何度も「何で」と繰り返す。

その質問に庄野は答える事はなく、ただひたすらに「すいません」と謝罪を繰り返す事しか出来なかった。




「・・・ほんとうに、すいません。」




「・・・理由、言っで、ぐれないなら・・・。

・・・謝っでも・・・許しまぜん!


ちゃんと、治るまでここで・・・休んで・・・。

やくそぐ、してくだざい!」















「・・・はい。」






















(・・・俺は・・・何回女性を泣かせればいいんだ・・・。)

















庄野はシスターとその老人の住む教会に住み込む事になった。





「ここは教会なんですね。ということは、司祭様ですか?」

「今は子供が居ませんが孤児院も、平原で倒れた冒険者の診療所も兼ねております。

司祭は職名なので、呼ぶなら神父ですな。」





「そうですか。失礼しました。」

「シスターは買い物だったり、身の回りの世話をしたり、回復魔法が使えるので異界から来た方の治療のためサリアンに行ってます。用があるなら前の日に頼むと良いですな。

今日はその辺にいますので、呼べば来ますから。

呼ぶのは私でも構いませんが、期待しないでくださいな。

では・・・。」





淡々と説明を終えると、神父は部屋を出ていった。




(・・・押し切られてここに住み込む事になってしまった。

カエデ女王に怒られなければ良いけど・・・。)






しばらくするとドアのノックが聞こえた。




「・・・入ります。」

「・・・。」




シスターが部屋に入る。いつもの修道服ではあるが、身につけている頭巾(ウィンプル)が外されており、綺麗に整っている黒髪のショートヘアーが女性らしさを引き立てる。




「調子はどうですか?」

「・・・。あ!えっと・・・まだ本調子じゃないけど、痛みは引いてきてます。」




「ホント?良かった・・・。」

「・・・。」


胸に手をあて、安堵の表情を浮かべる彼女に庄野は見とれてしまう。



(・・・あれ?

頭巾を外しているだけなのに、とても女性らしく見える。


カスミさんってこんなに可愛かったの?

いや、何でだろ・・・緊張してる。言葉が、上手く出せない。)





「あの、本当に大丈夫?顔が赤いですよ?」

「え?いや、ちょっと暑いんですかね?ずっと布団被ってたから・・・ハハハ。」



たいした質問でもないのに狼狽えてしまい、しどろもどろになってしまう。




「・・・てつや君。あそこにいた理由、聞いても良いですか?」

「・・・。

・・・俺が、あそこにいた理由ですよね。

俺は、サリアンに追われるようになって、1年間森で過ごしてました。それから、訳あってソーラに連れてかれて・・・(嘘をついて誤魔化すことも出来るが・・・『鑑定』で受けた怪我から推察される可能性が高い。特に、体のアザは執事長から受けた傷だ。・・・正直に言うか。)」




庄野は正直に全て答えた。

何者かがソーラの侵略をしようとしたこと。

その一味と思われる人物に馬車から落とされたこと。

そこから移動中に野生のスライムと戦闘になったこと。




「・・・そうだったんですね。・・・ごめんない。」

「いや、むしろ謝るのは俺のほう」








ベッドに座っている庄野の顔はカスミの体に包まれ、同時に言葉が遮られた。





「・・・私達に、危険が及ばないように・・・ここを離れようとしたんじゃないんですか?

だから、すぐにでもここを出たがったんじゃないんですか・・・?」

「・・・。」




無言で頷く。



「・・・そうですか。答え辛い質問なのに答えてくれて、ありがとう。

でも・・・もう、勝手に居なくならないでください。

本当に、心配したんですから。」

「・・・すいません。」










しばらくすると、外は暗くなっていた。




「では、おやすみなさい。」

「おやすみなさい。」










(・・・謝って、ばかりだった。・・・俺は・・・。)


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