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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第74話 運と縁 ~ここにいる理由~

「小隊長ぉ。小隊長は下戸なのに俺らが『飲み行きましょ!』って誘ったら来てくれますよね。何でなんすか?


・・・はぁ、なるほど。『運』と『縁』ですか。深いっすねぇ。俺は頭良くないから小隊長の言ってることが難しいっすけど、要するに、あれですよね!




俺らと飲むの、楽しいからっすよね!




・・・あれ、違う?

あっはっはっはっ!

・・・。




・・・。」










(・・・何でかな。




今になって、あの時の言葉を思い出す。



色んな事があって、



色んな人に出会って、






何度も死にそうになって・・・今、ここで生きている。





・・・俺は、一人じゃ何も出来ない。

沢山の人達が俺を救ってくれた。沢山の()が俺を救ったんだ。




コピードール(こいつら)に会えなかったら、闘技場でドラゴン使いにも、ヌークにも、沢山の戦ってきたやつらに勝つことは出来なかった。


負けて・・・死んでいた。




アルフさんに会えなかったら防御壁を使えなかった。アパッチともまともに戦えなかった。マジックゴーレムと戦ったときに助けてもらえなかった。

それに、防御魔法を教わってなければ、絶対王声で動けない時にナイフが喉を貫いて・・・死んでいた。




デル、ボラブ、リーに会えなかったら・・・アパッチを退けなかった。リーが気まぐれで追尾槍(シーカー・ランス)を触らせてくれたから、撃墜できた。

ボラブが城内で魔王軍を抑えてくれて・・・被害は多くて酷い結果になったが、デルが無策に天馬を出した事でアパッチのAAMを複製する機会を得ることが出来た。

3人との縁が無ければ・・・死んでいたんだ。




そして、カエデ女王に出会って・・・災害派遣のお礼として『魔法解除(ディスペル)』を教えてもらえた。

それがなければ・・・執事長の絶対王声を解除できずに、俺は死んでいた。





執事長にしてもそうだ。『絶対王声』を持っている執事長だっただから、リーを排除する口実として俺を捜索することで半永久的に国から遠ざけられると判断した結果・・・俺はソーラで生きている。




みんなそうだ。

今まで戦ってきた敵も、共闘してきた仲間も、何もかも・・・今の俺がここにいるために必要不可欠な要素なんだ。









・・・サクラ姫・・・特に、貴女に会えたことは本当に感謝しています。

『治癒』に何回助けられただろうか。



感謝しても足りないくらいです。






本当に・・・。





そういう人との出会いってのは、結局のところ()だ。

会いたい人は選べない。

その人に会える確率はとてつもなく低いと言われている。



そうやって考えると・・・俺が今、生きている理由は・・・運と、縁なんだ。)















ゆっくりと目を開ける。



「・・・起きるか。」



庄野は体を起こした。




(あれから2ヶ月。随分と体は鈍ったが全身の傷は回復した。

・・・どうやら、ガラ王とやり合った時の怪我も十分に治って無かったらしく、そこも含めて治療をしてくれたようだ。)




ベッドから下りようとすると同時に医者がドアを開ける。



「おはようございます。体の調子はどうですか?」

「おはようございます。体は重いですが痛むところは無いです。よっと・・・ベッドから下りて動けるようにはなりましたが、まだ本調子じゃないですね。」




「それは良かったです。あと一月も休めば調子も良くなりますよ。」

「休む必要は無いわ。動けるようになったのなら回収に行ってもらわないと。」




医者の後ろからカエデの声が聞こえた。




「カエデ女王。おはようございます。」

「おはよ。動けるならガントレットとグリーブの回収を頼むわね。馬車はこっちで用意してるから移動の心配はしなくていいわ。今から1時間後に城門に行けば馬車が待ってるから。

あと、コピードールは借りるわよ?『複製』が無いと街の復興が辛いのよ。」

「医師としては彼を休ませたいんですが・・・王女がおっしゃるなら致し方ないですね。

庄野さん、無理は禁物です。痛み、疲労を感じたら戻ってきてください。」



「わかりました。準備出来次第すぐに行動します。」











朝食を済ませ、ソーラの兵から借りた軍服を着る。



(海沿いの国だからか、青が基調なのか。材質は防大で使っている作業服に似ている。形状は西洋の軍服って感じか。制服みたいなデザインなのに動きやすいな。

迷彩服が使えなくなったからどうしようと思ったが、戦闘服の機能としては十分だ。



・・・気がつけば迷彩服はボロボロになっていた。替えの迷彩服を作ろうと思ってコピードールに複製をさせてみたが・・・失敗した。

ボロボロの迷彩服が複製された。



どうやら複製は『最後に触った状態のもの』を複製するようだ。


新品の頃の迷彩服は複製出来なかった。

せめて修理が出来れば良かったんだが、魔法が盛んな世界に営繕班のような部署も無ければ衣類の修理もしないだろう。

もしかしたら、裁縫って文化が無いかもしれない・・・。




・・・それにしても、カエデ女王は何でそこまでガントレットとグリーブに拘るんだろうか?

あれには俺が思っている以上の価値か何かがあるのだろうか?いくら貴重な魔石を使っているとはいえ、そんなに大切なのか・・・。まぁ、回収すればわかるか。)







「・・・よし、行くか。」



松葉杖をつき、城門に向かって歩いていく。

その途中、街のパークだった部分はほとんど壊されてそこには新しく鍛冶屋や道具屋の看板を掲げた店が並び、その周辺を兵隊達がゾロゾロと武器を大量に運んでいる。



(・・・現実にこうやって『軍備化される時』を間近で見ると・・・日本を平和だと勘違いしている人間に見せてやりたいな。

これが『国を守る』って事だって。)





庄野の言う、『国を守る』とは何なのか。様々な意見はあるだろうが、『奪われないようにすること』だと考えている。


そもそも、国を守るためには軍隊が必要不可欠な存在である。

我々の生きている今の世界での軍隊というのは(諸説あるが)、戦争が起きないようにする抑止としての力、いわば保険として、そして、外交を優位にすすめるための後ろ楯として存在していると考えられている。


自衛隊もそれに含むのだが、『軍隊を持っている』=『戦争を助長する』と考えてるお気楽な連中がいる。彼らは自衛隊に『戦争反対!』と石を投げつける事を暴力ではなく正当な行為と信じている(私も現役の時は石を投げつけられた事がある。幸運にも顔から血が出ただけで済んだ。家の郵便受けに『人殺しは死ね。自衛隊は消えろ。』とかかれた紙が何十枚、血塗れの刃物が何個もも入っていたこともあった)。


そんな連中には『全てを奪われる』という事の悲惨さが一生理解できないだろう。

そういうものである。








国を守るとは何なのか。力(軍隊)を持つことである。


力(軍隊)を持つということは何なのか。奪われないようにすることである。




では、奪う行為とは何なのか。 戦争である。




戦争をしないためにはどうしたらいいか。

お互いが奪われないよう均衡した力を持てば戦争は起きない。

軍隊を持つことはお互いが奪い合いをしないという戦争をしないための存在なのだ。




「争いが起きたら逃げればいい」「争いは言葉で解決すべき」と平和の使者を語る人物は言う。

では、その争いの中で「逃げるから待ってくれ」「これは盗らないでくれ」なんて言葉を発してわざわざ待つだろうか。

争いを始めようとしている人間は「これから奪いに行きます」と宣誓するだろうか。



戦争は全てを奪う。

自由を、肉体を、色欲を、過去を、そして命を。



戦争は何の前触れもなく奪う。

そして、奪われるのは一瞬である。



だからこそ、その戦争が起きないように、たとえ起きてしまったとしても奪われないように、常に用意をする必要がある。

国を守るというのは常日頃から準備が必要なのだ。



「でも、軍隊を持ってるとその力を使おうとして戦争が起きるのでは?」

という意見を聞くことがある。

それはその力を使おうとする人間が悪い。包丁は人を殺せるから危険なので使うな、車は人を引き殺すから乗るな、という理論が当たり前になっている異世界で生きていきたいなら私からは何も言わない。


こればかりは理解できないものには一緒理解できない。

()()()()()()()()()















庄野は軍備化される街並みをゆっくりと歩み、城門へと到着した。





「庄野さん?こっちだ。後ろに乗りな。」

「ありがとうございます。」




親切そうな30代後半位の男性につれられ、庄野は馬車の後ろに乗った。



(初めての馬車だが、乗り心地はそんなに悪くないな。73式大型トラック(3トン半)73式中型トラック(1トン半)に比べたら格段に良いものだ。あれは乗り心地も酷いし、何より尻が痛くなるからな・・・。)







しばらくすると、馬車は何もない平原のど真ん中で停止した。

馬車を操る男性は馬車をぐるっと回って荷台の後ろの方から庄野に話しかけてきた。



「着きました。あなたを運ぶのはここまでです。」




「・・・まだ、西の都どころか、サリアンも見えないんですが。」

「『お前を運ぶのはここまで』っつったんだよ!降りろ! 」



形相が一気に変わる。

庄野は胸ぐらを掴まれ、そのまま地面に引き落とされる。




「ぐふッ!・・・何、を・・・?」

「ケッ。たとえカエデ女王の命令でも、糞異界人を運ぶなんてするくらいなら死んだ方がマシだぜ。カッカッカッ・・・。」



男は庄野を地面に捨て、再び馬車に乗る。



「ま、待て・・・。」

「待てって言われて待つか!バァーカ!!

ここは平原のど真ん中だ!こんなところ、好き好んで来ねぇ!

誰も助けに来るわけねぇよ!

死ね!そのまま誰にも見つけられることなく、のたれ死ね!


『この世界を肯定する異界人には死を!』


それが()()のやり方だ!カッカッカァ!!・・・。」





乾いた叫び声と共に馬車は消えていった。





(・・・松葉杖は、馬車の中だ。

片足で歩くのは無理だ、這って行った方が体力的には問題無い。この地点なら、ソーラより西の都の方が近い。何とかして行くしかないな。


この状況は最悪だが・・・あの男と出会えた事は()()()()。人との出会いには恵まれているようだ。



『俺達』って事は、あいつ以外にも仲間がいるって事か。もしかすると・・・執事長の仲間の可能性が高い。

『好き好んでこんなところに来ない』なら、他の仲間が付近に待機している公算も低い。時間がかかってもいいから安全に西の都を目指せるな。


・・・ここまで情報がガバガバなやつを使うとはな・・・。



()()()()()()()()()()()()。)




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