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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第7.5話 慕 情 ~サクラの花が咲く~

オマケです

『姫様にはずっと笑っていて欲しい。姫様の笑顔を守るために、悲しい思いをさせないために』


「はぁ……。」

(ため息が出る。耳だけが熱くて、変な感じがする。胸の高鳴りが収まらない。……あんな事言われたの、初めてだった。

 色んな人が私を求める事があっても、政略的なものだったり、魔法が目当てだったり、私利私欲ばっかりだった。でも……あの人の言葉はそういう人達の言葉とは違って、私を思う言葉のように聞こえた。あの人がどういう思いで言ったのかは分からないけど……考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。どうして……?)

 闘技場の惨劇から1週間が経ち、西の都ではいつもの日常が戻っていた。気持ちが落ち着かない日々が続くサクラは、部屋の窓から何となく外を眺めていた。

『ななよん、どうした?』

『キュッ!』

『あぁ、俺の皮手が落ちてたか。ありがとな。』

(あ、てつや様……。『ななよん』……変な名前だな。何か由来があるのかな?それとも、てつや様の世界にいる使い魔にはよくつける名前なのかな?……今度、元いた世界の話も聞いてみたいな。どんな食べ物があって、どんな生活をしているのか。

 ……全く、想像つかないな。……魔法の無い世界、魔法で人が救えない世界、魔法で優劣が決まらない世界。私も、その世界だったら、普通の女の子として扱われるのかな……それとも、あんまり変わんないのかな……。

 もっと、てつや様とお話して、色んな事が知りたい。どうして、あの日からてつや様の事ばっかりが頭の中に浮かぶのかな……?何で、こんなに胸がドキドキするのかな……?何で……涙が出そうになるのかな?……何で……。)

「はぁ……。」

(私……てつや様のこと……。)

 彼女はそれから先の事を考えないようにした。

 庄野がふと目線をあげると、サクラと目が合う。庄野は軽く会釈をする。それに対しサクラは軽く手を振り返した。

(……あの人は異界人。元の世界には家族や大切な人がいるはずだよね。私のこの気持ちはあの人にも、誰にも伝える必要はない。心の奥底、決して開かれることのない金庫の中にしまっておこう。)

 サクラは机の横に立て掛けてある杖を見つめながら、ゆっくりと立ち上がった。

(私はサリアン王の三女、西の都をあずかるもの。サリアン王国の聖魔導師なんだ。私の魔法は傷を癒し、命を救う。苦しむ民を助けるのが私の使命。父上から承った大切な使命。……果たさなきゃいけない。あの人も、私と同じように父上から頂いた使命のもとここにいるのだから。)

 コンコンと部屋の扉をノックする音がする。

「入っても大丈夫ですかね?」

「アルフ、どうぞ。」

「お茶を持ってきましたね。どうぞ。……おや、庄野さんは今日もコピードールと戯れてるね。……姫様が窓際にいるなんて珍しいね。何か、悩み事かね?」

「ありがとう。えっと、ね……彼も帰りを待つ家族や大切な人がいるのかなって。」

「ん?姫様、聞いてないのね。彼の家族はね、小さい頃に、その……事故にあって……両親はもう、亡くなってるらしいね。」

「……そうだったの。」

「だから、帰りたいかって聞いたときね、微妙な返事してたね。『帰れる方法は知りたいけど今すぐ帰りたいかって言われると違う』って。」

「……そっか。」

「仲間に言葉を伝える方法が欲しいって言ってたね。手紙とかなんでも良いって。それで、『今は守らなくちゃいけない人がいる、その人の側にいないと』って伝えたいんだってね。一体誰の事かねぇ?フェッヘッヘッヘ。」

「えっ!えっと……ちょっと、アルフ!待ちなさいッ!」

 赤面したサクラの顔を見てニヤニヤしながら老兵は部屋を出ていった。

(ど、どういう意味なの?!でも、本人には聞けないし……気になって眠れないよ……。)

彼女の名はサクラ。

西の都随一の聖魔導師。

回復、治癒の魔法を得意とする『癒しの姫』の異名を持つ。

彼女の魔法が庄野を救うのはまた別の話。

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