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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第68話 捜 索 ~脱柵したやつを連れ戻すってホントに大変よ~

庄野哲也が失踪して2週間が経った。






いずれ帰ってくる。

森で生活するにも食料が底をつきて出てくるだろう。






皆がそう思っていた。








庄野哲也が失踪して1ヶ月が経った。






そろそろ帰ってくる。

彼は知識が豊富だから食料調達の方法を知っているのだろう。

でも、森で生活をするには疲れが溜まって限界が来るだろう。






皆がそう考えていた。








庄野哲也が失踪して3ヶ月が経った。






捜索隊を撤収させた。

兵がいるからそれに恐れて帰ってこないのだろう。これで帰ってくる。





皆がそう信じていた。








庄野哲也が失踪して半年が経った。






彼はまだ帰ってこなかった。






皆が心配した。




















庄野哲也が失踪して1年が経過した。











『庄野哲也は死んだ』という噂が流れ、彼を探そうとしなくなった。























ある国を除いて・・・。














リーはサリアン城でデルと話していた。





「・・・なぁ、どっちの森に行ったかぐらいは分かってるんだろ?教えてくれよ。」

「これは我が国の問題だ。」




「だからよぉ、探すのを手伝うって言ってるんだ。」

「探す必要は無い。()()()()()()()()()()()()()()?」




「・・・デル。お前、言って良いことと悪いことの区別もつかなくなったのか?」

「事実を述べただけだ。

傷付き今にも死に絶えると思われていた魔王に治癒魔法を使って、逃亡をさせた。

・・・我々に対する背信行為だ。許される行為ではないっ!」




「それはサクラ姫(姫ちゃん)を助けるためにしょうがなかったからだろ?」

「だったら・・・サクラを見捨てて魔王を殺せば良かった。」




「・・・おい、それは流石によぉ・・・。」

「一人を見捨てて世界を平和に出来るならそうするべきだ。あいつはそれをしなかった。

覚悟のある男だと思ったが・・・。」




「・・・言わせてもらうけどよぉ。魔王の侵攻を止めたのは紛れもなく庄野だ。だったら、魔王の命をどうしようなんて、止められなかった俺達にどうこう言う権利は最初から無ぇんじゃねえのか?」

「・・・。」



「そもそも、庄野は今回の作戦には含まれてねぇよなぁ?なのに、逃がしたから処刑ってのはおかしな話だ。

まるで・・・ぽっと出の異界人に侵攻阻止作戦が失敗した責任を押し付けてるみてぇじゃねぇか?」

「・・・ほぅ?」




殺意を押し込めず、腰元の剣に手が掛かる。




「・・・いや、俺も言えた口じゃねぇか。

1個だけ答えろ。仮に、庄野哲也をソーラ、若しくはガラが保護した場合、サリアンはどうする?」

「・・・サリアンとしては庄野哲也をどうこうするつもりはない。敵対行動をとらないなら、何もするつもりは無い。」




「へっ。それだけわかりゃ十分だ。邪魔したな。」

「・・・。」





部屋を出ようとしたリーに細々とした声でデルが呟いた。







「・・・私は、間違った事をしたのだろうか?」




「・・・知らねぇよ。もう終わっちまった事だし、今さら過去は変えられねぇ。




酒、奢れ。

相談くらいならのってやるよ。」




デルに背を向けたまま答え、そのまま部屋を出る。






リーは城を離れ、庄野がいると思われる森の近くへと赴いた。






(・・・国を救った人間が国に追われる・・・可哀想過ぎんぜ。グレて森に1年も居たくなるわ、そりゃ。)





「さて・・・『探知』。」



()()により庄野を探す。森の中に反応はあるが、人間らしき反応は無い。



(魔法の『探知』だと見つからねぇか。勘違いしてる奴が多いが、探知は地上で使えば地上だけ、地下で使えば地下だけ、水中で使えば水中だけを確認する魔法だ。もし庄野が穴を掘って地中にいれば、見つかる事はない。


そもそも俺は魔法が苦手だ。探知の範囲もサリアン人に比べたら遥かに狭い。・・・()()()()()()。)





リーは目を瞑り、両手の平を森の方へ向ける。




「・・・スキル発動、『索敵』。」




(魔法なら俺はサリアン人に負ける。最悪、その辺のガキより魔力は低い。


・・・ただ、()()()なら誰にも負けねぇ。俺は得た経験値で魔法能力向上が少ない分、自分のスキルだけを伸ばしてんだ。

索敵は見えない音波を発してその反射した音でどんな物が存在しているかを感知するスキル。例え地中であろうと水中であろうと、形が存在して呼吸をしていれば見つけられるって寸法だ。)




船や水中に住む大型の生物が使用するソナーのような音波を森に向かって繰り出す。





(デカいのが1、2、3・・・それと、2足歩行の生き物。・・・横穴と縦に掘った穴が2ヶ所ずつ。あとは・・・、その付近に足の短いのが3匹。それと人間・・・足が無ぇな・・・当たりか。)




「よし、行くか。」





感知した場所は森の奥深く。そこへと草木を掻き分けながら進んでいく。




奥深くにいけばいくほどジャングル地帯のような木々と竹のような細長い木が不規則に並んでいる。どういう気象条件でこうなったのか説明が出来ない程にバラバラな種類の木々がそこには生えている。




(・・・流石、『異界の森』だな。木々の種類もめちゃくちゃだ。確か、この辺に横穴の反応があったんだが・・・。)





キョロキョロと辺りを探していると、後方からミサイルのような速度で火の玉がリー目掛けて飛んでくる。

それを見もせずにバック中で回避し、クルリと回転する。最高点に到達した姿勢で片手に持っている槍を空中で真下に突き刺す。

突き刺した槍の先には大きなトカゲの頭を通り抜け、そのまま地面を貫いている。




(ま、索敵を使わなくてもこれだけ近くなら後ろからでも見えてんだよな。

・・・こいつは、フレイムリザードか。本来なら火山地域に住んでる魔物なんだが・・・。木々の種類がめちゃくちゃなら、生態系もめちゃくちゃな訳だ。)





槍を抜くと同時に近くで魔物の雄叫びが響く。





(・・・でけぇのがいるな。さっき索敵で見つけた奴か。・・・あ?近くにいるのは・・・庄野か?!)





声の方へと走る。





遠くの方に5メートル近くの熊が立っている。手(前足)が4本、足も4本、目玉も4つ、耳も4つある。

その熊の目の前に庄野が座り込んでいる。




(あれは・・・ダブルベアー。熊を混ぜてとてつもなく強い熊を作ろうとした魔改造の失敗作。熊同士を混ぜれば能力も混ざる・・・なんてことは起きねぇ。結果、体の構造が2つの化物が産まれた。あいつが厄介なのは・・・なかなか死なねぇってことだ。心臓も脳も2つある、どっちも潰さないと確実には殺れねぇ。・・・異界人には不利だ!)






槍を構え、突っ込もうとした矢先、庄野は拳銃を4発発射する。

熊は声をあげる間もなく、静かに地面に倒れた。




(・・・余計な心配だ。1年間もこの森に過ごしてるんだ。どんな魔物がこようが殺ってるよな、そりゃ。)



「・・・よう。」

「・・・リーさん。お久しぶりです。」




「元気そうでなによりだ。傷は塞がったみてぇだ・・・あ?おい、嬢ちゃんが作ったガントレットとグリーブはどうした?」

「・・・えっと・・・忘れてきました。」




「はぁ?!お前よぉ、あれを作るのにどれだけ嬢ちゃんが手間をかけて・・・まぁいい。ここで話すのもなんだ、いつもいる場所に移動しようぜ。ほれ、肩貸すぜ。」

「そう、ですね。有難うございます。」





傾斜に大きな横穴があり、そこから地下へと進む階段を降りていく。穴の付近は平たい鉄の板や様々な形をした鉄の板で型どられて、それに土と草がかかっており、どこから見ても気がつかないようになっている。

地下へ進むと、リビング程の大きさの部屋があり、トイレやキッチンのような場所が区切られた別の部屋にある。




「はー・・・ここで1年も過ごしてたのか。」

「食事と寝るときはここですね。」




「なるほどな。凄ぇ施設もつくれるんだな。」

「・・・何か、用があって来たんですよね。」




「そうだな。用件というか・・・うちの嬢ちゃんがお前を探してきてほしいって急に言い出してな。」

「うちの?・・・あぁ、カエデ女王ですね。何かあったんですか?」




「いや、それが分からねぇんだよな。半年位前から部屋に籠りっきりになっちまってな。たまに出てきても全く会話してくれねぇんだよ。」

「会話が無い?それは不思議ですね・・・。」




「だろ?まだ反抗期がくるような年でも無ぇし・・・とにかく来てくれねぇか?」

「・・・。」










庄野は何も答えなかった。





「・・・やっぱ、戻りたくねぇか?」

「・・・ここで元の世界に戻る方法を探したいと思います。俺が出来ることは無いですから(それに、俺はこの世界に干渉しない方が良いんだ)。」




「そっか。・・・じゃ、行くか。」

「・・・はい?」




「行くかって言ってるんだよ。ほれ、準備しろ。」

「いや、あの・・・俺の話、聞いてました?」




「あぁ。元の世界に戻る方法を探すんだろ?一人でこんな何もない森で考えても見つかんねぇよ。ソーラに来て嬢ちゃんと探した方が早ぇよ。」

「・・・あー。えっと。」




「コピードールだって行きてぇって顔してんじゃねぇか。ほら、ここ出て旨いもんでも食おうぜ?」

「キュウ!!」「キュウー!!」「キュウ!!」




コピードールはリーの話を聞いて嬉しそうに部屋を縦横無尽に走り回る。





「決まりな。行くぞ。」

「・・・はい。」





断れなくなり、渋々準備をする。



地上に出る。改めて庄野を見ると髭や髪の毛は整ってはいるが服はボロボロ、目元には大きなクマがあり頬は痩けている。





「・・・庄野。ソーラに着いたらまずは飯食って休め。今の状態で嬢ちゃんに会わせられねぇ。」

「・・・ありがとうございます。」



二人は森を抜け、ソーラへと向かった。

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